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君のゴミの日

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捨てられたゴミは焼却炉へ行く。
行き場所があるだけ、俺よりも羨ましい。

いや、自由に何処へでも行ける俺の方が羨ましい。
何事もポジティブに考えなきゃダメだと、そう教えてくれたのも帝人くんだ。

帝人くんは優しいから俺を捨てられない。

だったら俺の方から捨てられてやろうじゃないか。
いつか来る、帝人くんに捨てられる日を想像すれば、こっちのほうがまだ良い。

まだ、良い。

ぼんやりと歩いていた俺は突如後ろに気配を感じて振り返りつつ反撃に出た。
誰だか知らないけど後ろから襲撃するとはいい度胸だね、と、振り返ってすぐにそれが帝人くんだとわかって握っていた拳を慌てて止めた。

思い切り突っ込んできた帝人くんを「っう、」と、呻きながらどうにか抱きとめる。

数時間前に別れを決意したはずの相手に腹に頭突きを食らった俺は、間抜け以外の何者でもない。

全速力で走ったのか、帝人くんは呼吸を整えている。
よくみたら上着も着ていない。
本来なら寒いだろうけど、帝人くんの首筋は汗が流れていた。

「ばか、ですか、…臨也さん。」
「あは、酷いね。」
俺が笑うと帝人くんはギロッと睨んだ。

「なんで、こんな、突然…。」
「ずっと前から考えてたんだよ。」

いいかげん、帝人くんを解放しなきゃいけない。
だけど怖くて、ずっと先延ばしにしてきた。
帝人くんが許してくれる間は傍に居たい、とか、もう少しだけもう少しだけ、と思いながら。

「なら、尚更馬鹿です。」
寒い早朝、帝人くんの白い息と共に吐かれる言葉は容赦が無い。
どんな言葉でも良い、帝人くんがくれるものは全部欲しい。

けれど、その次の言葉は無残にも俺を切り捨てた。


「僕が、…僕が、何度、何度臨也さんを捨てようと思ったか、知らないでしょう。」
ヒュッと自分の息がとまったのがわかる。

捨てられてやる、なんて、偉そうなこと言って、なんの覚悟も出来てなかった自分を思い知る。

「何度も、何度も捨ててやろうと思いましたよ。」
わがままで、欲しがりで、無い物ねだりで、厄介で、重すぎる貴方を。
と、帝人くんは俺がちゃんと理解できるようにゆっくりゆっくりそう言った。

「臨也さんが手首を切ったときだって、ああ、もう一緒には居られない、そう思ったんです。」

帝人くんの声が震えて、俺のためにどれだけ我慢してきたのかがわかる。
なんだか情けなくて泣きそうになった。
そんな顔をする俺を見て、帝人くんは小さく微笑んだ。





「さて、ここで問題です

 じゃぁなんで僕は今も此処に居るんでしょうか?」




「え・・・。」

沈黙が続く。
帝人くんは俺の答えを待っていたようだったけど、ため息を吐いて「時間切れです。」と言った。


「何度も何度も何度も捨ててしまいたいと、そう思いながら、それと同じだけ『捨てられない』と、そう思ったんです。」
それはとても簡単な答えだった。
「捨ててしまえば楽になれる、そうわかってても捨てられなかったんです。」

「嫉妬深くて、馬鹿で、間抜けで、残酷で、どうしようもない臨也さんを、僕はそれでも好きなんです。」

帝人くんはそう言って俺の腰に抱きつき、
小さな声で、「だから、僕を捨てないで下さい。」と言う。

ああ、そうか、帝人くんもまた、いつかくるかもしれない「捨てられる日」が怖かったんだ。
馬鹿だなぁ、俺が君を捨てることなんて無いのに。
捨てられるわけ、ないのに。

「一緒に地獄まで落ちてくれるの?」


「はい、臨也さんとなら地獄の業火さえ怖くない。」




燃やされるなら、二人で、が良い。


作品名:君のゴミの日 作家名:阿古屋珠