君のゴミの日
その晩は珍しく臨也さんは僕を抱き締めて眠った。
まるで抱き枕のようにぎゅっと、優しくというには強いくらいに。
いつもは臨也さんに求められているはずのまだ眠れない時間だったから、最初は目が冴えていた。
けれどその暖かな温もりにすぐに眠気に誘われる。
そういえば、最近あんまり寝れて無かったな、と、ぼんやり考える僕の耳に、
「ありがとう」
そんな声が聞こえた気がした。
寒気で目が覚めて、最初に気が付いたのは隣に臨也さんが居ないことだった。
冷え切った部屋の中を、僕はパジャマのままうろうろと歩く。
何処にも臨也さんの姿は無くて、嫌な予感しかしない。
無造作にテーブルに置かれた紙。
それが見たくなくて、ただただ臨也さんの姿を探して、ケータイにもかけたけれど繋がらなかった。
諦めて、テーブルの上の紙を手に取って内容を読む。
『今日は何の日?』
それだけ書かれた紙一枚を僕はグシャリと握りしめた。
また、だ。
また発作が起きたんだ。
どうしようもない馬鹿で愚かな人だ。
僕は大急ぎで着替えて外へ飛び出した。
冷たい空気に身を切り裂かれて、自分が上着を着ていないことに気が付いた。
けど、戻ってる時間がもったいない。
焦りで足がもつれる。
転びかけながら体勢を立て直して僕は走った。
何処へなんて知らない。
ただ、馬鹿で愚かなあの人が居る所へ。