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小雲エイチ
小雲エイチ
novelistID. 15039
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泣けない子供

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急に黙り込んでしまった臨也さんがなんだか心配で、名前を呼ぶと抑揚のない声がかえってきた。
楽しそうに弧を描いていた目は一転し、ぎらぎらとした色をまとっている。
「起きてたというか、半分以上寝てて、その……臨也さんがなにか言ってるってことしか分からなくて……」

言葉を返す代わりに、臨也さんの細い指が僕の頬に触れ、輪郭を確かめるように何度か上下に往復する。
彼の人差し指にはめられたリングが、火照った頬をひんやりと冷やした。
臨也さんの赤い瞳が、僕を映す。
――これだけ近くで見ても見苦しくないなんて、やはり彼は余程美形なんだろうな。
どこか他人事のように彼の瞳を見つめていると、いきなり口を塞がれた。
甘い匂いがぐっと近くなり、僕の肺を満たしていく。

「ふっ、ん……」
その内離れていくだろうと高をくくっていたが、臨也さんの口は僕から離れるどころか更に深くなり、最早キスというより唇を食べられているような感覚に陥る。
貧弱な僕の肺はすぐに酸素足りなくなってきて、肺がぎゅうぎゅうと締め付けられるように苦しい。
苦しさに耐えかねて臨也さんの肩を押すが、寝起きだったこともあり黒い体はびくともしなかった。
目の奥が、ちかちかと瞬く。
酸素を求めて口を薄く開くと、酸素と一緒に臨也さんの舌が口に入ってきた。
そのまま舌を絡みとられて、ぞくぞくとした波が背中を駆け上がる。

「あっ、ん……ふあ」
しばらく上顎を撫でられたり歯列を舐められた後、わざとらしく音をたてながら唇が離された。
流れるような動作で、首筋に零れた唾液を舐めあげられる。
そのままゆっくりと舌が這い上がり、耳元で止まった。
耳朶をあまがみされ、「さっき、さ」と呟かれる。

体に回されていた手が離れていく途中、腰をやんわりと撫でられて思わず肌が粟立つ。
僕は、息を殺して臨也さんの言葉を待った。

「――愛してる、って言ったんだよ」
吐息を漏らすかのようにさらりと言葉を紡ぐ臨也さんの目からは、さっきのぎらぎらとした色はなくなっていて、いつも僕を見つめてくるときと同じように、赤褐色の目を猫みたいに細めて笑っていた。
けれど、そのときのそれは、欲しい物を素直に欲しいと言えない子供の様に、なんだか酷く悲しそうに見えた。

作品名:泣けない子供 作家名:小雲エイチ