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walkblind

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 ざわざわといつもと違う雰囲気が校内に漂い、普段はいない父兄や他校の生徒を見かけ、文化祭だなぁと実感する。
 僕はといえば、連日の朝から晩までの練習でクラスのそういう打ち合わせに全く参加することができず、またこれといった役割も与えられなかった。それは授業が終わったらすぐさまグラウンドへと走る2名の野球部員への粋なはからいらしかったけど、皆てきぱきと働いている教室の中では微妙に居場所がない。
 1組から9組までの長い廊下はカラフルな色紙やらモールやらで飾られ、本当どうしようもないくらいお祭りだ。

「だーれだっ」
「……やめろよな、水谷」
 視界をふさがれた手をどけて振り返ると、お祭り騒ぎでは片付けられないような格好をした水谷が、そこにいた。
「へへへ、似合うべ?見て見て、ちゃんと毛も剃ったんだー」
 言葉を失った僕にかまわず、水谷はくるりと1回転しながら日に焼けていない白い足を晒す。
「あー、やっぱり栄口ドン引きだ」
「……何アレ」
「あれ?栄口のクラスではこういう話なかった?」
 今年から中央ステージで女装コンテストがあるということ。各クラスから代表者を1名出すこと。そこまでは何の打ち合わせにも参加していない自分にも小耳に入ってきたことだった。
 花井の説明によると、7組では文化祭の準備に参加できない運動部にやってもらおうということで話がついた。そう言われると文句の言えない野球部3人とサッカー部2人とバスケ部2人でくじをひいたその結果が、
「巣山どうコレ!」
「うわぁ、気持ち悪いくらい似合ってるな」
 これなわけだ。

「いや、あいつも最初はへこんでたよ。やりたくないって」
「嘘だぁ、あんなノリノリなのに」
「……クラス全員でおだてたからな。」
「……7組こえーよ」
 巣山にじゃれつく水谷の、上着とスカートの隙間からちらりと腹が見えた。サイズが少し小さいんだろう。
「あのセーラー服は?」
「姉貴のだってよ」
 なんでも、おだてられてのぼせ上がった水谷が当日、「男だったらこれで勝負するしかない!」と声高らかに持ってきたらしい。その開き直り様にクラスの男子から「男ならセーラー服、それを知っている水谷に感動した!」「水谷お前は男の中の男だ!」と絶賛の嵐だそうで。

「腕のドカタ焼けがなかったらもっといけてたよねぇ。でもまぁこれはこれでそそるかなぁ」
「お前よくそんな格好できるなぁ」
「だってお祭りなんだもん!」
 お前の頭ん中がいちばんお祭り騒ぎだよと呆れる僕にかまわず、水谷は無邪気にふふふと笑うものだから、なんとなく毒気を抜かれてセーラー服から目を逸らす。確かに似合っているけれど、それを言ってしまったらあいつはもっと調子に乗りそうで怖い。
「花井、俺栄口と屋上行ってくるからお前は他の見てていーよ」
「あ、そう?じゃよろしく頼む」
 1組のお化け屋敷が気になるのか、女装した友達にこれ以上付き合うのが嫌なのか、花井はあっさり承諾した。

 僕は水谷に手を引かれ、奥の階段へと連れられる。『在校生以外立ち入り禁止』と書かれた紙のかかったロープをひょいとまたぐと、ひざより短いスカートがその動きにならい、水谷の太ももがあらわになる。正直目のやり場に困る。
「お前さぁ、スカートなんだからもっと気ぃ使いなよ」
「へ?」
「パンツ見えたらどうすんだー?」
「今日はいつもと違うぱんつだから大丈夫です!」
「見せなくていいから!」
 スカートをたくし上げようとした水谷に慌ててそう言うと、つまらなさそうな顔をして階段を登りだした。
 つーか、やばくね?身長的に女バスくらいには見えね?少し先を登る水谷がそうつぶやく。
 お前それは女子バスケ部の人に失礼だろうと返した僕は、水谷のスカートの裾からにゅっと突き出た白い足をついよこしまな気持ちで見てしまった。
作品名:walkblind 作家名:さはら