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walkblind

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 水谷が何をしに屋上へと向かったかというと、そこから下げている7組の垂れ幕が他のクラスの垂れ幕と重なっているのを直すためだった。垂れ幕といっても薄い布にペンキで文字を書いただけのもので、ガムテープを剥がしたら追い風にゆるりと布が舞う。
 セーラー服が風を受け、水谷の日に焼けていない腹がまた覗いた。
 さっきから僕はまともに水谷を見ていない。違う、見れないんだ。
「さかえぐちぃ」
「うん、なに?」
「……俺、かわいくない?」
 紺のスカートが赤いスカーフがはたはた風にまぶしくたなびく。
 水谷は何かに縋るみたいにスカートの裾をぎゅうぎゅう握り、困ったような顔で僕を見る。
 かわいいよ。かわいいさ。軽くめまいがするくらい。けどそれをあいつに知られるのはなんだか癪なんだ。
「……知らない」
 冷静な表情に本音を隠して、僕は正しい位置へとガムテープを貼り直した。少し強い風が吹き、垂れ幕が舞い上がる。
 水谷はそんな僕の一瞬の隙をついて、かすめるようにキスをした。
「……しちゃった」
「ばか、誰かに見られたら」
「だってしたかったんだよー」
「お前なぁ、」
 僕の言葉を遮ってまた唇が当てられ、何を焦っているのか知らないけれど貪欲に水谷の舌が絡んでくる。いつの間にか手まで繋がれている。息をしようと開いた口から水音が漏れる。僕は頭のすみっこで、今水谷はセーラー服を着た他校の生徒ということで、知り合い以外にばれなければどうってことないんじゃないかなんて浅ましいことを思っている。
「あ、やべ、たっちゃった」
 額を合わせ熱い息を吐いた水谷が、当然のようにそう言うものだから、そのこらえ性のなさに軽く辟易する。
『コンテスト参加者は中央ステージ前に集合してください……繰り返します』
 突然スピーカーから流れたアナウンスに、僕と水谷はお互いの引きつった顔を見合わせた。
「……萎えないの?」
「ゲンミツに無理です……」
「じゃトイレ行ってこいトイレ!」
「この人が多い廊下を前屈みのまんま歩けっていうのかよぉ」
「どうすんの水谷」
「ど、どうしよう」
 水谷はオロオロとするだけで何も解決策を考えていない。
 吹き付けた風に浮かび上がったスカートを、「わっ」なんて間抜けな声を出して抑えた水谷。
 どうしてそんなにかわいいのかもうわからないよ。ああもうどうとでもなれ。
 僕はその勢いのまま、巣山に『日焼け跡がポッキーみたいだな』と言われた水谷の腕をつかんで壁際へと隠れた。
「スカート、上げて」
「?」
「汚したら大変だろ」
 僕がぶっきらぼうに吐き捨て水谷の前にひざをつく。今水谷がどういう顔をしているのか恥ずかしくて見上げられない。そんな僕の意図をやっと理解したのか、水谷がおずおずとスカートを引き上げた。
「我慢しないで、出したくなったらすぐ出していいから」
「う、うん」
 ごくりと水谷が唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
 水谷の『いつもと違う下着』をひざの少し上まで下ろすと、確かに痛いくらいに腫れたそれがあらわになる。とりあえず口に含んで軽く動きだす。小さく呻いた水谷はそのまま少し腰を引いた。
 舌を這わせながら盗み見た水谷はくらくらするほどいやらしい。卑猥だ。空が青いから?仮にも学校の中だから?セーラー服だから?たぶんそれらすべての要素が僕を『悪いことをしている』という気分にさせる。
 上のほうで堪えきれずに甘い声を出す水谷が薄く目を開き、下でうごめく僕を見る。
 さ、かえ、ぐち。切れ切れに聞こえた言葉は僕の燻っている部分を煽り、加速させる。
 もう本当にどうかしてる。
 ふいに視界が暗くなり、スカートの紺色の中僕はその動きを早めた。水谷が持ち上げていたスカートから手を離してしまったのだろう。かわりに、僕の短い髪の毛を力なく握る感触がする。
 水谷のひざがガクガク揺れ、髪を掴む指先が少し強くなった瞬間、水谷はその濁を僕の口の中に出した。汚さないように、こぼさないように一気に飲み下すと、水谷は寄りかかっていた壁からずるりと背を動かした。
 スカートの中から顔を出すと、まぶしい太陽の光に目が眩む。背を壁に預けセーラー服の襟を乱した水谷がのぼせた顔でぼんやりと僕を見ていた。
「あー、きもちいー……」
「……水谷その顔でコンテスト出るのやばいよ」
「え、俺いまどんな顔してんの?」
「今までしてましたって顔。」
『1年7組の水谷文貴君、至急中央ステージへ集合してください』
「つーか呼び出されたし!」
「……全力で走ってけばごまかせるんじゃない?」
 僕がそう提案すると、水谷は急いで身なりを整え会場へと走り出す。
 しかし突然何か思い出したかのように出口で立ち止まり、くるりとこちらを振り向いた。
「さかえぐち、あいしてる!」
 ……言ったお前が照れるなよ。
 大きく手を振った水谷に小さく僕も振り返し、階段に響く足音を小さくなるまで聞いていた。
 コンテストの内容は気になるけど、どうせ僕はセーラー服を着た水谷を直視できないからちょうどいいのかもしれない。
 というか僕もまた、水谷を攻めることで持ってしまった熱を冷ますためにまだ屋上にいなくてはならないのだ。
(空が青くて嫌になっちゃうなぁ……)
作品名:walkblind 作家名:さはら