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僕と肋骨と蛇のバロット

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今でもまだ夢に見る。
僕と彼女がまだまだ子供だった時の夢。僕が彼女と生きようと思った時の。僕が彼女のために死のうと思った時の。
夢の中の彼女はずっと子供のまま。僕だけが段々と大人になっていく。僕はもう15歳になってしまった。

「スガタくん。スガタくんはさ、」
僕と彼女は手を繋いで海岸を歩いていた。子供特有のやわらかくちびた手。同じ高さだった彼女の顔が、今はこんなに低い。
僕は彼女を見下ろして続きを待つ。彼女が足を止めた。海岸線と向き合って彼女は海の向こうを睨んだ。
「スガタくんは、知ってたの?」
繰り返し繰り返し見る夢の中で、僕は彼女に一体何と言っただろう。そもそも僕は最初に、彼女に何と言ったんだったか?共に哀しんだろうか嘘を吐いただろうか?気遣ったろうか笑ったろうか?
僕は小さく頷いた。彼女と共に目を凝らした地平線はただただ碧い。そっか。と彼女は震える声で呟く。こっそりと横目で彼女の顔を窺うと、その唇が激しく震えていることに気付いた。…そっか。眉間に寄せた厳しい皺もやはりどこかあどけない。
「スガタくんも、…スガタくんも出られないんでしょ?」
「うん……」
海は変わらない。変わりたい僕らを嘲笑うかのように、今も昔も全く変わらない。ただ、そこに在る。ただ、僕らを囲う。

「……ワコ?」
「…………」
「ワコ」
「………ぅ、」
「なかないで」

いつの間にか彼女は地平線を睨み据え唇を噛み締めながら、ぼろぼろと大きな涙を流していた。あの頃はぼくのほうがなきむしだったのに。これが、彼女の涙を見た最初だったのだと思う。今では彼女の方が泣き虫になってしまった……

「ワコ」
『ワコちゃん』
「大丈夫だから」
『大丈夫だよ』
「大きくなったら、王子様がワコを助けに来てくれるから」
『大きくなったらぼくがワコちゃんをおよめさんにしてあげる!』
「『だから――……』」



作品名:僕と肋骨と蛇のバロット 作家名:みざき