都市計画(仮)
段々と息があがってきたが、どちらも立ち止まることは許されない。二人分の足音が響く、両側を高いコンクリートに囲まれた饐えたにおいのする路地はどこまででも続く。
そこに、綱吉の懐から電子音が響く。
それに素早く反応し、懐から慣れた手つきで通信機を取り出し、綱吉は応答する。それを後方から見る雲雀は眉を顰める。
通信機の向こうから聞こえてきたのは、綱吉には馴染み深い先生の声だった。
『ダメツナ、その後ろに居る奴は一緒に連れて来い。飽きるまで走って引き離そう何て無理だからな』
「なんでだよ!」
先ほどまで静かにスコープを覗いていた人物と同一だとは思えないくらいに、綱吉の表情は崩れきっていた。
『そいつ一般人じゃねーからな』
その言葉を聞き、綱吉は目を丸くして雲雀を振り返る。そして前に向き直って走りながら通信機に向かって怒鳴りつける。走りながら怒鳴りつけて更にこちらの様子を伺うなんて器用なものだと雲雀は感心したものだが。
「どういうことなのリボーン!」
『いいからさっさと連れて来い』
それだけ言うと、通信機はただのノイズ発生源に成り下がってしまった。綱吉はあからさまに肩を落としながら、けれどもしっかりと意識だけは左耳の音に向けて走り続ける。
やがて細い十字路の角を曲がった先に一台の車が見えたところで、綱吉は雲雀に問いかけた。
「いいんですね? 乗りますよ!」
やけっぱちなのか、綱吉の声ははっきりと雲雀の耳に届いた。
「もちろん」
やけくそのスナイパーを追いながら、雲雀もまたしっかりと前に向けて声を届けた。