二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

楽欲 -ぎょうよくー

INDEX|5ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 


ぱちり,と目をあけると,見慣れない天井だった。
・・・ここは・・・
「おいおい,今まで寝てたのに,まだ寝足りなかったのかよ?」
盛大な溜息とともに,さも「あきれた」と言わんばかりの声がかけられる。
その声の方に首をめぐらすと,隣に並べられたベッドに,サンジが横になっていた。
そうか,ここは医務室だ。
どうやら,ぶっ倒れて,医務室に運ばれ,仲良くサンジと隣に寝ているなんて羽目になっているらしい。
相変わらず,憎まれ口しかきかないサンジに,ぶっきらぼうに答える。
「あ・・・!?あー,別に,寝てたわけじゃねぇからな・・・」
「ふーん?」
興味があるのかないのか,適当にうたれる相槌。
ふ,と腕に目をやると,点滴のチューブがくっつけられていた。
栄養剤とか何かなんだろう。
全く,情けないことこの上ないな・・・
引っ張ってちぎって起きようとすると,隣から伸ばされた手に止められた。
「てめぇ,何しようとしてんだよ,しばらくそのまま動くなって,我らが名医からのお達しだぜ。・・・脱水症状とか疲労とか,もう少ししたらヤバかったらしいぞ。」
「・・・・・。」
精神世界は,自分が思っていたより,体力気力を消耗するらしい。
「・・・で?1人反省会はどうだったよ?」
俺がチューブを引き抜く気がないと知って,サンジは手を戻し,煙草をふかしながら,ボソリ,と呟いた。
「・・・いろいろと,わかったことがある。」
「ほぉ・・・」
「・・・俺が,未熟なせいで,お前に怪我させちまった。本当にすまなかった。」
ペコリ,と素直に頭を下げた。
すると,とまどったようなサンジの声が聞こえてきた。
素直な俺が意外だったのかもしれない。
「・・・あぁ,まぁ・・・俺も悪かった。・・・あの刀は,本当に俺を斬りたかったんだな。すんなり斬られた俺も間抜けだったよ。・・・それとも・・・」
ふいっと俺から視線を反らすサンジ。
「お前・・・もしかして・・・本当に俺を斬りたかったんじゃねぇの?」
「!!んなっ!!」
即座に否定しようとしたが・・・あながち,それに近い想いもあるので,俺は二の句が継げなかった。
「いくら妖刀だろうが・・・全く言いなりになるテメェじゃねぇだろう?本当に,俺のこと,斬っちまいたいぐらい嫌いなのかと思ってさ・・・だから・・・」
「違う!!」
思わず,大声をあげる。
ビクン,と体を震わせて,サンジがゆっくりと俺へと顔を向けた。
「・・・確かに,あいつは妖刀だ。制御しきれなかった俺が未熟なのも事実だ。だが・・・刀と俺はつながっている。根底にある想いは同じで・・・」
「・・・じゃあ,やっぱり,俺のこと,斬りたいぐらい憎いってことだろう?」
「・・・違げぇよ。逆だ。」
「逆?」
「・・・俺は,お前のことが欲しい,と思ってる。」
「・・・っ!!」
俺の突発的な告白に,急にサンジは赤面した。
構わず,全てを打ち明けるつもりで言葉を続ける。
「そのずっとくすぶってた想いが,根底で刀とつながっちまってて・・・鬼徹は,お前のことが欲しくて,斬って血を吸いたいと言っていたんだ。」
「うへ・・・そ,そりゃ激しいな・・・」
サンジは,キョドキョドと視線を彷徨わせる。
「だが・・・俺は違う。斬りたいんじゃねぇ。お前と背中を合わせて戦いてぇ。お前と一緒に歩きてぇ。いつか,お互いの夢を叶える時に,隣にいてぇ。」
「〜〜〜〜〜っ!!!」



「サンジ,」

「お前が好きだ。」



その時,壁に立てかけてあった鬼徹が,キィン・・・と共鳴音をたてる。
「うは・・・なんか俺,2人に同時に告られてるみてぇ・・・」
呆けながら言うサンジに,思わず苦笑する。
「みてぇじゃねぇよ,鬼徹もさっきから好き好きうるせぇぞ?」
「はぁ???」
「ああ,そうだ。鬼徹に約束したんだった。」
「約束!?何を!?」
「・・・お前に,鬼徹を撫でてもらうってな。」
「・・・エ?」
ぽかんとしているサンジに,ひょいっと鬼徹を投げる。
鬼徹は,サンジの手の中におさまって,嬉しそうにカタカタと震えた。
「な・・・っ」
「大丈夫だ。コイツにはきつーく約束しておいた。お前を,もう斬らないとな。そのかわり,時々コイツを撫でてやってくれねぇか。」
「・・・さっきから思ってたんだが,お前,刀としゃべれんの?」
「ん?・・・あぁ,3日もトリップしちまったがな。」
「で・・・この子はやっぱり,レディか?」
「おう。よくわかったな。色っぺぇねぇちゃん・・・っつっても,まだガキだったな。」
「そうか。ならOKだ!」
「・・・おまえ・・・OKって・・・」
サンジはそう言って,鬼徹を手に取ると撫で,キスの雨を降らせた。
柄(つか),鍔(つば),鞘(さや)と・・・
鬼徹はとたんに動きを止め,ぽうっと淡い光を放つ。
「なんだ,素直なレディじゃねぇの。どっかのクソミドリと違ってな。」
「んなっ!!」
その時,鬼徹の刃が,カチリと,鞘から滑り落ちた。
「ぐおわっ!!!」
咄嗟に手を伸ばし,柄を握った。
「危ねぇ・・!!全く,どんだけジャジャ馬なんだ,お前はっ・・・!!」
これでもか,と眉間にしわを寄せて,鬼徹を睨む。
「ぷぷっ,何その凶悪ツラ!刀に遊ばれてやがんのっ!!」
うひゃひゃひゃひゃ,と,サンジは腹を抱えて笑っている。
「笑いごとじゃねぇ・・・!うっかり斬った,とか言いかねねぇんだよ,コイツは!・・・こりゃ,おしおきだな・・・」
「ま,まてまて。可哀想じゃねぇか。俺のことが好きなんだろ?このレディはさ。」
そして,俺の手の中から鬼徹を取ると,また,愛おしそうな顔で,優しく撫でてやっている。
「おまえ・・・コイツ,つけあがるから,もうやめろ。」
なんかムショウに腹が立って,バッと鬼徹を奪い返した。
「・・・あれ?もしかして・・・嫉妬??」
サンジは,ズズッと俺の方ににじり寄り,上目使いでそんなことを言う。
瞬間,カッと顔に血が上った。
「ち・・・違っ・・・!」
いきなり,サンジの顔が近付いた。
と,思ったら,唇に柔らかい感触。
・・・数秒,世界が止まった,と思った。

スッ・・・とサンジが俺の唇から,自身のそれを離す。
「・・・俺をくれてやるよ,ゾロ。俺もお前の隣にいてぇ。」

「・・・好きだぜ,ゾロ。」

その時,俺の手の中の鬼徹が,ドクンと跳ね,キィン・・・と鳴りながら暖かくなった。
俺は,鬼徹を脇に置き,シーツを被せる。

「お前は見るな」
とぼそっと鬼徹に向けてつぶやき,
俺は再度,サンジと深く唇を重ねた。



                                   2010.12.01
                         (PCIN END 2011.01.20)