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楽欲 -ぎょうよくー

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「・・・っ!ゾロっ!ゾロ!!」
目を開けると,目の前には心配そうなチョッパーの顔。
チョッパーがガクガクと揺れている。
いや・・揺れているのは俺の方か。
チョッパーが,がっくんがっくんと俺の体をゆさぶっていた。
「あ!?なんだチョッパー・・・飯か?」
「飯か?じゃないよっ!ゾロ,いくらゆさぶっても起きないしっ!!」
「そんなん,いつものことじゃねぇか・・・」
「違うよ!!3日!!3日もこのままで・・・!!俺,どうしようかって・・・!!」
「あぁ!?3日!?」
・・・言われてみれば,ひどく腹も減っているし,眠い。
体も,ギシギシとこわばっているようだ。
鬼徹と話していたのは,ほんの小一時間だと思っていたが・・・3日も経っていたのか。
「ルフィ!みんな!ゾロが目ぇ覚ましたぞ〜〜〜!!」
・・・いや,寝てたわけじゃねぇんだけど。
バタバタと走り出すチョッパーの後ろ姿に,心の中でツッコミを入れながら,こわばった手指に握られたままの鬼徹を見た。
・・・・・コイツ・・・・ニヤニヤ笑ってやがる・・・・・・
チッと舌打ちをしながら,上手く動かせない腕をなんとか使い,鬼徹を鞘に収めた。
そして,よっ,と立とうとして,上手く立てず,思わず壁に手をつく。
「あぁ・・・!だめだよ,ゾロ,無理しちゃ!3日も同じ体勢とってたら,すぐには動けないよ!」
倉庫の入り口に戻ってきたチョッパーが,慌てて声をかける。

・・・本当に3日たってんのかよ・・・

多少,げんなりするも,言うことをきかない身体を自覚すれば,認めざるを得ない。
「ゾロ,おかえり!」
チョッパーの後ろに居たルフィに,いきなり声をかけられた。
「あ!?あぁ・・・ただいま」
ルフィは,そのまま,じっと自分を見つめてくる。
その,強くてまっすぐな瞳を見返しながら,俺はゆっくりと口を開いた。
「ルフィ・・・今回のことは,本当にすまなかった。全部,俺が未熟だったせいだ。・・・話は,つけてきた。もう二度と,こんなことはしねぇ」
「おう。いいぞ。ゾロがそう言うなら。大丈夫だ!」
ニカッと,歯を見せて笑うルフィ。

全くこいつは・・・どこまで器がでかいんだろうなぁ・・・

そして,「おっ」と思い出したように言葉を続ける。
「そうだ,謝るのは,俺にじゃないだろ?俺,サンジの飯,食いてぇしな〜〜」
「あぁ,そうだな。俺も腹減った。・・・あいつ,どこだ?」
「まだ,医務室だよ。」
と,それまで静かに成り行きを見守っていたチョッパーが言った。
「・・・そんなに,ひでぇのか?」
「いや・・・そうじゃないんだけど,傷がまだふさがって・・・」

「やーーーっとお目覚めかい?寝ぐされマリモ君」
チョッパーの言葉をさえぎって,ドアの後ろから話題の張本人であるサンジが現れた。
「サンジ!!まだ,歩いちゃダメだって・・・!!」
「ん??もう大丈夫だぜ〜〜!3日も寝てたら,どっかのマリモみたいに腐っちまうし。傷だってほら,キレーにくっついてるだろ?チョッパーが名医だからな!」
「え!?そ・・・そんなん言われても嬉しくねーぞ,このヤロー!」
くねくねと怪しい動きで踊り出すチョッパー。
・・・そんな二人のやりとりを,どこか遠くの意識で,ぼーっと眺めていた。
「・・・で?俺に何か言うことねぇの?」
ニヤニヤと,上目遣いでサンジがこっちに近づいてきた。
瞬間,カッと血が上り,先ほどの決意はどこへやら・・・
ついつい,憎まれ口が出てくる。
「・・・っ!!だいたい,てめぇが挑発したのがいけねぇんじゃねぇか!!」
「んだとぉ!?人様の足をこんな風にしやがったヤツがきく口とは思えねぇなぁ!?」
「斬られねぇっつったのは,どこのどいつだ!!」
「本当に斬るとは思わねぇじゃねぇか!!」
「・・・斬ったんじゃ,ねぇよ・・・」
「あ!?」
「くそっ・・・斬りたく・・・なんか・・・」
ゆっくりと,自分の身体が傾くのがわかる。
だが,身体に力が入らず,抗えない。
「お・・・おい,ゾロ?」
サンジがとまどったようなアホ面で,手をこっちに伸ばすのが見えた,と思った瞬間・・・
目の前が真っ暗になった。