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ケンカップルとサンドウィッチ! ~後日談~

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「はい、口開けてください」
 帝人の言葉で、帝人の手が届きやすいように少し身を屈めた静雄が口を開いた。帝人は口の中へポッキーを入れる。
「ねぇ、帝人君、早くしてよ」
「臨也さん、、さっき口に入れたばかりじゃないですか」
 帝人の呆れた声など聞く耳をもたず、早く早くとせがむ姿は、どことなく親に餌をたかる鳥の雛のようだ。もちろん、臨也に、そして静雄にもそんな可愛気など微塵もない。遊馬崎の言う通り、ひたすらにシュールだ。周囲で騒ぎの成り行きを見ていた野次馬も形容し難い複雑な表情をしている(ただし、狩沢と同じ類らしい一部の者たちは除く)。
 笑えるものなら大笑いしてやりたい状況。しかしこれが、正臣を救うための帝人の提案だった。正臣にしたことが不満なら、臨也と静雄にも同じように「あーん」をすれば良い、という極シンプルな案。しかし、それは草津の湯でも治せない病を患う2人にとっては願ってもないことだったらしい。あっさりと承諾された。
 そうして、衆目の中、イイ年した成人男性に男子高校生がポッキーを食べさせるという世にも奇妙な(狩沢に言わせれば、オイシイ)光景がうまれた。
 食べさせているポッキーは、先程、正臣が帝人に渡したものだ。渡しておいて良かったというべきか、こんなはずではなかったというべきか。複雑ではあるが、とりあえず、ポッキーと帝人によって正臣の命は助かったのだ。
「あー、やっぱり、サンドはオイシイよね! トライアングラー最高だよ」
 狩沢が先程までの涙など嘘っぱちのように上機嫌にフンフンと何か鼻歌を歌い、目を輝かせながらとてもイイ微笑みを浮かべた。
「みかプーは誰とキスをするのかな? イザイザ? それともシズシズ? あ、もちろん紀田君でもバッチコイ☆だからね!」
「いや、遠慮します。マジで勘弁してください・・・・・・」
 正臣は引き攣った笑みでお断りをした。
「ああいうのは、個性の違う2人の美少女だから良いんっすよ」
 遊馬崎の言葉に狩沢が「えー、それも一理あるけど、そういうなら――」と反論を始め、いつの間にか三角関係談義に発展した。
「お前ら、往来でそういう話は止めろといつもいつも・・・・・・!」
 門田がコメカミを押さえながら言いかけるが、途中で肩を落とした。一端火のついた会話を止めることは至難の業なのだ。
 侃侃諤諤の議論を繰り広げるオタク2人は放置して、門田は気分を変えるかのように正臣の方へと顔を向けた。
「紀田、いいのか? 止めなくて」
 門田の言葉に、正臣は溜息をつきながら頷いた。
「いや~、そうしたら俺、今度こそ殺されると思いますから」
 これ以上藪をつついて蛇を出す必要もないだろう。何より、帝人の折角の機転を棒に振るわけにもいかない。
「竜ヶ峰も大変だな」
 門田が同情を織り交ぜた声を出せば、正臣もそれに頷く。
「あー・・・・・・、でも、大変は大変なんだろうけど、なんつーか、それだけじゃない感じがするんですよね」
「というと?」
「少し嬉しそうというか、満更でもなさそうな感じ、というか」
 交互にポッキーを与える帝人の顔は呆れきを表している。それでも、僅かに微笑んでいた。正臣は、その微笑みがどんな類のものなのか、よく知っている。なぜなら、自分もよく向けられる笑みだからだ。
 それは、許容の笑み。「仕方ないなぁ」と呆れながら、それでもその事を受け止めて楽しむ微笑みだ。その、じんわりと滲むような微笑みが、正臣は嫌いじゃない。
 口ではなんやかやと言っている帝人だが、どうやら満更でもないらしい。もしかしたら、それを分かっているから、臨也も静雄も帝人に構うのかもしれないが、そのことに帝人が自分で気づくことは多分ないだろう。
「あんな七面倒な奴ら相手にか。なんというか・・・・・・もしかして、竜ヶ峰も大概面倒な奴なのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
 黙したまま肩をすくめることで返事に代えた正臣は、帝人の握るポッキーを見た。
 正臣がやったポッキーも直になくなってしまうだろう。そうしたら、また争い勃発だろうか。その前に、帝人を連れて逃げるべきか、いや、そんなことをすれば抹殺される気がする。ならば以前のように困った時のサイモン頼みにすべきか。そもそもまずあの2人が正臣に抱いているだろう疑念を払拭したい。できるかは分からないが(できたとしても、事態が好転するとはあまり思えないが)。本当に勘弁してほしい。
 正臣の沈黙に色々と感じるところがあったのか、門田はしばらく言葉を探すように思案したかと思えば、一言。
「お前も、本当に大変だな」
 門田の言葉に正臣は疲れた表情で「ハハハ」と乾いた笑い声を出すと、遠い目をして大きな溜息をつくのだった。
 


end.