こらぼでほすと 再会3
規則正しい生活をしているほうが、身体にはいい。夜を早めに休んで、朝は早めに起床する。
となりで、くかくかと寝ている刹那を眺めて、ロックオンは苦笑する。あの後、いろいろとあったのだろうから、そのことを尋ねるつもりはない。ただ、生きているとわかった途端に、飛んできてくれるぐらいには懐かれていたのだと思うと嬉しかった。
「ごめんな、刹那。」
途中で放り出した形になってしまったので、保護者役がいなくなって不安だったかもしれない。そういう意味では、謝らなくてはいけないだろう。そのうち、自分に向かって、いろいろと吐き出してくれればいい、とは願っている。
「しかし、一緒に寝なきゃ安心できないほど、俺は信用がないかなあ。」
となりに、刹那用の部屋は用意してくれたのだが、あちらに入ったこともない。とりあえず、ロックオンの傍にへばりついている。
毎日、午後一番くらいに来客があるので、そのつもりで午前中は屋敷をリハビリに歩いている。まだ、ちょっとふらつくので、刹那が背後か横にいて腕を掴んでいる状態だ。ひとつ、階段でも昇ってみようかと、二階への階段に足をかけたら、ひっぱられた。
「ん? 」
ぐいぐいと階段ではない方向へ誘導されているところからして、「やめろ」 ということらしい。
「お試しで、何段か昇るだけだ。」
そう弁明しても、ぐいぐいと離される。仕舞いに、ロックオンを持ち上げて移動させようとしているが、さすがに持ち上がらない。
「俺、それで、おまえに担がれたら、プライドズタズタだぞ? 」
身長差20センチはあろうかという体格差で、それはやめてほしい。そう言うと、刹那はムキになるから、持ち上げようと、また自分の肩にロックオンを乗せようとかしている。
・・・・・いや、だから、それは無理があるだろうが・・・・・・
両手がフリーなので、刹那の脇腹をこそばすと、ぷぎっと噴出して体勢が崩れた。で、意識覚醒七日目当たりの無自覚男は、自分が刹那の体重を支えきれないことを失念していて、一緒にひっくり返っていたりする。
「おいおい、何やってんの? 」
結構な音がしたらしく、どっかから走ってくる音がした。なんか、聞き覚えがあるな、と、顔を上げたら、フラガだった。先日のラフな格好でなくて、堅苦しそうな青と白の制服姿である。
刹那のほうが早く反応したのか、自分の下から這いずり出して威嚇していた。
「いや、ちょっとふざけて、ひっくり返った。」
「ああ、加減がわからないんだろ? 最初は、大人しくしておくことをお奨めするよ。最初の無理が後を引くってことになるからな。」
ここでは、奇跡の生還者様のご意見が、わんさか出て来る。有難いというより、集まりすぎてて奇跡なのは、歌姫と縁があることじゃないか? とか、ロックオンは思ってしまう。フラガのほうが手を貸そうとしたら、そこに刹那が割り込んできた。
「せつニャン、おかーさんを取ったりはしないぜ? 」
「おまえの態度が問題だっっ、フラガ。」
そのホストらしい微笑を浮かべていた鷹の頭に、どかんと踵落としが決まって、刹那がやばいとロックオンが腕に隠す。
いたたたたた・・・と横に倒れた鷹の背後には、真っ白な軍服を着込んだ年若い女性が仁王立ちしている。
「ちょっと、嬢ちゃん、やりすぎだろ? 」
「おまえの場合は容赦しなくていい、と、キラが言っていた。・・・・・驚かせてすまない。私はキラの姉だ。キラから、頼まれたものを持ってきた。」
手に白い紙袋を持っていて、それを、刹那に見せている。客も、変わったのが多いので、いちいち驚いている暇はない。
「キラのねーちゃん? 」
「ああ、双子のな。カガリと呼んでくれ。へぇー確かに年齢制限にひっかかってる美人さんと、お肉の足りない子猫ちゃんだ。よかったな? おまえら。こいつの趣味から外れててさ。とりあえず、運ぼうか。」
刹那を、ひょいと鷹が持ち上げたかと思うと、カガリのほうがロックオンを、軽く持ち上げて肩に担ぐ。
「ちょっちょっと待てっっ。」
担がれたほうはパニックだが、担いでいるほうは気楽なものだ。肩幅が狭くて申し訳ないなとか謝っている。
「キラは、ひきこもりだけどな。私はスポーツ万能なんだ。・・・・・ロックオンぐらいなら軽いことだ。」
「いや、歩けるから下ろしてくれ。」
「居間まで、すぐだから、このままでいいだろう。」
刹那に担がれるより精神的に疲れたのは、言うまでもない。気にするな、と、鷹のほうは、刹那をだっこして運んでいる。もちろん、逃げ出そうと暴れている刹那を押さえ込みつつである。
・
居間に辿り着いて、ソファに座りこまされて、「大丈夫か? 」とか訊いている相手が、自分より五歳以上年下で女性であるという事実は、かなり痛い。
「あんまり無理なリハビリはよくないぞ。・・・・それから、刹那、キラからだ。」
カガリが用意したのは、ゲーム機本体だ。それを渡して苦笑している。一国の責任者にパシリを頼めるのは、キラぐらいだ。
「嬢ちゃんも、キラには甘すぎるんだよ。」
「しょうがないだろう? かわいいんだから。こっちに用事もあったしな。・・・・刹那、使い方わかるか? わかんなかったら、後で私と対戦してみるか? 」
「そんな暇あると思うのか? 」
鷹の嫌味なんか、カガリはどこ吹く風だ。なければ作る、とか、言い放つ。どうみても、それは軍服で、ここに用事があるということは、MS関連だろうとか、いろんな要素からして、普通の人ではないらしい。
「カガリさん。」
「よそよそしい言い方しなくていい。」
「じゃあ、カガリ。」
「なんだ? ロックオン。」
「キラはホストだよな? 」
「ああ。私は反対したんだが、ホストだな。」
「じゃあ、あんたは? 」
「なんだ? キラは、私のことも話していないのか。呆れたヤツだな。私は、『吉祥富貴』のオーナーの片割れだ。おまえ、うちで働くんだろ? 」
「いや、嬢ちゃん、ロックオンが聞きたいのは、そこじゃないと思うぞ。この嬢ちゃん、ある国の責任者でさ。俺、バイトで護衛もやってんだよ。だから、軍服。そして、ここに、嬢ちゃん個人所有のMSがあるから、それの整備と起動に来たとこだ。このあたりかな? ロックオン。」
察しのいい鷹のおかげで欲しい情報は手に入った。どんどん、事態が複雑化していくのが、ロックオンの頭痛の種だ。
「オーナーって、歌姫さんだけじゃないのか? 」
「私は表立って動けないから、基本は資金提供のみなんだ。だいたい、キラが、おまえやトダカを連れて行くから、うちは大変なんだぞ? アマギたちトダカ親衛隊が辞表を出さないように気を使ってるんだからな。」
「それ、俺の所為じゃないだろ。だいたい、俺は、あんまり表で働いてたら、まずいじゃないか。それに、トダカさんは、そろそろ引退したがってて、キラの手伝いなら、って仕事を引き受けたんだろ? ていうか、アマギたちは、絶対に、うちで雇えないからっっ。あの面で、ホストは無理っっ。」
となりで、くかくかと寝ている刹那を眺めて、ロックオンは苦笑する。あの後、いろいろとあったのだろうから、そのことを尋ねるつもりはない。ただ、生きているとわかった途端に、飛んできてくれるぐらいには懐かれていたのだと思うと嬉しかった。
「ごめんな、刹那。」
途中で放り出した形になってしまったので、保護者役がいなくなって不安だったかもしれない。そういう意味では、謝らなくてはいけないだろう。そのうち、自分に向かって、いろいろと吐き出してくれればいい、とは願っている。
「しかし、一緒に寝なきゃ安心できないほど、俺は信用がないかなあ。」
となりに、刹那用の部屋は用意してくれたのだが、あちらに入ったこともない。とりあえず、ロックオンの傍にへばりついている。
毎日、午後一番くらいに来客があるので、そのつもりで午前中は屋敷をリハビリに歩いている。まだ、ちょっとふらつくので、刹那が背後か横にいて腕を掴んでいる状態だ。ひとつ、階段でも昇ってみようかと、二階への階段に足をかけたら、ひっぱられた。
「ん? 」
ぐいぐいと階段ではない方向へ誘導されているところからして、「やめろ」 ということらしい。
「お試しで、何段か昇るだけだ。」
そう弁明しても、ぐいぐいと離される。仕舞いに、ロックオンを持ち上げて移動させようとしているが、さすがに持ち上がらない。
「俺、それで、おまえに担がれたら、プライドズタズタだぞ? 」
身長差20センチはあろうかという体格差で、それはやめてほしい。そう言うと、刹那はムキになるから、持ち上げようと、また自分の肩にロックオンを乗せようとかしている。
・・・・・いや、だから、それは無理があるだろうが・・・・・・
両手がフリーなので、刹那の脇腹をこそばすと、ぷぎっと噴出して体勢が崩れた。で、意識覚醒七日目当たりの無自覚男は、自分が刹那の体重を支えきれないことを失念していて、一緒にひっくり返っていたりする。
「おいおい、何やってんの? 」
結構な音がしたらしく、どっかから走ってくる音がした。なんか、聞き覚えがあるな、と、顔を上げたら、フラガだった。先日のラフな格好でなくて、堅苦しそうな青と白の制服姿である。
刹那のほうが早く反応したのか、自分の下から這いずり出して威嚇していた。
「いや、ちょっとふざけて、ひっくり返った。」
「ああ、加減がわからないんだろ? 最初は、大人しくしておくことをお奨めするよ。最初の無理が後を引くってことになるからな。」
ここでは、奇跡の生還者様のご意見が、わんさか出て来る。有難いというより、集まりすぎてて奇跡なのは、歌姫と縁があることじゃないか? とか、ロックオンは思ってしまう。フラガのほうが手を貸そうとしたら、そこに刹那が割り込んできた。
「せつニャン、おかーさんを取ったりはしないぜ? 」
「おまえの態度が問題だっっ、フラガ。」
そのホストらしい微笑を浮かべていた鷹の頭に、どかんと踵落としが決まって、刹那がやばいとロックオンが腕に隠す。
いたたたたた・・・と横に倒れた鷹の背後には、真っ白な軍服を着込んだ年若い女性が仁王立ちしている。
「ちょっと、嬢ちゃん、やりすぎだろ? 」
「おまえの場合は容赦しなくていい、と、キラが言っていた。・・・・・驚かせてすまない。私はキラの姉だ。キラから、頼まれたものを持ってきた。」
手に白い紙袋を持っていて、それを、刹那に見せている。客も、変わったのが多いので、いちいち驚いている暇はない。
「キラのねーちゃん? 」
「ああ、双子のな。カガリと呼んでくれ。へぇー確かに年齢制限にひっかかってる美人さんと、お肉の足りない子猫ちゃんだ。よかったな? おまえら。こいつの趣味から外れててさ。とりあえず、運ぼうか。」
刹那を、ひょいと鷹が持ち上げたかと思うと、カガリのほうがロックオンを、軽く持ち上げて肩に担ぐ。
「ちょっちょっと待てっっ。」
担がれたほうはパニックだが、担いでいるほうは気楽なものだ。肩幅が狭くて申し訳ないなとか謝っている。
「キラは、ひきこもりだけどな。私はスポーツ万能なんだ。・・・・・ロックオンぐらいなら軽いことだ。」
「いや、歩けるから下ろしてくれ。」
「居間まで、すぐだから、このままでいいだろう。」
刹那に担がれるより精神的に疲れたのは、言うまでもない。気にするな、と、鷹のほうは、刹那をだっこして運んでいる。もちろん、逃げ出そうと暴れている刹那を押さえ込みつつである。
・
居間に辿り着いて、ソファに座りこまされて、「大丈夫か? 」とか訊いている相手が、自分より五歳以上年下で女性であるという事実は、かなり痛い。
「あんまり無理なリハビリはよくないぞ。・・・・それから、刹那、キラからだ。」
カガリが用意したのは、ゲーム機本体だ。それを渡して苦笑している。一国の責任者にパシリを頼めるのは、キラぐらいだ。
「嬢ちゃんも、キラには甘すぎるんだよ。」
「しょうがないだろう? かわいいんだから。こっちに用事もあったしな。・・・・刹那、使い方わかるか? わかんなかったら、後で私と対戦してみるか? 」
「そんな暇あると思うのか? 」
鷹の嫌味なんか、カガリはどこ吹く風だ。なければ作る、とか、言い放つ。どうみても、それは軍服で、ここに用事があるということは、MS関連だろうとか、いろんな要素からして、普通の人ではないらしい。
「カガリさん。」
「よそよそしい言い方しなくていい。」
「じゃあ、カガリ。」
「なんだ? ロックオン。」
「キラはホストだよな? 」
「ああ。私は反対したんだが、ホストだな。」
「じゃあ、あんたは? 」
「なんだ? キラは、私のことも話していないのか。呆れたヤツだな。私は、『吉祥富貴』のオーナーの片割れだ。おまえ、うちで働くんだろ? 」
「いや、嬢ちゃん、ロックオンが聞きたいのは、そこじゃないと思うぞ。この嬢ちゃん、ある国の責任者でさ。俺、バイトで護衛もやってんだよ。だから、軍服。そして、ここに、嬢ちゃん個人所有のMSがあるから、それの整備と起動に来たとこだ。このあたりかな? ロックオン。」
察しのいい鷹のおかげで欲しい情報は手に入った。どんどん、事態が複雑化していくのが、ロックオンの頭痛の種だ。
「オーナーって、歌姫さんだけじゃないのか? 」
「私は表立って動けないから、基本は資金提供のみなんだ。だいたい、キラが、おまえやトダカを連れて行くから、うちは大変なんだぞ? アマギたちトダカ親衛隊が辞表を出さないように気を使ってるんだからな。」
「それ、俺の所為じゃないだろ。だいたい、俺は、あんまり表で働いてたら、まずいじゃないか。それに、トダカさんは、そろそろ引退したがってて、キラの手伝いなら、って仕事を引き受けたんだろ? ていうか、アマギたちは、絶対に、うちで雇えないからっっ。あの面で、ホストは無理っっ。」
作品名:こらぼでほすと 再会3 作家名:篠義