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かぐたんのゲテモノ日記

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春宵

~しょーよー先生ラヴ★トライアングラー。

その少し前からいくらか様子はおかしかった。
芽吹く季節につられて躁状態というのか、日中の風は多少緩んだとはいえ、朝晩はまだまだ冷え込む。なのに、あの人ときたら紬の小袖一枚でふらりと外に出ていって、帰って来たかと思ったら、今度は菓子折りを待つ子供みたいに深い息を洩らす。
あの人の前で俺がこうもやたらに溜め息を連発しようもんなら、――それでは幸せが逃げてしまいますよ、わけのわからん説教カマしてくるくせに。
気付いたら、夕暮れ時のその日も、屋敷の中の何処にもあの人の姿はなかった。
「……、」
ここぞとばかり、俺は盛大に息をついた。ま、出歩くと言っても徘徊癖というほど大袈裟じゃない、どうせまた庭のあの樹の下だろう、羽織を掴むと俺は三和土の草履を突っ掛けて表へ出た。
落ち切ろうとする夕陽を背に伸びた長い影が、飛び石の連なる先にあの人の居場所を指し示した。桜の根元に寄り掛かるようにして、あの人は両足を投げ出す姿勢に座っていた。
普通ならただ眠っているだけに見えただろうに、とてもそうは思えなかったのは多分に俺の主観のせいだ。あの人は、そうしてまるで桜に抱き締められているようだった。
(……。)
いい加減見慣れたはずの風景だ、気を取り直して歩を進め、
「……何やってんスか、」
寝込んでいる頭の上から声をかけるが返事はない。仕方ない、隣にしゃがみ込んで肩を揺らす。腿の上に置かれていた手がぱたりと落ちた。俺は強く瞬きをした。頭を振って、脳裏に浮かんだ一瞬の光景を打ち消そうと試みる。
掬い上げようと触れた指先は、生きた人間の、生きたがっている人の熱とは思えないほどひやりとしていた。
「叔父う……え……?」
身じろぎして、あの人が目を開けた。
「――ザンネンでした、」
これくらいでいちいち傷付いてはいられない、俺はあの人の肩に羽織を纏わせ、掴んだ腕を首に回して背を立たせた。人の重さにしては、呆気ないほど抵抗がなかった。やはりこの人は、ときどきこうして桜に何かを吸い取られているのだと、下らない妄想を俺に確信させてしまうほどに。
「……どうやら、眠ってしまっていたようですね」
俺の肩に頭を預けてあの人が笑った。そのたび頬を柔らかな髪がくすぐる。
いつの間にか、俺の背丈はこの人とすっかり肩を並べるほどになっていた。今は少し高いくらいかもしれない。その気になればひょいと抱え上げることだってできそうだ、この人を見上げて頭を撫でてもらっていたのは、つい昨日までのことのように思えるのに。
「……花は、まだでしたか、」
本当は聞きたくなんかないくせに、俺は何気を装ってあの人に訊ねた。どってことないじゃないか、開き直らなければやってられない、そういう気分だった。
「このあいだ、ようやく蕾は見付けたんですけど」
あの人は背後の桜を振り仰ぐように言った。俺はわざと足を早めた。
「大方、目敏い鳥にでも食べられてしまったのかもしれません」
「……」
――ざんねんでしたね、ザマァミロ、どちらとも俺は言えなくて、息を潜めて、あの人の低い体温を間近に感じてこれ以上は間がもたなくて、
「……着きましたよ、」
到着した縁側の端にあの人を腰掛けさせる。
「中まで運んでくれればいいのに」
珍しくあの人が拗ねた口調に訴えた。
「甘えないで下さい、」
俺はぴしゃりと言ってやった。或いは、そうして自分にも言い聞かせていたかもしれない。
――ったく、これじゃどっちが保護者かわかりゃしねぇ、髪を掻いてぼやく俺を見て、あの人が軽い笑い声を立てた。
「……おかしな気分ですね、」
短い笑いを納めてあの人は言った。
「ここに来た頃はまだこんな、小さな可愛らしい子供だったのに」
「別に、最初から可愛くはなかったでしょ、」
縁側から廊下を跨いで続きの部屋の障子を開ける。布団を出してやる片手間に俺は返した。
……そうさ、あの頃はこんな、少なくとも見てくれだけは立派にガキじゃなくなるまで、長いことこの人と一緒にいるなんて考えもしなかった。
たまたま性質の悪い連中に追われてて、――ちょうどいい、ほとぼりが冷めるまでの目晦ましだ、ケリがついたらこっちで勝手に出ていきゃいいだけさ、だからおとなしく拾われたフリをして、この人のあとをのこのこ着いてきただけの、それが今ではここがすっかり俺の"家"になってしまった。
「そういう、斜に構えてひねくれたところが昔から可愛らしかった、」
あの人が俺を見てまた笑った。俺は寝床を延べる手を止めた。――まったく、何言ってくれちゃってんだろうこの人は、いちいちどうして、そうして俺の心にいらぬ波風を立てるのか、計算なのか無意識か、どちらにしても始末に終えない。
「……さ、寝るんだったらとっととココに寝て下さい、」
俺は最後に置いた枕の上を叩いてみせた。
「昔みたいに一緒に寝ますか?」
茶化すように俺を見上げてあの人がくすくす笑いを洩らす。ご丁寧に首まで傾げて。
「……殴りますよ」
笑うばかりで風の出始めた縁側から一行に動こうとしないあの人を急かして、俺は大股に近付いた。ゆっくりと持ち上がったあの人の腕が、俺の着物の袖を掴んだ。
「……」
追い風があの人の髪を乱して吹いた。俺を見つめるあの人の目の奥が微かに揺れる。
俺は呼吸を忘れた。随分と長い時間が二人の間に流れた気がした。
「……甘えちゃいけませんよね、」
独り言のように呟いて、あの人の腕がぱたりと落ちた。ほっとしたのか落胆したのか、そのとき自分では判断しかねた。
あの人は自力で縁側に立ち上がると敷居を越えて部屋に入った。廊下側に出た俺は後ろ手に障子を閉めた。二人とも言葉を発さないままだった。
「……それじゃ、他に用があったら呼んで下さい」
一息にまくし立てると俺は逃げるようにあの人の部屋を離れた。返事は聞かなかった。心臓が、いまさら遅れてアホみたいにバクバク波打っていた。

*****

《評》
ひとりよがりのもーそーがだんだんはげしくなってる気がします。もっとがんばりましょう……ってOUCH! アイヤー、うっかり赤ペンてんさくしてひそかなるのぞき見の楽しみを自らフイにするとこだったネ! いけないいけない、私ってばドジッ娘にゃんこ☆ダゾっ★(コツンッ☆) ……さっ、私はナーンも見てませんよーっと、♪フンフフンフフーン……、「!!!」


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