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西浦和の西の西

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 遠くでぼんやり輝く高速道路のオレンジ色の光が、闇の中で不自然な昼を作り出している。駅の方向はそこだけ夜になるのを拒むようにぎらぎらと明るい。
 そういう、金網越しに見る景色がいつも切ないわけを栄口は知っている。
 「動くけど」
 背後から聞こえる水谷の声へ何も言葉を返さずにいたら、勝手を知っているのだろう、栄口の腰を掴んでいた手がぬらりと前に回った。
 水谷は多分自分より自分の身体のことをよく知っているのではないだろうか。どこをどうすれば声が出るとか、もっとよがるとか、栄口が今まで気づくことなどなかった事実を、こうして金網に指を絡めるたび知る。
 もはや前を向いていることすら億劫になり、頭を垂れ、下から覗き込むような形で自分の身体を見た。ボタンをすべて外されたワイシャツの裾がだらしなく揺れる奥に、二組の足がある。自分の足元には下ろされたズボンが情けなくまとまっている。
 今日水谷はジーンズを着てきていて、俺ジーンズは手で洗ってるから汚れたら超めんどいみたいなことを言っていたのにもかかわらず前をはだけただけだった。そして自分のいちばんどうしようもない部分に水谷の指が絡み、揺する。声を出すのも癪なので網の目に痛くなるくらい指を食い込ませ耐える。
 「あれ? 栄口良くない?」
 「……いーよ」
 「あっそ、動くけど?」
 動くけど、なんなんだよ。だいたい水谷は、いつだって……。
 後に続く言葉を待つ間、混沌とする頭の中に愚痴が浮かぶ。じわりとかいた汗によって衣服が肌につく感覚が不快だ。
 (……シャツ脱ぎてぇ)
 ズボンですらまともに脱いでいないのにそれは無理だった。最小限の露出でこんなことをするのには「誰か来たらすぐやめれるように」という意味合いが含まれている。屋外で男同士が性行為をするには色々制約が付きまとう。だったらお互いの家でもいい、どこか別の場所ですればいいのだろう。けれど栄口はなぜかここ以外で自分たちがするところを想像できなかった。
 「ねーねー栄口ぃ」
 「……」
 「青姦の青は青空の青なんだって」
 知るか、と思ったが、あえて言葉にはしなかった。刻々と日が短くなりつつあるこの頃、空は青どころか夕焼けすら通り過ぎ、ぼんやりとした黒で覆われているだけだ。
 疑問も愚痴も、水谷に後ろから突かれたらあっという間に霞む。そのうち全部白くなる。早まる動きに合わせ栄口の腕がしなり、金網がカシャ、カシャと不愉快な音を立てた。
作品名:西浦和の西の西 作家名:さはら