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あしゅりー
あしゅりー
novelistID. 22013
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荒ぶる鷲をその手に

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荒ぶる鷲をその手に(ロベアル)
ー今日、一人の命が散った。

アサシンを探せ!
アッカ貧民区北端に位置する病院では、激しい怨嗟の声で満ちあふれ、血気に
溢れた騎士達が付近の路から小径へと駆けだしていく。
彼らの騎士団長ガルニエ・ド・ナプルスを暗殺した、憎しアサシンを捜すためだ。
押しのけられる民衆の脇を白い影がすり抜け、瞬く間に屋根へと駆け上って行った。
その影に騎士達は気づくはずもなかった。

屋根を駆ける、跳ねる、飛び越える。
アルタイルの身体は、アッカの町を一陣の風の如く、駆け抜けていく。
しなやかな身体の動きと空気の流れにあわせ、身に纏う白衣がたなびき、
一種の美しさを感じさせた。
屋根伝いの路が途切れ、一端立ち止まってから路上の安全を確認してから、
大地に身を降ろし、歩み出した。
支部へと続く道を頭の中で模索し、人目のつかない小径へと足を運ぶ。
小径に入り込み、出ようとしているキリスト教の司祭をやり過ごそうとした時。
相対する腕ー右腕をしっかと掴まれた!
「な・・・っ!」
突然の状況にアルタイルは驚きを表す。
掴まれた腕を振りほどこうと懸命になり、全身のバネをも動員し脱走を試みる。
だが、司祭とは思えぬ強い力に試みは失敗した。
「・・・くっ」
ここで終わるのか?アルタイルの背にひやりと恐怖に似た物が流れた。
そんなアルタイルをよそに、司祭は彼の腕を掴んだまま、近くの家屋の
扉を開き、連れ込んでいった。

「!」
司祭のフードの下から現れた顔を見て、アルタイルは驚愕の表情を見せた。
禿げた頭の頭頂部に走る数丈の傷、少し苦みの走った涼やかな顔。
テンプル騎士団長ロベール・ド・サブレ。
ソロモン神殿にて苦しめられた、あの男だ。
驚きを隠せないアルタイルを見て、ロベールは笑みを見せた。
「やあ、偶然だね」
悠然と構える司祭姿の不倶戴天の敵に、アルタイルは全身を緊張が走るのを感じた。

作品名:荒ぶる鷲をその手に 作家名:あしゅりー