カメラトーク
こんなことをいったい何回しただろう。1日に1回は必ず忘れ物をしてこうしてはるばる7組からやってくる水谷には学習能力がない、と栄口は思った。水谷は悪びれる様子もなく栄口の横でしばらくくだらないことを話して、予鈴の1,2分前くらいにのらりくらりと自分の教室へと戻る。
今日もそんなやり取りの後、1組から出て行く水谷の背中をなんとなく見ていた。
「さ、かえぐちくんて、水谷君と仲良いよね」
突然かけられた声に少し驚いて振り返ると、それは隣の席の女子だった。
「あいつとオレ、同じ部活だしね」
「水谷くんって彼女とかいるのかなぁ」
「いや、いないと思うけど」
栄口がそう返すと、女子はそっかぁ……と少し頬を赤らめて小さくうなずいた。
これは、と栄口は勘付いた。もしかしてこの女子は多少なり水谷に好意を抱いているのかもしれない。
「水谷のこと好きなの?」
「う、ううん、好きとかじゃなくってちょっといいなって思ってるだけ」
それは好きとどう違うのか栄口には分からなかったが、水谷が常々彼女がほしい彼女が欲しいと言っていたのを思い出す。この子は少し水谷にはもったいないという気もする。しかしそんな二人がほほえましくお付き合いを始めるというのも悪くない気がして、誰かの役に立つのが好きな栄口は名案だと思ったのだった。
「俺協力しようか?あいつ彼女欲しいって言ってたし」
その言葉に女子生徒は耳まで真っ赤にした。
「え、そんな、ちょっといいかなって思ってるだけだから」
じゃあ何か俺にできることがあったら言ってよ、と栄口が提案すると、女子生徒はためらいがちにこう言った。
「写真が欲しいんだ」
ずいぶんと慎みのあるお願いじゃあないか。
写真ならこの間合宿したときに持っていったカメラをまだ現像していなかったことを思い出す。多分その中に何枚かは水谷が写っているものもあるだろう。栄口が快諾すると女子生徒ははにかみながらありがとう、と言った。
世の中どこに恋のきっかけが転がっているか分からないが、あの常にふにゃふにゃしている水谷を良いと感じる女子生徒は少し変わっている。いやしかし、自分がそう思っているだけで水谷は結構女子に人気があるのかもしれない。
「あのさ、水谷のどのへんがいいの?」
そう聞くのは失礼だと思ったけれども、なんとなく水谷を好きという理由を知りたかった。
女子生徒は一瞬口ごもり、それから小さく口を開いた。
「誰かのためにみっともないところかな」
今日もそんなやり取りの後、1組から出て行く水谷の背中をなんとなく見ていた。
「さ、かえぐちくんて、水谷君と仲良いよね」
突然かけられた声に少し驚いて振り返ると、それは隣の席の女子だった。
「あいつとオレ、同じ部活だしね」
「水谷くんって彼女とかいるのかなぁ」
「いや、いないと思うけど」
栄口がそう返すと、女子はそっかぁ……と少し頬を赤らめて小さくうなずいた。
これは、と栄口は勘付いた。もしかしてこの女子は多少なり水谷に好意を抱いているのかもしれない。
「水谷のこと好きなの?」
「う、ううん、好きとかじゃなくってちょっといいなって思ってるだけ」
それは好きとどう違うのか栄口には分からなかったが、水谷が常々彼女がほしい彼女が欲しいと言っていたのを思い出す。この子は少し水谷にはもったいないという気もする。しかしそんな二人がほほえましくお付き合いを始めるというのも悪くない気がして、誰かの役に立つのが好きな栄口は名案だと思ったのだった。
「俺協力しようか?あいつ彼女欲しいって言ってたし」
その言葉に女子生徒は耳まで真っ赤にした。
「え、そんな、ちょっといいかなって思ってるだけだから」
じゃあ何か俺にできることがあったら言ってよ、と栄口が提案すると、女子生徒はためらいがちにこう言った。
「写真が欲しいんだ」
ずいぶんと慎みのあるお願いじゃあないか。
写真ならこの間合宿したときに持っていったカメラをまだ現像していなかったことを思い出す。多分その中に何枚かは水谷が写っているものもあるだろう。栄口が快諾すると女子生徒ははにかみながらありがとう、と言った。
世の中どこに恋のきっかけが転がっているか分からないが、あの常にふにゃふにゃしている水谷を良いと感じる女子生徒は少し変わっている。いやしかし、自分がそう思っているだけで水谷は結構女子に人気があるのかもしれない。
「あのさ、水谷のどのへんがいいの?」
そう聞くのは失礼だと思ったけれども、なんとなく水谷を好きという理由を知りたかった。
女子生徒は一瞬口ごもり、それから小さく口を開いた。
「誰かのためにみっともないところかな」