こらぼでほすと 再会4
「いえ、我らは公務員ですから、バイトはご法度です。そちらは、お気になさらないでください。」
「じゃあ、なんだ? ちゃっちゃっと言え。」
「はあ、トダカとは、どういう関係で? いえ、職場の同僚というのは知っているんですが、いきなり、手伝いだと、言いますし、もしかして、交際でもされているのかと・・・・」
そのアマギの言葉に、トダカは、「冗談を。」 と、笑っているが、三蔵は、懐にブツがないことを残念に思いつつ、「てめぇーは死んでこいっっ。」 と、アマギの腹に、軽めの蹴りを見舞った。もちろん、アマギは廊下から庭へ勢い良く転がり落ちた。
「おい、トダカさん。」
「口説かれた話をしたから誤解してるんだ。」
そう酔っ払うと口説き魔となる三蔵が、ついつい口説く相手はトダカだ。なんせ、カウンター越しで、酒を作っているバーテンダーだから、客がいなければ、三蔵はカウンターでトダカ相手に酒を飲んでいることが多い。
「え? 」
「カウンター越しでなければ、お引き受けするけどね。はははははは。」
酔っ払ったら記憶も危うい男だから、トダカも本気にしない。 ただ、笑い話にはなるから、親衛隊に教えたら、「まさか、トダカさんがっっ。」 と、大騒ぎになったのだと笑っている。アマギへの暴行なんて、トダカも、さらっとスルーだし、鍛えている軍人のアマギは、すぐに起き上がって、やっぱりちょっと離れて背後からついてくる。
「あーすまないな。俺は覚えちゃいないんだが・・・・」
「はははは・・・わかってるよ。私が、独り身だから、あれらも気が気でないんだろう。」
「だが、あんたには、息子がいるじゃないか。」
「シンは養子だからね。それに、あの子は、もう一人、立派な保護者がついている。」
シンは、戦災孤児で、それを救助したトダカが、養子にした。懐いてくれているのだが、仕事の関係で、どうしても、プラントの後見人のほうに偏りがちだ。それが、『吉祥富貴』 で、顔を合わせられるようになって、トダカは大喜びだった。
「・・・・ったく、どこのガキも、保護者に心配ばかりかけさせる。」
「悟空君はいい子だよ、三蔵さん。」
「バカでサルだけどな。」
「はははは・・・・・うちのシンだって、可愛い黒柴だ。」
どっちも親バカ全開な会話をしているのだが、遠目にしているトダカ親衛隊の面々は、ふたりが微笑ましく語らっている姿に、「あ、やっぱり、そうなの? 」 とか、違う勘違いをしていたりする。その事実を、三蔵が知ったら、仏罰ではなく、鬼畜坊主のマグナムで地獄行き急行に乗せられるのは確定だ。
さて、こちら、トダカさんちの黒柴は、キラのお宅へ、レイと共に朝から出向いていた。どうしても、お願いしなければならないことができたからだ。それも、早急に。
「申し訳ありません、アスラン。ギルが、この騒ぎを嗅ぎつけてしまって。」
レイはお願い事項を口にして平謝りしている。それなりに情報は漏れているだろうと思っていたが、アスランも、はあと溜息をつく。騒ぎに介入するような愚か者は、たぶんいない。知っていたとしても、あの暗黒歌姫様に刃向かえば、どういう報復がなされるか、わからないからだ。だから、そういう政治絡みではないのが、唯一の救いだが、それでも面倒なのは面倒だ。
「だがな、レイ。刹那の顔が知れるのは、ちょっとまずいぞ。」
「私も、そう言ったんですが・・・・それは、もう知っているからと。」
「で、ギルさんは、僕と刹那のツーショット写真のお礼に、何をしてくれるの? 」
ようやく着替えたキラと、その着替えの手伝いをしていたシンが、話に加わる。
レイの保護者で、シンの後見人は、「キラとキラの子猫のツーショットが、どうしても欲しい。」 と、ねだったのだ。それも、本日中に、という、お急ぎモードという、おまけつきである。
「CBへの技術提供ということですが・・・・・後、キラさんのお願いでしたら、なんでもオッケーだと申してました。」
「んーーーー、何にしようか? アスラン。」
「さあ? ていうか、引き受けるのか? キラ。」
「別にいいよ。それで、悪さするっていうのなら、僕が、アスアス5号ちゃんを、ギルさんとこのマザーに送るもん。」
キラ以外の、三人が、げっと顔色を変えた。キラは、のほほんぽややんだが、最高のコーディネーター様である。強力ウイルスを作って、プラントのマザーコンピューターに放り込むぐらいは朝飯前だ。
はっきり言って、それはプラントの壊滅を意味したりする。
「それ、大量虐殺だからっっ、キラさんっっ。やるなら、ギルさんオンリーにしてっっ」
「どうせなら、ピンポイントでギルだけをっっ」
おまえら、保護者で後見人が壊滅してもいいんだな? と、アスランは、ちょっと引くご意見だ。
「キラ、アスアス5号って・・・・・俺の名前か? 」
「うん、可愛いだろ? 」
「でも、大量殺掠ウイルスなんだよな? 」
「でも、ギルさんが何もしなければ、問題ないよ? すでに、四号までは、マザーに埋め込んであるし。」
「「「えええっ」」」
「あ、あのね、レイ。おいしい果物とお菓子を一杯、プラントから取り寄せて。刹那に食べさせてあげたいから。」
きゃわきゃわと、キラは、すでに果物に思いを馳せている。残り三人は、今、聞いた事実を、切実に忘れたいと願っていた。
作品名:こらぼでほすと 再会4 作家名:篠義