君だけに首ったけ!
ホールの窓際の席にふたりで向かい合って座った。相変わらず辺りはざわついていたけど、あまり気にならなかった。ふたりで話したのが久しぶりだったからかな。俺にプリンをみっつ買い(おまけでアイスもひとつ買ってもらった。アーサーは太るぞ、とかぶつぶつ言っていたけど)、アーサーは自分で紅茶をホットで注文した。カップに口をつけると、アーサーはやっぱり紅茶は家で飲むのが一番だな、とかいつものようにぶつくさ言いだした。じゃあ飲まなきゃいいのに、と思うのに毎回ホールに来ると頼むところを見ると、まんざらでもないんだろう、って俺は思ってる。
俺はアイスとひとつめのプリンをすっかり食べてしまって、ふたつ目に取りかかろうという時に、アーサーをちらりと見て、尋ねた。
「生徒会のほうはいいのかい?」
「……ん、ああ、問題ねぇよ」
「それならいいけど」
「それにしても!全く、財布くらい持ち歩けよ何かあったら困るだろうが!」
それからずっと、彼はぐちぐちと俺にお説教をした。全く、アーサーはホントに説教が好きなんだな、久しぶりに会ったっていうのに事実閉口するけど、今日ばっかりは適当に相槌を打って、文句は言わないでおいてあげた。
だって、俺の電話のために息を乱して駆けつけてくれたアーサーは、全くもっていつもの『きちんとした』彼じゃなかったが、緑色の綺麗な瞳だけはいつものままだった。その爛々と輝く瞳に久々に見つめられたとき、不覚にも俺は、嬉しい、なんて思ってしまった。
絶対に言わないけど、会えてほんのちょっとだけ嬉しかったから、少しくらいのお説教には耐えてあげよう、って思ったんだ。絶対に、教えてなんてあげないけど。