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ふざけんなぁ!! 5

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19.もしあの日、アパートが崩壊しなかったら? 1




「帝人ちゃんはきっと、一生静ちゃんと関る事無かっただろうね。静ちゃんはさ、自分に優しくしてくれる女が来たら、先着順でどんなのでも好きになるような奴なんだよ。君はたまたまおのぼりさんで、自動喧嘩人形なんて呼ばれている、暴力的な静ちゃんを知らなかった。だから、普通に相手ができたんだろうけど、池袋にいる女で、静ちゃんに果敢に話しかけるのは、羽島幽平を紹介して欲しい奴ぐらいだから。

あーあ、本当に最悪。
あんなのに懐かれるなんて、マジ帝人ちゃんが可哀想。


ねぇねぇ静ちゃん。好きな女の子を、こんなにも怪我させて楽しい?
出会ってから今日までの間、何本骨折ったの? いくつ彼女の華奢な身体に痣作ったの?
彼女がまともに学生生活送れないのって、あきらかに静ちゃんのせいだよね。

いい加減、君は帝人ちゃんを解放すべきだよ? つーか、死んで♪」



(新羅の家で鉢合わせ、殺し合いした時の、ノミ蟲の独白から抜粋)



★☆★☆★




それは、静雄が帝人を襲う……と、勘違いしたセルティに、散々黒バイクで轢かれた夜、誤解が解けた後の事だった。


『帝人の心の傷は深い』
セルティが、PDAを躊躇いながら突きつける。

『日中、いつも笑顔を絶やさない帝人だったが、預かっていた一週間の間、夜寝かしつけても、『苦しい、気持ち悪い、触るな』と、魘されて泣く事が多々あった。新羅は、臨也に拉致され、犯されかけたトラウマだと言っている。こればかりは、時間が解決するのを待つしかない』


(ノミ蟲めぇぇぇぇ!!)



静雄は帝人から、直で話は一切聞かなかった。
勿論、何があったのか物凄く気になったが、思い出すのも辛いだろう話を、少女の口からあえて言わせるなんてとんでもない。そういう常識ぐらい、空気をあまり読めない静雄だって持ち合わせている。

新羅が治療の一環で、帝人と臨也の双方からどういう状況だったのか聞きだした内容を、又聞きしたのが全てだ。
レイプは未遂で、ベッドに押し倒されてパンツ一枚というあられもない姿にされたけれど、帝人は目覚めて直ぐに吐きまくったから、キス一つしていない。

そう聞いて、すっかり安堵していた。
馬鹿か俺は。
帝人はまだ、たった15歳の純真な少女だ。
男に圧し掛かられて、怖くない筈なかったのに。

自分目線で考えてたから、彼女の心の傷に全く気がつかなかった。
こんな自分自身、今直ぐ思いっきり殴り飛ばしたい心境だった。



★☆★



自宅に戻れば、リビングのソファーをベッドに組みなおし、隅っこで丸くなって眠っている帝人を見つけた。
きっと、静雄の帰りを待っていてくれたのだろうが、時計の時刻はもう午前三時を回っている。起こすのも可哀想だ。

汚れたバーテン服を洗濯機に突っ込み、シャワーを軽く浴び、寝巻き用の黒スウェットに着替えた後、クローゼットから掛け布団を一枚引っ張り出して、フローリングの床に転がる。
帝人がベッドで静雄用の空間を、空けてくれているのは判っていたけれど、セルティから重い話を聞いた直後では、もし怖がらせちまったらと思うと滑り込む気になれなくて。

電気をぱちりと消し、目を瞑る。
シンと静まり返った部屋の中、帝人の穏やかな寝息を聞きつつ、うとうとし始めた頃、「やだ……、苦しい……、助けて……」
そんなか細い泣き声が聞こえてきた。

「おい、帝人?」

慌てて明かりをつけて飛び起き、ソファーベッドに乗り上げて顔を覗き込めば、眉間に皺を寄せ、目じりに涙を溜めている。
唇を戦慄かせ、か細い声で、『苦しい』『気持ち悪い』『嫌だ』『助けて』を延々くり返す。
それが可哀想で。

「………大丈夫、大丈夫だからな………」

結局、ソファーベッドに潜り込み、仰向けに転がってから彼女を抱き上げ、自分の左胸に耳が乗るように転がしてやる。
前に、赤ん坊に心臓の音を聞かせてやれば、安心して眠ると昔、聞いた事がある。
帝人はガキだし、童顔だし。
っていうか、何かこいつのためにしてやりてぇのに、馬鹿だからこんな事ぐらいしか思いつかなくて。


「大丈夫、大丈夫だからな。帝人、もう大丈夫だから、俺がついてる、怖いもんなんて、全部ぶっ飛ばしてやる」

手の平で背をぽしぽし撫でながら、そう、何度も何度も繰り返し囁き続ける。
涙が溜まった目が、ほんの少し微笑んだ気がし、静雄もほっと胸を撫で下ろした。



★☆★☆★




「………ふ、ふぎゃぁぁぁぁぁ………、私、なんでぇぇぇぇ!!……」


翌朝、青い大きな目をまん丸に見開き、目覚めた帝人はあわあわと身動ぎした。
自分はどうして、静雄を下敷きにして眠っていたのだろう?


「……うわぁぁぁぁ、静雄さんごめんなさい!! 重かったですよね………」


両手を突っ張って身を起こすと、背に回されていた彼の大きな右腕が外れる。
ああ彼はきっと一晩中、自分を抱きしめて眠ってくれていたんだ。
今日、あまり体が疲れていないのはきっと、不快な夢を見なかったお陰だろう。

彼女の真下でくうくう寝息を立てて寝ている彼は、カーテン越しの柔らかな日の光を浴び、ギリシャ神話に出てくる、太陽神アポロンを髣髴させるぐらい美しい。
彼の顔を見ていると、ほっとする。
でも、あんまり見続けていると、勘が鋭いこの人は起きてしまうだろうし、見蕩れてる自分自身、どきどきと心臓の鼓動が早くなり、顔が火照ってくる。


「………静雄さん大好き。いつも私を守ってくれてありがとうございます。私、貴方に会えてよかった。これからもずっと……、一緒にいたい……、です………」


ちゅっ……と、唇を重ねてみた。
本当に、微かに触れる程度だったけれど。
自分でやっておきながら、恥ずかしくなってますます顔が赤くなる。


「……えへへ、私のファースト・キス……、あげちゃった♪……」


名残惜しいが、これ以上べたべたゴロゴロしていたら、きっと彼を起こしてしまう。
それに、一週間ぶりに、二人っきりの朝ごはんなのだ。
静雄さんはファーストフードが大好きだし、たまにはマックの類似メニュー並べてもいいだろう。

照り焼きチキンとトンカツのハンバーガーを一個ずつ。アップルパイとフライドポテト、カスタード・プディングに、シェイクの代わりにチョコレートとバニラのアイスクリーム、チキンナゲットの代わりに鳥のから揚げ、それから甘いコーヒー。
後、野菜が足りないから、ほうれん草入りのオムレツもメニューに加えてもいいかもしれない。

「待っててくださいね。今、とびっきり美味しい朝ごはん、つくっちゃいますから♪」

真っ赤なほっぺを両手で隠し、ソファーベッドからそっと滑り降りると、足音を殺してキッチンへと向かった。


そして、帝人が完全にリビングから姿を消した途端、寝ていた筈の静雄の顔も、みるみるリンゴのように赤くなり。


「…………俺だって今……、ファースト・キスだったんだけど………」


ぼぼぼぼっと、益々顔が火照ってしまう。
「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお」

掛け布団を引っつかむと、がばりと頭から引っかぶった。
作品名:ふざけんなぁ!! 5 作家名:みかる