ふざけんなぁ!! 5
「本当に君は、どこまでも上から目線だよね。もし私のセルティに害をなすと言うのなら、こちらも一切容赦しないから、そのつもりで」
そんな新羅の言葉を聞き流しつつ、臨也はリビングを突っ切って、すたすたとキッチンを覗いた。
時刻はもう11時半。
いつもならせっせと昼食の準備を始めている筈なのに、小柄な彼女の姿は何処にも無くて。
「ねぇ、帝人ちゃ~ん? 食後のデザートはチョコレートマカロンだよ? えいこく屋の紅茶も買ってきた。オレンジペコー入れてよ、ねぇ?」
探しながらしつこく呼びかけていると、いつの間にか背後にきた新羅が、ぽしっと肩に手を置く。
「帝人ちゃんなら、昨夜お家に帰ったよ」
「はぁ!?」
途端、胸の中にどす黒い怒りが湧き起こる。
「……静ちゃんが、俺の帝人ちゃんを誘拐したの……」
はぁっと、中学の時以来の主治医が、呆れ返った溜息を零す。
「どうしてそんな風に思い込めるのかなぁ。私は君の想像能力も、非常に残念な部類にあると断言せざるをえないよ。私が退院許可を出したんだ。だから彼女は自発的に静雄の家に戻った。ただそれだけだよ」
「何で俺の玩具を、勝手に出しちゃうんだよ!!」
「……おもちゃ?……、おいおい、君って本当に酷い奴だな………」
ムカついてムカついて堪らなかった。
自分の今一番のお気に入りを、静雄なんかに持っていかれたのが悔しくて。
ぷくっと頬を膨らませた臨也は、ポケットから携帯を取り出すと、短縮ボタンを鳴らした。
「ああ、俺、折原だ。今から平和島静雄を殺っちゃって」
《無理ですーーーーーーーー!! それ、ゴジラに喧嘩売れって、言ってるようなモンじゃないっすか!!》
携帯の小さな受話部分から、男の野太い絶叫が響いてきた。
やくざの下っ端にもなれなかったチンピラ風情が、この自分に口答えなんて、ムカつく。
臨也はむすっと膨れたままぽつりと囁いた。
「ふーん、埠頭の倉庫に置いてあるコカイン、警察にばらしてもいいんだ」
《行って来まぁーーーーーーーす!!》
元気の良い返事を受け取り、直ぐに電話を切り、次の短縮ナンバーを打ち込む。
「俺、折原だけど。静ちゃん直ぐに殺してきて」
《やめて下さいよ。それ、特攻かけて死んで来いって事ですよね?》
「改造拳銃の取引の件、警察に……」
《判りました!! お任せ下さい!!》
「静ちゃん殺して。直ぐ行って」
「とっととばっさり、一思いに殺しちゃって」
「いい、いい、いいから行けよ。直ぐに!!」
相手から快く……、狂気混じりの了承を得る度、彼は延々と次の相手の携帯を鳴らす為、ボタンを押しまくる。
何処にかけてもイライラが止まらない。
彼は衝動に駆られるまま、携帯を弄り続けた。
作品名:ふざけんなぁ!! 5 作家名:みかる