こらぼでほすと 再会5
どうにか、土曜日には熱が下がったので、医者のほうは、「また明日。」 と、朝から必要な
処置はして戻った。とはいえ、クスリの加減で、うとうとしているロックオンは、とりあえず、
医療ルームに留められている。日に何度も刹那が様子を伺いに行くのが、とてもおかしくて、八
戒も肩を震わせるばかりだ。
土曜日は、キラも大忙しだった。別荘に行く前に、行きたいところがあったので、シンとレイ
をお供にして、さっさかと出て行った。「アスランは来ちゃダメっっ」 と、止められたものの
、こっそり尾行して、納得はした。贈る相手がなくなった自分に対しての気遣いからだとわかっ
たからだ。
・・・・気にしなくてもいいのに・・・・
でも、その気遣いが嬉しいのも事実だが、それが戦災孤児のシンと元から親のないレイに対し
ては発揮されないのが、キラらしいと言えば、らしい。しょうがないな、と、自分も、その店に
顔を出した。
「キラ、俺からも贈らせて。」
ぽんっっと肩を叩いたら、びっくりされた。手に持っていたオレンジ色の花を落としてしまう
。
「アスラン。」
「カリダさんだろ? 」
「・・うん・・・それと、ね・・・」
こそこそと、キラが耳元に囁いた言葉に、ああ、と、頷いた。シンとレイも、どうやら事情が
わかっているらしく、いろんな色の花を手にしている。
「俺は来月、ふたりに贈るよ。だから、気にしてない。レイも、そうするんだ。」
シンは、アスランが考えていたことを、さらりと答えた。ここにいる人間で、両親が残ってい
るのは、キラだけだ。
「俺も、カリダさんに贈りたいな、キラ。」
俺の義理のお母さんだからね、と、アスランが、もっともポピュラーな真紅の花を手にする。
「そうだね。アスランが、その色なら、僕はオレンジにしよう。」
一色で纏められた花束と花篭を注文して、それを配達してもらうように頼んだ。ほとんど実家
に帰らない生活だが、仲が悪いわけではない。たまに、シンたちを連れて帰省したりしているか
ら、「じゃあ、俺も。」 「俺も。」 と、残りのふたりも、同じようにピンクと黄色で花束に
して、カリダに贈ることにした。
理想的な母親だけど、やっぱり、キラの遺伝子の素と知り合いなので、どこか天然なカリダは
、「子供が、また増えた。」 と、大喜びするだろう。
「さて、こっちは終わり。・・・・シン、レイ、運ぶの手伝ってね。」
そこにある特定の花を、大量に買い込み、キラたちは別荘に向った。
「おまえは食ったのか? 」
「悟空と食べた。」
「・・あー・・だから、零すからいいって。自分でやる。」
「ダメだ。あんたは、ズルをする。」
「おまえなー、ズルとか言うな。そんなに食えないって言ってんだろーが。」
「いや、そこで、押し問答しているなら、速やかに口に放り込め、刹那。」 と、悟空が、指
示を出す。怪我人で病人になったロックオンの食事は、刹那のお手伝いになった。
なったのは、いいのだが、限度は考えない子猫なので、へばっているロックオンが食べきれな
い量を強要する。さすがに、それはイジメだろう、と、八戒が、悟空をストッパー役に任命した
。と、いうのも、アイルランド出身のロックオンが好むものというものが、八戒にはピンと来な
かったから、いろいろと用意して運ばせているからだ。いろんな種類となると、必然的に量も増
加する。全部食べろ、という意味ではない、と、説明はしているが、子猫は理解しないつもりら
しい。
そして、誰が教えたのか、「あーん」 とかさせようとするから性質が悪い。起き上がれるの
に、それをされる言われはないというのが、ロックオンの主張なのだが、子猫は聞く耳なんて持
ってくれない。
「中華粥のほうが食べやすいんだな。」
レンゲで、せっせと口に運ぶ刹那に、辟易しつつ、ロックオンも食べている。その様子に、悟
空は意外だと、口にした。たぶん、これかな? と、八戒が用意したオートミールよりは、そち
らのほうが食が進むらしい。
「はい、ストップ、刹那。・・・・味がやわらかいのが食べやすいな。」
話しかけてきた悟空に相槌を打つために、レンゲを手で止めた。むうっと刹那は口をへの字に
しているが、とりあえず、手は止めた。
「刹那も好きみたいだ。」
「あんまり、料理の種類は食べさせていないけど、割と中華っていうのは、万国共通メニューだ
から何気に食べてたからだろ。」
さすがに、箸までは使えないけどさ、と、ロックオンが、そこにあるりんごを手で摘んで食べ
ている。もう食事は終わり、という合図だ。自分の口に放り込んで、それから両手に、ひとつず
つ、りんごを手にして、悟空と刹那の口に運ぶ。
「はい、ごくろーさん。」
やっぱり、ロックオンって、おかーさんみたいだよな? と、悟空は、放り込まれたりんごを
咀嚼しつつ考える。レンゲから零したお粥で、汚れた刹那の手を拭いているあたりが、いかにも
、おかーさんらしい。そして、「おまえ、クスリは?」 とか尋ねている。
「飲んだ。ロックオンも飲め。」
「あれなあー、ものすごく眠くなるんだよ。」
寝てばかりで、さすがに寝るのが疲れるとか苦笑しているが、そんな苦情は、刹那には意味が
ない。食べさせるのを諦めたら、即座に、水とクスリを突き出す。
「肺炎になるよりはいい。」
「・・・おまえ・・・肺炎の意味わかってないだろ? 」
「わからなくても現状より悪化するという意味なのは、理解している。」
「ロックオン、くすり、くすり、くすり。飲まないと、また熱が上がるって、八戒が言ってたか
ら。」
ふたりして、わきょわきょと騒がれて、仕方なく、クスリを飲む。飲まないと、延々と、耳元
でわきょわきょと騒ぐからだ。
「よしっ、任務終了っっ。」
食器を片付けていたら、キラが、やってきた。ニパニパ笑って、「ちょっと借りるねー」 と
、刹那の腕を取って走り出す。また、遊び相手が来たか、と、ロックオンも横になった。
「悟空、手間かけて悪いな。」
「別にいいよ。刹那が、ちょっと元気になったみたいだからな。」
「・・うん・・・ちょっと落ち着いたみたいだ。」
「ロックオンが元気になったら完璧だよ。」
「違いない。」
じゃあ、おやすみーと、悟空も食器を運んで出て行く。いや、おまえらのお陰だとも思うよ、
と、ロックオンは、その背中に声だけはかけた。
刹那を引っ張って、庭へ出てきたキラを待っていたのは、シンとレイだ。デジカメを手にして
、「早く、早く。」 と、手を振っている。とりあえず、ふたりして手を繋いでいるのと、キラ
が刹那を抱きしめているのを、カメラに収めると、さっさと地下へ走り去った。これから、一泊
二日で、プラントへ里帰りだからだ。
「あのさー、あれ、動かすのって、すげぇー金がいるんだろ? たかだか里帰りってんなら、シ
ャトルで帰ればいいんじゃねぇーのか? アスラン。」
処置はして戻った。とはいえ、クスリの加減で、うとうとしているロックオンは、とりあえず、
医療ルームに留められている。日に何度も刹那が様子を伺いに行くのが、とてもおかしくて、八
戒も肩を震わせるばかりだ。
土曜日は、キラも大忙しだった。別荘に行く前に、行きたいところがあったので、シンとレイ
をお供にして、さっさかと出て行った。「アスランは来ちゃダメっっ」 と、止められたものの
、こっそり尾行して、納得はした。贈る相手がなくなった自分に対しての気遣いからだとわかっ
たからだ。
・・・・気にしなくてもいいのに・・・・
でも、その気遣いが嬉しいのも事実だが、それが戦災孤児のシンと元から親のないレイに対し
ては発揮されないのが、キラらしいと言えば、らしい。しょうがないな、と、自分も、その店に
顔を出した。
「キラ、俺からも贈らせて。」
ぽんっっと肩を叩いたら、びっくりされた。手に持っていたオレンジ色の花を落としてしまう
。
「アスラン。」
「カリダさんだろ? 」
「・・うん・・・それと、ね・・・」
こそこそと、キラが耳元に囁いた言葉に、ああ、と、頷いた。シンとレイも、どうやら事情が
わかっているらしく、いろんな色の花を手にしている。
「俺は来月、ふたりに贈るよ。だから、気にしてない。レイも、そうするんだ。」
シンは、アスランが考えていたことを、さらりと答えた。ここにいる人間で、両親が残ってい
るのは、キラだけだ。
「俺も、カリダさんに贈りたいな、キラ。」
俺の義理のお母さんだからね、と、アスランが、もっともポピュラーな真紅の花を手にする。
「そうだね。アスランが、その色なら、僕はオレンジにしよう。」
一色で纏められた花束と花篭を注文して、それを配達してもらうように頼んだ。ほとんど実家
に帰らない生活だが、仲が悪いわけではない。たまに、シンたちを連れて帰省したりしているか
ら、「じゃあ、俺も。」 「俺も。」 と、残りのふたりも、同じようにピンクと黄色で花束に
して、カリダに贈ることにした。
理想的な母親だけど、やっぱり、キラの遺伝子の素と知り合いなので、どこか天然なカリダは
、「子供が、また増えた。」 と、大喜びするだろう。
「さて、こっちは終わり。・・・・シン、レイ、運ぶの手伝ってね。」
そこにある特定の花を、大量に買い込み、キラたちは別荘に向った。
「おまえは食ったのか? 」
「悟空と食べた。」
「・・あー・・だから、零すからいいって。自分でやる。」
「ダメだ。あんたは、ズルをする。」
「おまえなー、ズルとか言うな。そんなに食えないって言ってんだろーが。」
「いや、そこで、押し問答しているなら、速やかに口に放り込め、刹那。」 と、悟空が、指
示を出す。怪我人で病人になったロックオンの食事は、刹那のお手伝いになった。
なったのは、いいのだが、限度は考えない子猫なので、へばっているロックオンが食べきれな
い量を強要する。さすがに、それはイジメだろう、と、八戒が、悟空をストッパー役に任命した
。と、いうのも、アイルランド出身のロックオンが好むものというものが、八戒にはピンと来な
かったから、いろいろと用意して運ばせているからだ。いろんな種類となると、必然的に量も増
加する。全部食べろ、という意味ではない、と、説明はしているが、子猫は理解しないつもりら
しい。
そして、誰が教えたのか、「あーん」 とかさせようとするから性質が悪い。起き上がれるの
に、それをされる言われはないというのが、ロックオンの主張なのだが、子猫は聞く耳なんて持
ってくれない。
「中華粥のほうが食べやすいんだな。」
レンゲで、せっせと口に運ぶ刹那に、辟易しつつ、ロックオンも食べている。その様子に、悟
空は意外だと、口にした。たぶん、これかな? と、八戒が用意したオートミールよりは、そち
らのほうが食が進むらしい。
「はい、ストップ、刹那。・・・・味がやわらかいのが食べやすいな。」
話しかけてきた悟空に相槌を打つために、レンゲを手で止めた。むうっと刹那は口をへの字に
しているが、とりあえず、手は止めた。
「刹那も好きみたいだ。」
「あんまり、料理の種類は食べさせていないけど、割と中華っていうのは、万国共通メニューだ
から何気に食べてたからだろ。」
さすがに、箸までは使えないけどさ、と、ロックオンが、そこにあるりんごを手で摘んで食べ
ている。もう食事は終わり、という合図だ。自分の口に放り込んで、それから両手に、ひとつず
つ、りんごを手にして、悟空と刹那の口に運ぶ。
「はい、ごくろーさん。」
やっぱり、ロックオンって、おかーさんみたいだよな? と、悟空は、放り込まれたりんごを
咀嚼しつつ考える。レンゲから零したお粥で、汚れた刹那の手を拭いているあたりが、いかにも
、おかーさんらしい。そして、「おまえ、クスリは?」 とか尋ねている。
「飲んだ。ロックオンも飲め。」
「あれなあー、ものすごく眠くなるんだよ。」
寝てばかりで、さすがに寝るのが疲れるとか苦笑しているが、そんな苦情は、刹那には意味が
ない。食べさせるのを諦めたら、即座に、水とクスリを突き出す。
「肺炎になるよりはいい。」
「・・・おまえ・・・肺炎の意味わかってないだろ? 」
「わからなくても現状より悪化するという意味なのは、理解している。」
「ロックオン、くすり、くすり、くすり。飲まないと、また熱が上がるって、八戒が言ってたか
ら。」
ふたりして、わきょわきょと騒がれて、仕方なく、クスリを飲む。飲まないと、延々と、耳元
でわきょわきょと騒ぐからだ。
「よしっ、任務終了っっ。」
食器を片付けていたら、キラが、やってきた。ニパニパ笑って、「ちょっと借りるねー」 と
、刹那の腕を取って走り出す。また、遊び相手が来たか、と、ロックオンも横になった。
「悟空、手間かけて悪いな。」
「別にいいよ。刹那が、ちょっと元気になったみたいだからな。」
「・・うん・・・ちょっと落ち着いたみたいだ。」
「ロックオンが元気になったら完璧だよ。」
「違いない。」
じゃあ、おやすみーと、悟空も食器を運んで出て行く。いや、おまえらのお陰だとも思うよ、
と、ロックオンは、その背中に声だけはかけた。
刹那を引っ張って、庭へ出てきたキラを待っていたのは、シンとレイだ。デジカメを手にして
、「早く、早く。」 と、手を振っている。とりあえず、ふたりして手を繋いでいるのと、キラ
が刹那を抱きしめているのを、カメラに収めると、さっさと地下へ走り去った。これから、一泊
二日で、プラントへ里帰りだからだ。
「あのさー、あれ、動かすのって、すげぇー金がいるんだろ? たかだか里帰りってんなら、シ
ャトルで帰ればいいんじゃねぇーのか? アスラン。」
作品名:こらぼでほすと 再会5 作家名:篠義