選ばれなかった未来
恐らくその役目はもう人類ではない。
彼はそれを選ばなかった。ヒトナリが選ばなかった。彼は強者であり、荒野に立つたった一人だ。
そして彼は選び取った。生き残るに相応しいのは何者かを選択した。それは、もう人類ではなかった。
赤い化け物になってしまった人間を思い出す。
その傍ら、まるで護る者のように佇んでいたヒトナリを思い出す。
彼は見えないように体で隠したその影で、ヒメネスの指先をそっと握っていた。
まるで密やかな関係のように。恋に馴れない子どもたちが、けれども眩しい程の純粋さで手を取り合うように。
(あぁ、あの時もう、ヒトナリは決めてしまっていたんだ)
(誰を選んで、誰を棄てて、誰を護って、誰を殺してしまうのか)
選ばれなかった未来
(―――人類は、もう救われない)