最初はグー
上着を脱いだあと、確かめるように一瞬だけ目を合わせたら、手のひらを軽く握り締めて相手の前に出す。
それがいつもの合図。
「「じゃーんけーん」」
僕の広げた5本の指を見て水谷はうなだれる。
もうこうして何度じゃんけんをしたのか覚えてない。いちいち回数を記憶しているのもなんだと思う。もし水谷が覚えているとしたら奴には無い殊勝な心がけだ。だから、ありえない。
「いただきます。」
「ううう……。」
縮むようにして床にしゃがんでしまった水谷はかわいらしいが、これではなにもできないので、片手で軽く小突くとあっさりバランスを崩し倒れこんだ。そのひざとひざの間に分け入って足を開かせると、おびえたように腰を引いて僕から遠ざかる。かまわず水谷のうすい唇に軽く口付けたら目尻がさっきより情けなく下がっていた。
「さて今日はどうしようか。」
「この前の、ああいうの、やだなー……なんて」
「ああいうのって?」
「したじゃん!エロいの!」
ああ、あれね……と合点がいくと水谷はふくれてそっぽを向いてしまった。そのエロいのも最初にしてきたのは水谷だったのにこの態度はないんじゃないだろうか。
淡い色のTシャツの下、やさしく火照るからだにそっと手を這わせる。僕の手が幾分か冷たかったのだろう、あばらのあたりにさわさわと鳥肌が立ち、歯を食いしばり声を堪える水谷の顔は間抜けだ。
気づいているだろうか。ここ最近水谷はずっとグーを出していることに。
そういうわけで僕はじゃんけんの掛け声にいつも手を大きく開いてかざす。
入れられるよりは入れるほうがいいとかいう無粋な考えじゃなく、純粋に水谷を攻め立てるのは楽しい。
つたない指が汗で湿った背中をたどる。快感に合わせ立てられる爪はたいして痛くないのだけれど、跡がついたらやっかいだ。今度するときは手を握ったほうがいいかな、そう考える僕の下でかなりいい顔をした水谷が切れ切れにつぶやく。
「い、」
痛い?嫌?良い?
僕はその答えを知らない。
それがいつもの合図。
「「じゃーんけーん」」
僕の広げた5本の指を見て水谷はうなだれる。
もうこうして何度じゃんけんをしたのか覚えてない。いちいち回数を記憶しているのもなんだと思う。もし水谷が覚えているとしたら奴には無い殊勝な心がけだ。だから、ありえない。
「いただきます。」
「ううう……。」
縮むようにして床にしゃがんでしまった水谷はかわいらしいが、これではなにもできないので、片手で軽く小突くとあっさりバランスを崩し倒れこんだ。そのひざとひざの間に分け入って足を開かせると、おびえたように腰を引いて僕から遠ざかる。かまわず水谷のうすい唇に軽く口付けたら目尻がさっきより情けなく下がっていた。
「さて今日はどうしようか。」
「この前の、ああいうの、やだなー……なんて」
「ああいうのって?」
「したじゃん!エロいの!」
ああ、あれね……と合点がいくと水谷はふくれてそっぽを向いてしまった。そのエロいのも最初にしてきたのは水谷だったのにこの態度はないんじゃないだろうか。
淡い色のTシャツの下、やさしく火照るからだにそっと手を這わせる。僕の手が幾分か冷たかったのだろう、あばらのあたりにさわさわと鳥肌が立ち、歯を食いしばり声を堪える水谷の顔は間抜けだ。
気づいているだろうか。ここ最近水谷はずっとグーを出していることに。
そういうわけで僕はじゃんけんの掛け声にいつも手を大きく開いてかざす。
入れられるよりは入れるほうがいいとかいう無粋な考えじゃなく、純粋に水谷を攻め立てるのは楽しい。
つたない指が汗で湿った背中をたどる。快感に合わせ立てられる爪はたいして痛くないのだけれど、跡がついたらやっかいだ。今度するときは手を握ったほうがいいかな、そう考える僕の下でかなりいい顔をした水谷が切れ切れにつぶやく。
「い、」
痛い?嫌?良い?
僕はその答えを知らない。