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B.PIRATES その1

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 初めて見た白哉の戦いぶりに、見惚れたようにぼうっとしている浮竹に向かって、白哉がいつもの態度で話しかけた。

「解ったか浮竹。敵の狙いは私だ。 私が原因となってこの船が奇襲を受けている以上、私が奥で隠れている法はない。 
…私は敵船に移り、敵を減らし、指揮官を押さえる。 私があちらに移れば、敵もあらかた移ってこよう。速やかに戦地を替え、この船の体勢を整えろ。浮竹。」
「白哉…! …ダメだ、危…」
「賛成だね。」
 白哉の策に浮竹が抗議しようとした時、浮竹の言葉を遮るように、いつのまに近くに居たのか、京楽春水が割って入った。
「京楽…」
 多少返り血を浴びて、髪も乱れた京楽が、剣に付いた血を払いながら、やや早口に言った。
「大事な戦力が、何をこんなところで油売ってんのさ、浮竹。 もう痴話ゲンカやめやめ。状況、解かってんでしょ? 最初に受けた砲撃で、船のダメージが結構ひどい。その上、戦場の中心がこちらときた日にゃ、うちが敵を全滅させるのが早いか、船がイッちまうのが早いか…。際どいとこだよ。」
「…解ってる。」
「よぉし!解ってんだな浮竹?解ってんなら話は早い。じゃ、白哉君。さっきの作戦通り、敵さんの惹きつけ、頼んだよ~。」
「おい…京楽…!」
 渋る浮竹を無視して京楽は話を進め、白哉は目線だけで京楽に了解の意を示した。ひどく心配そうに白哉を見る浮竹の横をすり抜け、白哉は独り言のように呟いた。
「心配など無用だ、浮竹。 …私は、返り血すら、浴びぬ。」
 そう言って白哉は船端に歩み、剣を片手に、舷の縁にふわりと飛び乗った。
「おい白哉君。向こうに渡るならロープ…」
 京楽がそう言うが早いか、白哉は一瞬身を低くし、しなやかな動きで地を蹴って、数メートル離れた敵船に音もなく着地した。そして、着地した白哉がすっと立ち上がった瞬間、白哉の周囲に居た数名の敵が、血飛沫をあげて倒れた。
「…うわぁお。白哉君、絶好調~…。」
「すごい綺麗な戦い方するなぁ…白哉…。」
 気の抜けたような声で、うっとりと呟いた浮竹に、京楽は深いため息を吐いた。
「うお~い、う~きたけ~。戻ってきて~。…お前の目線は、白哉君にピンポイントみたいだけど、彼の周辺は見えてるかい?」
「何?」
 見れば、こちらの船で戦っていた敵が、あちらで戦っている白哉の姿を目に留めたらしく、次々と向こうの船へ渡ろうとしていた。
 浮竹は、瞬時に目つきを変え、剣を握り返し、敵に向かって猛然と走り出した。

「そうこなくっちゃぁ船長! せいぜい白哉君に負けないよう、張り切りなよ?」

 京楽は陽気にそう叫びながら、浮竹に続いて、敵の真っ只中に飛び込んでいった。




作品名:B.PIRATES その1 作家名:おだぎり