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B.PIRATES その1

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 船の上で戦闘が行われているらしい。
「………。」
 突然の事態にどう対処しようかと考えた白哉は、とにかく状況を把握しようと思い、部屋の外に出た。
左右に長く続く廊下を見回したそのとき、ちょうど、志波海燕が白哉の元に駆けつけてきた。
「出るな!白哉!」
「海燕。敵襲だな? 敵は、何者だ?」
「急襲だったから、相手の素性はまだわかんねぇ。どっかの海賊だ。 だから、解ってると思うが、アンタは出てくんなよ?!海賊同士の小競り合いなんだからな!」
「解っているが、戦況を知りたい。」
「この霧に隠れて近づいて来た敵から、突然至近距離から船腹に砲弾を受けた。 相手は一隻。うちと同じ規模の、同じくらいの人数だと思う。その後うちの船に取り縋ってきて、今は主にこの船の甲板で戦闘中だ。」
 海燕が一気にしゃべっている間も、上の甲板の方からの、けたたましい足音や絶叫、そして剣の重なり合う音が、船内の廊下の隅々まで響き渡っていた。
 白哉は無言で、軋む天井を見上げた。
「…戦況は、こちらが不利か…。」
「いいか白哉?!さっきも言ったように、出てくるんじゃねぇぞ?!アンタはこの戦闘には関係な…!」
 海燕がそう言った瞬間、廊下の向こうにある、上の甲板に続く階段が大きな音を立てて軋んだかと思うと、乱暴な足音と共に、数名の男が駆け下りてきた。
 階段を降りきった所で一瞬だけ立ち止まり、男たちはこちらを凝視して、叫ぶように言った。
「見つけたぜ!あいつだ!!」
「朽木白哉だ!!」
 そう言って、一斉に向かってくる男たちに、海燕が短く舌打ちし、白哉を庇う様にして立ち、応戦すべく身構えたが、後ろにいた白哉はその海燕をすっと脇に押しやり、前に出て、呟いた。
「…どうやら、関係ないわけではなさそうだ。」
「おい!白哉! 危…」
 引きとめようとする海燕を無視して、白哉はゆっくり一歩前に進みながら、提げていた剣をすらりと抜いたかと思うと、そのまま数歩、歩くような仕草を見せ、向かってくる男たちの間を、すり抜けた。
ただ、すり抜けた…気がした。
「………。」
 海燕も、男たちも、一瞬固まったように動かなかった。
 だがやがて、小さく身体を震わせた男共が全員白目を剥いて、驚いている海燕の足元にどさりと倒れた。
そして、その床に、おびただしい血がゆっくりと流れた。
「…うわお。」
 海燕は、短く、そんな感想を述べた。
…朽木隊長、ステキぃ~…。…つか、いつ斬ったんですか?
スイマセン見えませんでした。
 …今、アンタが俺らの敵じゃなくてホント良かったよ。マジで。
 背中に冷たいものを感じつつ、心の中で賛辞を送りながら、海燕は白哉に目線を戻した。見ると、白哉は廊下を進み、階段を上がって船上へ出ようとしていた。
 海燕は驚き焦って、白哉を追いかけながら言った。
「ちょちょちょちょい待った!白哉!どこ行くんだよ?!出るなっつったろ?!」
「私が関係のない戦いなら出ぬ。だが、どうやらこの戦闘は、私に関係があるようだ。」
「いや、そうかもしんねぇけど!」
「それに、ここまで敵の進入を許してしまえば、どちらにしろ私が戦闘に巻き込まれるのは必須であろう。」
「……いや、そうかもしんねぇけど…」
「それとも、私がその辺りの海賊風情にやられるとでも?」
「……いや、そ…。 …そうっすね……どうぞ…ご健闘を…。」
「うむ。」

 …今は、逆らっちゃいけねぇ…。

 海燕は廊下で大量の血を流して倒れている男たちを横目でちらりと見てから、神妙に白哉の後に付いて行った。


 船の上は、まさしく戦場であった。
 海賊同士の容赦ない斬りあいが、あちこちで繰り広げられ、互いの船の間では銃弾が行き交い、すでに甲板には累々たる死体が折り重なっていた。
 白哉は、船内から甲板に出る扉から、数歩外に歩み出て、無表情でぐるりと辺りを見回した。
 白哉はその一瞬で戦況を判断し、戦略を練った。
 そのとき、怒声のような浮竹の声が、やや離れた場所から聞こえてきた。
「白哉!!お前、何、のこのこ出てきてるんだ! 海燕!!白哉を部屋から出すなと言っただろう?!何故連れて出た?!」
「何?!俺?!俺のせい?! じゃぁアンタがこの人を止めろよ船長!! 俺じゃ無理だよ!この人、おっかねぇんだよ!!」
 前方から浮竹が戦闘の中を突っ切って、海燕を責めながらこちらに向かってきた。
とてつもない早足で駆け寄ってきているのに、浮竹はその速度を衰えさせることなく、目の前の敵をバタバタと容赦なく斬り倒しながら向かって来ている。しかも顔がちょっぴり怒っている。
 …怖い。 白哉に逆らうのと、船長に逆らうのと、どっちがマシだったのだろうか。
 海燕はそんなことを思いながら、近づいてくる浮竹に必死で言い訳をしていた。 そして、浮竹の叱責を受ける前に逃げるが勝ちだというように、海燕は浮竹への事情の説明を白哉に任せることにして、さっさと船上の戦いの中に身を投じた。
 白哉は、そんな二人のテンションを気にも留めないといった様子で、いつもの冷静な口調で目の前にやって来た浮竹に言った。
「奇襲を受けた為、ろくに戦備を整えられないまま戦闘に持ち込まれたにしては、こちらはよく戦っているな、浮竹。冷静で、一人一人が統制を守り、持ち場を心得ているようだ。 逆に、敵は一見して烏合の衆だ。これならばすぐに、戦況は好転するであろうな。」
「え?ああ、そうだな。今は、主にこちらの船で戦っているぶん、うちの被害の方が甚大だが、敵は所詮、数だけだ。すぐに巻き返せる。…ただ、敵の指揮官の姿が見えん。それを押さえれば早急に……
 …じゃなくて、白哉! お前は出てくるな!頼むから!」
「これは、私に関係のない戦いではない。…それともお前は、私が足手まといになるとでも言うのか?」
「そうじゃなくて!心配なんだよ! 今は状況的にこちらが不利な上、敵の正体も、俺たちを襲う目的も分からない。そのぶん、相手がかなり不気味なんだ。何が起こるか、解らん。 …お前の武功は聞き知っているよ。足手まといだなんて思うはずがない。だが、俺の目の届かない所で危険な真似をしないでくれ。 俺が困る。」
 心底困ったような顔をして言う浮竹に、白哉が何故だと訊ねようとしたその時、数名の男がわざとらしいほどの喚声をあげて、浮竹に背後から斬りかかってきた。
 浮竹は素早い反応で応戦し、いとも簡単に敵を斬り伏せていったが、その隙に、白哉に向かって数名の別の敵が飛び掛ってきた。
「今だ!朽木白哉を捕れ!!」
「絶対逃がすな!」

「白哉?!」
 浮竹は驚いて白哉を振り返った。
白哉は、左右から掴みかかって来る男たちを薄い瞳でちらりと見てから、瞬時に上方へ飛んだ。
そして、ふわりと一人の男の頭の上に着地をしたと同時に、深く身を屈めた。 その重みで男が低い声を上げながら地に伏し、白哉は、男の上に乗ったそのままの低い姿勢で、大きく剣を振りかぶった。
回転するように流れた剣先は、その場にいた敵を余すところなく切り裂いた。 最後に白哉は、流れる剣を足元の男に突き刺して、その動きを止めた。
そのすべてが、一瞬の出来事であった。
 一分の無駄も無い、華麗な剣技だった。
「………。」
作品名:B.PIRATES その1 作家名:おだぎり