こらぼでほすと HGP
「ねー、ロックオンさん、もしかして、HGPしてる? 」
唐突に、そう尋ねたのが、電波天然の大明神様だったので、ロックオンは対応が遅れた。他の人間なら、問い返すだろう質問だ。
「え? 」
「うーん、まあ、僕としては、それでもいいんだけどね。でも、そろそろだよね? 」
「はあ? 」
「ああ、心配しないでね。僕とラクスとで、ちゃんと考えるから。」
「あのな、キラ? 」
「やだなあーテレなくてもいいじゃない。」
いや、照れるも何も、『HGP』って、何? の段階の話だ。だのに、勝手に自己完結したらしいキラは、てってと別荘へ走り出していた。
「今のは、なんだろうな? 刹那。」
「理解不能。」
「そうだよなー。流行の言葉かなんかなのかなあー。」
庭を散歩していた刹那とロックオンは、ある意味、流行なんてものからは取り残されているから、流行語にも詳しくない。ちょっとずつテレビや雑誌で把握はしているものの、それだって興味がないから、おざなりだった。
「まあ、いいか。後で、アスランにでも聞いてみるさ。」
で、ここで、まあいいか、と、流したロックオンが悪いわけではないのだが、結果的に痛い目を見る羽目にはなった。
・
『吉祥富貴』への就職は決まって、お披露目もしてもらったものの、いきなり勤めるというわけにもいかず、とりあえず、まだ別荘で、四人とも暮らしている。それというのも、社会経験があるのがロックオンだけで、他は、ほとんど純粋培養のテロリスト様だったからだ。知識はあっても、礼儀もしつけも何もあったものではない彼らを、いきなり働かせることはできない。
ロックオンか同道できるということなら、フォローしてもらえるだろうが、生憎と一般人の彼は、普通にリハビリ途中なので、深夜まで起きていられないので、フォローしてもらえない。ということで、「ロックオンが、深夜まで起きていられるようになったら仕事です。」 と、オーナーに命じられた。ついでに、ロックオンには、「三人の礼儀作法を最低限にしつけろ。」 と、オーナーが笑顔で、お命じになった。
てなわけで、とりあえず、大人しく別荘暮らしを満喫中である。とはいうものの、ロックオンだって接客業なんて経験はあまりない。最近では先頃の一ヶ月のバイトだけである。どうすりゃいいのよ? と、八戒に愚痴ったら、「教えるから心配しなくても大丈夫ですよ。」 と、慰められた。
「僕らも、最初の頃は、四苦八苦してましたよ。幸い、悟浄が、ヒモとかジゴロの経験がありましたんで、それから学びました。」
「・・・あんた・・・それ、冗談に聞こえないから、やめてくれない?」
「おや、僕がご厄介になった頃は、そう、おっしゃってましたよね? 」
「・・・ギャンブラーが本職。たらしは、副業。」
「ほらね? ロックオンさん、こういう人ですから、適当に学んでください。」
この夫夫、いちゃいちゃしてんだか、奥さんに尻に敷かれるのが旦那の趣味なのか、たまに、奥さんの機嫌が悪いと、旦那が苛められている。
そういうことで、適当にホストたちが入れ替わりやってきて、接客ノウハウを講義するということで落ち着いた。確かに、実際の礼儀作法とは少し違うのだということは、初日の悟浄の講義で明らかになった。お客様の気分を良くするための礼儀作法というのは、ただ、お辞儀をするとか、挨拶するとかいうものではない。別に媚びたりする必要はないが、それなりの会話テクニックのようなものは必要であることは判明した。そして、最低限の一般知識なんてものが会話には不可欠であることもだ。
純粋培養のテロリスト様に一般知識なんてものはない。
ここんとこ、ティエリアとアレルヤは昼間の情報番組を見ることで、とりあえずの一般教養なるものを身に着けようと努力している。刹那のほうは、それ以前の問題だから、直接、ロックオンが挨拶から教えている最中だ。
その講義が、本日は、キラ単品だった。アスランが、どうしても私用で来られなかったらしい。
「キラの話で、なんかわかったか? 刹那。」
「・・・『いらっしゃいませ』と言う。」
「うん、まあ、そんなとこだな。」
昼食時に行われた講義が終わって、とりあえず、腹ごなしの散歩に出たのだが、キラが追い駆けてきて、さっきの質問をした。だが、電波天然は所詮、電波天然だから、意味がわからない。講義も、ただの雑談と変わらないし、さっきのは、もっと酷かった。電波天然だから、そういうもんなんだろう、というくらいのことで、ロックオンは流すことにしている。追求するには、通訳が必要になるからだ。
そんなふたりの背後から、てってかと足音が聞こえてきた。
「ロックオンっっ、そろそろ横になる時間だ。」
背後から追い駆けてきたらしいティエリアが、そんなことを叫んでいる。
「いや、そろそろ起きてられるから大丈夫だ。」
「ダメだ。あなたは、昨日も、そう言って、夕方に眠り込んで食事を飛ばした。あれでは意味がない。」
「昨日は、トレーニングをやりすぎたんだって。」
「適度な休息と適度な運動が基本だ。そのスケジュールには従っていただく。」
いや、だから、適当にな、と、ロックオンがティエリアに向い合う形から逃げようと、方向転換したら、どかんと衝撃を受けて、尻餅をついた。
「え?・・あ・・・悪いっっ、刹那っっ。」
右側の死角に隠れていた刹那と、ぶつかったらしい。刹那も、ころんと芝生に転がっている。
「問題ない。」
さすさすと頭を擦りつつ、刹那は起き上がっているが、ロックオンの腕も、かなり痛みがある。どうやら、右腕が刹那の頭にヒットしたらしい。ごめん、ごめん、と、その頭を擦ろうとして、ティエリアに腕を取られた。
「大人しく従わないから、こうなるんだ。」
「いや、それとこれとは違うだろ? 」
「違わない。刹那・F・セイエイ、ロックオンを連れて行くぞ。協力しろ。」
「了解した。」
今度は、刹那が左腕を捕まえる。ふたりに両側から腕を取られたら、大人しく従うしかない。
「おまえら、いつから、そんな仲良しになったんだよ。」
「ロックオンに関しては協力体制を取ることになった。」
「それはいいから、刹那、頭は大丈夫か? 」
「問題ない。」
「ほんとか? たんこぶになってないか? 冷やしたほうがいいぞ。」
右腕が、まだぴりぴりと痛いロックオンは、同様の衝撃を刹那が受けているだろうと気付いている。たぶん、どっか腫れているはずだから、戻って冷やしてやろうと思っている。その時、うっかりとキラの言った質問を忘れてしまったのが痛恨の大打撃だった。
「あらあら、やはり、そうでしたのね? では、用意をしないといけませんね。」
「うん、そうなんだ。僕は、あんまり詳しくないけど、ディアッカのところに資料があったよ。」
「ええ、では、それを参考に・・・・でも、キラ、今風にさせていただいてもよろしいですわね。」
「そうだよねぇー。そうしないと用意できないものもあるし・・・なんか碁盤とか必要らしいよ? 」
「碁盤ですか? 探せば、ございますでしょう。」
唐突に、そう尋ねたのが、電波天然の大明神様だったので、ロックオンは対応が遅れた。他の人間なら、問い返すだろう質問だ。
「え? 」
「うーん、まあ、僕としては、それでもいいんだけどね。でも、そろそろだよね? 」
「はあ? 」
「ああ、心配しないでね。僕とラクスとで、ちゃんと考えるから。」
「あのな、キラ? 」
「やだなあーテレなくてもいいじゃない。」
いや、照れるも何も、『HGP』って、何? の段階の話だ。だのに、勝手に自己完結したらしいキラは、てってと別荘へ走り出していた。
「今のは、なんだろうな? 刹那。」
「理解不能。」
「そうだよなー。流行の言葉かなんかなのかなあー。」
庭を散歩していた刹那とロックオンは、ある意味、流行なんてものからは取り残されているから、流行語にも詳しくない。ちょっとずつテレビや雑誌で把握はしているものの、それだって興味がないから、おざなりだった。
「まあ、いいか。後で、アスランにでも聞いてみるさ。」
で、ここで、まあいいか、と、流したロックオンが悪いわけではないのだが、結果的に痛い目を見る羽目にはなった。
・
『吉祥富貴』への就職は決まって、お披露目もしてもらったものの、いきなり勤めるというわけにもいかず、とりあえず、まだ別荘で、四人とも暮らしている。それというのも、社会経験があるのがロックオンだけで、他は、ほとんど純粋培養のテロリスト様だったからだ。知識はあっても、礼儀もしつけも何もあったものではない彼らを、いきなり働かせることはできない。
ロックオンか同道できるということなら、フォローしてもらえるだろうが、生憎と一般人の彼は、普通にリハビリ途中なので、深夜まで起きていられないので、フォローしてもらえない。ということで、「ロックオンが、深夜まで起きていられるようになったら仕事です。」 と、オーナーに命じられた。ついでに、ロックオンには、「三人の礼儀作法を最低限にしつけろ。」 と、オーナーが笑顔で、お命じになった。
てなわけで、とりあえず、大人しく別荘暮らしを満喫中である。とはいうものの、ロックオンだって接客業なんて経験はあまりない。最近では先頃の一ヶ月のバイトだけである。どうすりゃいいのよ? と、八戒に愚痴ったら、「教えるから心配しなくても大丈夫ですよ。」 と、慰められた。
「僕らも、最初の頃は、四苦八苦してましたよ。幸い、悟浄が、ヒモとかジゴロの経験がありましたんで、それから学びました。」
「・・・あんた・・・それ、冗談に聞こえないから、やめてくれない?」
「おや、僕がご厄介になった頃は、そう、おっしゃってましたよね? 」
「・・・ギャンブラーが本職。たらしは、副業。」
「ほらね? ロックオンさん、こういう人ですから、適当に学んでください。」
この夫夫、いちゃいちゃしてんだか、奥さんに尻に敷かれるのが旦那の趣味なのか、たまに、奥さんの機嫌が悪いと、旦那が苛められている。
そういうことで、適当にホストたちが入れ替わりやってきて、接客ノウハウを講義するということで落ち着いた。確かに、実際の礼儀作法とは少し違うのだということは、初日の悟浄の講義で明らかになった。お客様の気分を良くするための礼儀作法というのは、ただ、お辞儀をするとか、挨拶するとかいうものではない。別に媚びたりする必要はないが、それなりの会話テクニックのようなものは必要であることは判明した。そして、最低限の一般知識なんてものが会話には不可欠であることもだ。
純粋培養のテロリスト様に一般知識なんてものはない。
ここんとこ、ティエリアとアレルヤは昼間の情報番組を見ることで、とりあえずの一般教養なるものを身に着けようと努力している。刹那のほうは、それ以前の問題だから、直接、ロックオンが挨拶から教えている最中だ。
その講義が、本日は、キラ単品だった。アスランが、どうしても私用で来られなかったらしい。
「キラの話で、なんかわかったか? 刹那。」
「・・・『いらっしゃいませ』と言う。」
「うん、まあ、そんなとこだな。」
昼食時に行われた講義が終わって、とりあえず、腹ごなしの散歩に出たのだが、キラが追い駆けてきて、さっきの質問をした。だが、電波天然は所詮、電波天然だから、意味がわからない。講義も、ただの雑談と変わらないし、さっきのは、もっと酷かった。電波天然だから、そういうもんなんだろう、というくらいのことで、ロックオンは流すことにしている。追求するには、通訳が必要になるからだ。
そんなふたりの背後から、てってかと足音が聞こえてきた。
「ロックオンっっ、そろそろ横になる時間だ。」
背後から追い駆けてきたらしいティエリアが、そんなことを叫んでいる。
「いや、そろそろ起きてられるから大丈夫だ。」
「ダメだ。あなたは、昨日も、そう言って、夕方に眠り込んで食事を飛ばした。あれでは意味がない。」
「昨日は、トレーニングをやりすぎたんだって。」
「適度な休息と適度な運動が基本だ。そのスケジュールには従っていただく。」
いや、だから、適当にな、と、ロックオンがティエリアに向い合う形から逃げようと、方向転換したら、どかんと衝撃を受けて、尻餅をついた。
「え?・・あ・・・悪いっっ、刹那っっ。」
右側の死角に隠れていた刹那と、ぶつかったらしい。刹那も、ころんと芝生に転がっている。
「問題ない。」
さすさすと頭を擦りつつ、刹那は起き上がっているが、ロックオンの腕も、かなり痛みがある。どうやら、右腕が刹那の頭にヒットしたらしい。ごめん、ごめん、と、その頭を擦ろうとして、ティエリアに腕を取られた。
「大人しく従わないから、こうなるんだ。」
「いや、それとこれとは違うだろ? 」
「違わない。刹那・F・セイエイ、ロックオンを連れて行くぞ。協力しろ。」
「了解した。」
今度は、刹那が左腕を捕まえる。ふたりに両側から腕を取られたら、大人しく従うしかない。
「おまえら、いつから、そんな仲良しになったんだよ。」
「ロックオンに関しては協力体制を取ることになった。」
「それはいいから、刹那、頭は大丈夫か? 」
「問題ない。」
「ほんとか? たんこぶになってないか? 冷やしたほうがいいぞ。」
右腕が、まだぴりぴりと痛いロックオンは、同様の衝撃を刹那が受けているだろうと気付いている。たぶん、どっか腫れているはずだから、戻って冷やしてやろうと思っている。その時、うっかりとキラの言った質問を忘れてしまったのが痛恨の大打撃だった。
「あらあら、やはり、そうでしたのね? では、用意をしないといけませんね。」
「うん、そうなんだ。僕は、あんまり詳しくないけど、ディアッカのところに資料があったよ。」
「ええ、では、それを参考に・・・・でも、キラ、今風にさせていただいてもよろしいですわね。」
「そうだよねぇー。そうしないと用意できないものもあるし・・・なんか碁盤とか必要らしいよ? 」
「碁盤ですか? 探せば、ございますでしょう。」
作品名:こらぼでほすと HGP 作家名:篠義