キョン古log集
俺は今現在、初めてのこの状況に少し戸惑っていた。
部室に入れば古泉しかいない。ハルヒは先生に呼び出されており、朝比奈さんと長門はまだいないがきっと掃除当番だったりと理由があり遅れている事は分かる。ということは即ち部室には俺と古泉しかいない。それは分かるのだが、この状況は何だ。
何故今、古泉は寝ているんだ。
いや別に普通なら居眠りをしていたって珍しくも何ともない。これが朝比奈さんであればこっそりと寝顔を写真に撮っておくぐらいはする。だが今寝ているのは古泉だ。頬杖をついているので一瞬起きているように見えるが顔を見れば寝ているのは明白だ。疲れているのだろうか。そういえば最近はよく閉鎖空間が発生するんです、とか言っていた気がする。
それよりもだ。俺は寝ている古泉を見て、というより古泉の寝顔をみて動けなくなっていた。その寝顔には明らかに疲れの色が浮かんでいたので俺はもしかしたら心配というものをしていたのかもしれない。気付けば俺は自分のブレザーを古泉の肩にかけようとしていた。しかしかけようとしても古泉は机に突っ伏しているわけではないので中々にかけづらい。無理やりにかけようとしても古泉は起きてしまうだろう。それは何だか勿体無い。そう考え、ブレザーを肩にかけてあげようというのはやめた。そして俺はいつもの定位置に座り、古泉の寝顔を眺める事にしたのだ。
改めてじっと見ればやはり文句なしの顔の造りだ。此処にハルヒがいれば写真に撮って女子生徒に売ることを考えたかもしれない。古泉はまぁ基本イエスマンだから反対することはないだろう。窓から時折入ってくる風は古泉の髪を揺らし、柔らかそうだという印象を与えた。はたまた気付けば俺は古泉の方に手を伸ばし、その髪にそっと触れていた。古泉の髪は想像していたよりもずっと柔らかく触っていても一向に飽きない。もう少し触れてみようと前髪を掻き揚げてみれば古泉の寝顔が露になり不覚にも少し可愛いと思ってしまった。何だか悔しくてギュっと髪を引っ張ってみれば古泉が身じろぎをしたので慌てて手を離し何でもない風を装う。
少しの間古泉は不快感を感じた表情をしていたが(全く失礼なことである)暫くして目を覚ました。眩しそうに目を細めぼんやりとゆっくり前を見、俺を見た途端訳が分からないとでもいうように目を見開いた。
「……もしかして、僕は眠っていたのですか。」
「もしかしなくても眠っていたな。俺が部室に入ってきても身じろぎ一つしなかった。」
そういうとお恥ずかしい限りです、と言いいつもの微笑みを顔に浮かべた。
その微笑みは先程までの疲れを微塵も感じさせず、寝顔のあどけなさなど欠片もなかった。それだけで古泉はまだ俺に対し壁を作っていると実感させられる。だからといって俺は別にどうすることもない。
それなのに。
俺を襲う不快感と苛立ちは、古泉の完璧なまでの微笑みを見るたびに募るばかりなのだ。
fin.
部室に入れば古泉しかいない。ハルヒは先生に呼び出されており、朝比奈さんと長門はまだいないがきっと掃除当番だったりと理由があり遅れている事は分かる。ということは即ち部室には俺と古泉しかいない。それは分かるのだが、この状況は何だ。
何故今、古泉は寝ているんだ。
いや別に普通なら居眠りをしていたって珍しくも何ともない。これが朝比奈さんであればこっそりと寝顔を写真に撮っておくぐらいはする。だが今寝ているのは古泉だ。頬杖をついているので一瞬起きているように見えるが顔を見れば寝ているのは明白だ。疲れているのだろうか。そういえば最近はよく閉鎖空間が発生するんです、とか言っていた気がする。
それよりもだ。俺は寝ている古泉を見て、というより古泉の寝顔をみて動けなくなっていた。その寝顔には明らかに疲れの色が浮かんでいたので俺はもしかしたら心配というものをしていたのかもしれない。気付けば俺は自分のブレザーを古泉の肩にかけようとしていた。しかしかけようとしても古泉は机に突っ伏しているわけではないので中々にかけづらい。無理やりにかけようとしても古泉は起きてしまうだろう。それは何だか勿体無い。そう考え、ブレザーを肩にかけてあげようというのはやめた。そして俺はいつもの定位置に座り、古泉の寝顔を眺める事にしたのだ。
改めてじっと見ればやはり文句なしの顔の造りだ。此処にハルヒがいれば写真に撮って女子生徒に売ることを考えたかもしれない。古泉はまぁ基本イエスマンだから反対することはないだろう。窓から時折入ってくる風は古泉の髪を揺らし、柔らかそうだという印象を与えた。はたまた気付けば俺は古泉の方に手を伸ばし、その髪にそっと触れていた。古泉の髪は想像していたよりもずっと柔らかく触っていても一向に飽きない。もう少し触れてみようと前髪を掻き揚げてみれば古泉の寝顔が露になり不覚にも少し可愛いと思ってしまった。何だか悔しくてギュっと髪を引っ張ってみれば古泉が身じろぎをしたので慌てて手を離し何でもない風を装う。
少しの間古泉は不快感を感じた表情をしていたが(全く失礼なことである)暫くして目を覚ました。眩しそうに目を細めぼんやりとゆっくり前を見、俺を見た途端訳が分からないとでもいうように目を見開いた。
「……もしかして、僕は眠っていたのですか。」
「もしかしなくても眠っていたな。俺が部室に入ってきても身じろぎ一つしなかった。」
そういうとお恥ずかしい限りです、と言いいつもの微笑みを顔に浮かべた。
その微笑みは先程までの疲れを微塵も感じさせず、寝顔のあどけなさなど欠片もなかった。それだけで古泉はまだ俺に対し壁を作っていると実感させられる。だからといって俺は別にどうすることもない。
それなのに。
俺を襲う不快感と苛立ちは、古泉の完璧なまでの微笑みを見るたびに募るばかりなのだ。
fin.