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貴方に捧げる『     』

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中央のチョコレートの板は綺麗な文字で、“Happy Birthday”と書かれていた。サイズは小さめのワンホール。
誰かが不特定多数の為に作った偽りの気持ちではなく、帝人が静雄ただ1人の為に作り上げた、オーダーメイド。静雄は、宝物を手にするように蓋を締めた箱をそっと持ち、冷蔵庫に丁寧に仕舞った。
そして、帝人の許へと戻る。



「で、帝人を俺にくれる、ってのか?」

ソファの、帝人の隣に腰掛けた静雄は、帝人の目を真っ直ぐに見詰めて問うた。
蜂蜜のようにドロリと溶けた笑みが、帝人の視界全てを占める。
ツルリとした肌に散った朱が、静雄の美貌と色気を一気に引き上げて帝人は直視するに耐えられなくなる。
あ、だとかう、だとか、言葉にならない音の羅列だけが漏れ、顔ごと背けようとしたのだが、それを赦さないとばかりに、静雄の体温の高い両手が帝人の頬を包み込んだ。

「なぁ、くれるんだろ?」

甘いようで、苦いようで、底無しの泥沼から伸びた手に拘束されているような、それでいて陶酔感が身体中を支配して、帝人は言葉を忘れたように1つ、無意識に頷いた。
拘りや羞恥、自尊心を全て取り払えばそこに残るのはただ1つの感情であり、今、丸裸にされた帝人に残された想いはその1つのみ。

「僕を、貰って、くれますか?」

「お前のこの先の時間を、全部俺にくれるってことだよな?」

「・・・静雄さんが、それで良いのなら。」

ふわりと香った煙草の苦味で、帝人は静雄の腕の中に居る事に気付く。
ぱちり、と瞬きした帝人の視界は、白と黒と、蛍光灯を弾いて煌く、太陽の色。
肩に熱の籠った吐息が掛かり、思わず帝人がピクリと体を揺らすと。

「凄ぇ、贅沢なプレゼントだな。今までで、1番幸せだ。」

微かに震える静雄の身体に気付かない振りをして、帝人は精一杯の心を込めて、静雄の身体を抱き締めた。



そうして、夜は更けていく。








 2人だけのバースデーが、毎年恒例の行事になるまで、あと―――・・・

 帝人の姓が代わるまで、あと―――・・・