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琴咲@ついった
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夜が来たる

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 普段よりも深めに頭を下げて礼を述べ、門から立ち去った。
 空は既に半分ほど橙に染まり、陽が傾いていた。今日中に学園に戻ろうとすれば着く頃には夜中になってしまうだろう。
 しばらく歩いて周りに誰の気配もないことを確認し、小さく溜息をついた。今回請け負った課題兼任務は、内容自体はごく単純で簡単なものだった。とある屋敷内に隠し宝物庫があるので、そこから指定された有り難い巻物を2本取ってくること。宝物庫が隠されているということ、宝物庫の戸にかかっている鍵の暗証番号を屋敷の主しか知らないということから、一人でもこなせそうなその課題は二人一組で行うこととなった。いつものように文次郎とペアを組み、そこの主人が大層女好きであるという情報を入手した後に立てた作戦は次のようなものだった。
 まず私が女装して禁宿に取り入る習いの術のはじめ部分を使って屋敷に入り、警備が手薄になるその時に同時に文次郎もひっそり忍び込む。主人の女好きが本当であれば恐らく接近してくるであろうから、それを利用して何とか戸の番号を聞き出す。文次郎はその時に屋根裏で待機し、私が番号を聞き出して矢羽根で伝えるのを待ち、その後は宝物庫に行き巻物を手に入れる。使用人の数はそんなに多くないはずなので、主人の方に構っていたら宝物庫の方の警備も手薄になるだろうという読みだ。各自役割を果たした後は各々屋敷から出て、前もって決めておいた小屋で落ち合うこと。万が一失敗した場合は本来の禁宿に取り入る習いの術のように、後日再び屋敷に入る。
 本日の昼前から決行したその作戦は面白いぐらいすんなりと進んだ。噂に違わず屋敷の主人は酷く女好きで、屋敷の門近くでフラフラと蹲るふりをすればいとも容易く屋敷の中へと案内された。布団を貸し与えられるだけでなく昼食まで豪勢に振る舞われ、まるで客人扱いだった。主人は私を美人だと持て囃し、布団に横たわった始めからずっと側につきっきりであった。昼食後大分気分が良くなったと告げればもうしばらく話し相手になってくれとお茶を振る舞われ、ついにはまだ陽が高いというのに酒の酌まで頼まれた。こちらの目的は相手の機嫌をとり、番号を聞き出すことだったので快くそれに応じた。酒が回るにつれて主人の気分は高揚していったらしく、手癖が多少悪くなると共に口も緩くなっていった。そのおかげで無事に番号を聞き出せたのはいいのだが、その後もしばらく機嫌を取りつつ主人の好きにさせるというのは少々骨が折れた。是非また来てくれと頼まれたが、もう二度と行きたくないし、巻物を盗った以上行かれないだろう。巻物はもともと半ば無理矢理取り上げたもので、それを取り返してくれという依頼だったので特別胸は痛まない。

作品名:夜が来たる 作家名:琴咲@ついった