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短編にする程でもない断片色々

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君を手放すには




目の前の帝国様の横っ面を蹴り飛ばしたら、多少は胸がすっとなった。
だがその帝国様が顔を上げて目を怒りで光らせ、血の混じった唾をぶっと足元に吐いたもんだから不愉快になってその頭に踵を蹴り落としてやれば、石畳にガツンと頭蓋骨の叩きつけられる鈍い音が響いたが、コイツもそんな事くらいでくたばるようなやわで丁寧な人間じゃないんやし、と容赦なくその横顔に重い皮製の靴を叩き落して、ぐりぐりと足の先で踏み躙ってやれば血と汗と泥で汚れた男の髪がじゃりじゃりと足の裏にもその砂っぽい感触が伝わり、その人間人間した身体をこの足の裏で踏みつけているのだと思えば多少気分が良い。ホンマ、こいつン目ぇ抉り出してやればもっと気が晴れるんやけどな。

――――――なんやねんそれ、敗者の目ぇちゃうやん。ホンマ、ムカつくおっさんやで。

男の神の名で復讐と侮蔑の詰まった呪いの言葉を吐いた男、アドナンはなにやら口元に笑みまで浮かべているようで、更に腹立たしい。ああ、嫌や、嫌や。こんな可愛げのないおっさん、最高に鬱陶しいわ。とっととイヴァンにでもくれてやって、跡形もない位に、この歴史から消え去ってしもたらよかったのにな。食ってしまいたいわ、ホンマに。

「愛してるで、おっさん」

腹を抱えて笑い出したいほどの熱い血潮。アドナンは心底憎悪を孕んだ目で睨んでいた。