快晴の日
俺がたばこをふかしはじめたのに気がついてレントラーが戻ってきた。コウキはすっかりレントラーの背に慣れたようだ。ありがとう、と言って降りると、僕もレントラー育てようと思いますと言った。
「そう」
「はい。…素敵な子ですね」
「うん。俺にはもったいないくらいだ」
コウキはちょっと笑って、自分の腰にあるモンスターボールをそっと撫でた。
「僕のみんなも、素敵ですけどね」
「そうだろうな。じゃなきゃ俺たちは負けないよ」
「…みんな、」
「ん?」
「みんな、わかってくれるかな……」
小さく震える肩はものすごく細かった。コウキのポケモンたちが必要以上にやりすぎる気持ちも、正直わからないではなかったのだ。こんなほそっこい肩を守るものは自分たちの力だけだったんだから。でも、だからこそ、大丈夫だよって言うのは俺の役目だった。わかるよ、と言うと不安そうな目ですがるように俺を見た。
「でも、」
「こいつらにだってわかったんだ。絶対わかるよ。大丈夫」
「…デンジさん、」
「四天王、がんばれな。応援してるから。じゃ」
「……あの!」
帰ろうとすると呼びとめられたので大人しく振り返る。もうすっかり涙はなくて、瞳には力が戻っていた。夕焼けに燃える海をバックに、つまりリーグをバックに、コウキはたったひとりで立っていた。
「レントラー、」
「…うん?」
「レントラー育てるとき、相談に来てもいいですか」
「ああ、うん。いつでもどうぞ」
笑ってみせるとコウキはやっと肩の力を抜いた。ひとりぼっちの幼いトレーナーの拠り所にくらいいくらでもなってやる。それで俺を負かしたあいつの力が完璧に発揮出来るなら。