ペタリ☆お揃い
「まったく・・・・・・あやつにも困ったものである」
そして本日の放課後。
教室にひとり居残ったスイスはガラス窓の前に立ち、物思いに耽っていた。差し込む眩しい橙に目を細める。
結局あの昼休みの後、顔を合わせることのないまま各々午後の授業が始まってしまい
気まずい空気を持ち越したままとなってしまった。これからまた一緒に家路へ向かうというのに、何ともそれは頂けない。
彼にとって例のプリクラは、一切破り捨てて闇に葬ってしまいたいほどの黒歴史となってしまったが
リヒテンシュタインにとっては正に宝石のような一枚になった。いつも眉間に皺を寄せている兄ゆえに、それはそれは貴重なもの。
常に持ち歩いていることには多少閉口してしまうものの、妹がよほどそれを大切にしていることを無論スイスは周知であった。
―紙片の中の2人に、再び目を落とす。
『お兄さまと』と、整った字体でそう“落書き”された一枚。周囲にはネコやハートの形を模したスタンプが可愛らしく散りばめられ、隅の方には非常に拙い形の『国防一番』という文字が小さく覗いている(何でも良いですから とせがまれて仕方なく書いたものだが、あまりに書き慣れない感触に戸惑った)。
映っている自分自身はとても見られたものではないが
お互いの頬と頬が接触しそうな程の距離にほころぶ、その幸せそうな笑顔には毎度、相好を崩してしまう・・・・・・ 本当のところ、そういう点ではスイスもこの写真が気に入っているのだ。
ただ、これを度々人前で使用する携帯に貼り付けるというのは・・・・・・
「・・・・・・これも、兄の務めである・・・・・・! 」
無意識に震える手を制しつつ。いささか断腸の思いでスイスは
制服のポケットから己の携帯を取り出し、そのフリップを開いた。