ペタリ☆お揃い
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『・・・・・・このような狭い場所に居るのは落ち着かないものだな』
『そうですか? 私は楽しいです』
あの日、2人でぬいぐるみを捕りにゲームセンターへと赴いた時のこと。
ほぼ四方を壁やカーテンに囲まれ、前面にはカメラの設置された機体の中に兄妹は居た。
写真を撮ると聞いて多少難色を示したものの、結局、可愛い妹の要望にスイスは折れる。
慣れない場所でそわそわと周囲を見回す兄が可愛らしくて、リヒテンシュタインは笑みを浮かべた。
ハンガリーさんに何度か教えて貰ったんですよ と、慣れた手つきでパネルを押していく。こういった娯楽はスイスにはさっぱりだ。
やがて操作を終えたリヒテンシュタインは意気込みつつ、カメラを指差す。
『笑ってくださいまし、兄さま』
自らそうする機会など滅多にない彼は観念し、顔を引きつらせつつも いじらしい努力を試みる―すると。
にわかにスイスは、腕に温かな感触を覚えた。
おもむろに両手を伸ばしたリヒテンシュタインが、兄の腕を抱いたのだ。そしてそのまま背伸びをし、肩に添うようにして身を寄せてくる。
『! リっ・・・・・・?! 』
あまりに突然の出来事にスイスは身を強張らせた。その胸は急激な拍を打ち始める・・・・・・
あの画面内に収まらないとちゃんと映らないようなのです と尚も体を密着させてくる妹に、スイスの顔はみるみる真っ赤に染まっていく。
『リリリリリ、リヒテンっ! あ、兄である我輩にこんな、体を密着させるなどとっ・・・・・・! 』
『? ですから、“お兄さまだから”ですよ? 』
『?! 』
―スイスは。
いくら兄妹であるとはいえ、お前はもう年頃なのだし
異性である自分にそんなにくっつくものではない という旨を口にしたつもりなのだが、混乱のあまりに上手く伝わらなかったようだ・・・・・・ そして。
笑ってくださいまし というリヒテンシュタインの要望があったにも関わらず、撮影されたそれには
何とも呆けた、あられもない表情の兄と満面の笑みをたたえた妹が映されることとなったのだった。