エンジュの中心で愛を叫ぶ。
【 エンジュの中心で愛を叫ぶ。 】
目の前に現れたのは、宙を染め上げる極彩。
幾重にも重なる眩い羽毛が煌く中、それは後光と荘厳なる静寂を伴い舞い降りる。
その瞬間には太陽すらも畏れを抱き、自ら身をひそめるかのように光を弱めると聞く。
空が、木々が、大地が。
万物が息を呑み、その来訪に頭を垂れる感覚を覚える。
神々しいなどという言葉ではとても足りない、身の底から突き上げるこの感情は歓喜か、それとも畏怖か。
脳裏の奥に沈む何かが覚醒し、叫び、荒れ狂う。胸の早鐘は
静まることを忘れたようだ・・・・・・これはきっと
代々、一族を上げて仕えてきたその血が騒いでいるに違いない。先祖たちも今、自分と共に震えているのだ。
この国で最も歴史という軌跡を刻み、またこの先も
人々の力を借り悠久の時を渡るであろう憑代・・・・・・スズの塔。その頂上にて。
ひとりの青年が、この地の『伝説』と今まさに対峙しようとしていた―
作品名:エンジュの中心で愛を叫ぶ。 作家名:イヒ