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半径100メートル内で世界平和を

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            半径100メートル内で世界平和を





「構図が昔と逆だね」

そこは一般的な病院ではないが、新羅のいる部屋は病室と同じような造りだった。
天井も壁も床も白っぽい。カーテンだけ少し青みがかっている。
ベッドの頭のほうにはモニタがあってその下によくわからないハードディスク、そこからいろいろコードが伸びて、新羅につながっている。
左腕につながっている点滴はわかる。もうすぐ終わる。

「逆だな」

俺は見下ろす。
新羅は見上げる。

昔、小学生くらいの頃、俺は自分の力を制御できずに怪我ばかりしていた。
入院といっても1日や2日程度だったが、新羅はよく見舞いに来ていたと思う。
勿論、友人の不幸を心配して、ではなく、好奇心で、だ。

「なんか大げさだけど気にしないで。僕ここでは高待遇なだけだから。ついでに身内だからって色々新薬実験とかされてるけど」
「・・・それ高待遇っていうのかよ」
「研究者って変態が多いんだよね。うちの父親筆頭に」
「その息子も変態だろ」
「だからできる限り協力してる。ま、法的には問題ないよ」
「闇医者が法とか気にするか」
「あ、僕一応ここの職員って肩書きあるんだよね。在宅勤務だけど」
「コネにもほどがあるな」

人のことは言えないけど。

「実力もあるよー?」

たぶん、どっちが社会人として上かと勝負したら、俺には勝つ自信があまりない。
仕事の質はともかく。社会との、適応力の差。

「静雄、来てくれてありがとう」
「そら、来るだろ」
「でもここって入りにくいだろ?」
「まあ、な」

ふつうは関係者パスとか無いと入れない。俺はゲストパスで通されたが。

メガネをかけていない新羅は、ちょっと眠そうに見える。
血の気のない、白い顔。
普段の饒舌さの半分もない台詞。

「セルティが、」

目を閉じて、微笑む。

「心配だな」

点滴のパックが空に近い。
色んな栄養が管を通って新羅に注がれる。
新羅は横目でそれを見上げて、自分で針を外す。

「静雄、彼女と話してあげてね。でも僕のいないところであんまり仲よくしないで」
「お前のいないところでないと、仲よくできねぇだろ」
「うわ、静雄のくせに何その言いぐさ」
「俺のくせにってなんだ」

外した針を目の上に掲げて、新羅が笑う。

俺は。
なんだかむかついて、でもさすがに怪我人を殴るわけにもいかず、新羅の手から針を奪い取って、点滴をぶら下げるキャスター付きの鉄の棒に引っ掛ける。

「また来る、かも」
「うん」

言いたいことや聞きたいことが山ほどあったはずなのに。
結局、ほとんど無駄話に終始して。セルティには会えなかったので、メールを入れた。

+++++++++


「で?」

事務所ではトムさんが俺の帰りを待っててくれて、時計を見たらもう9時を回ったところだった。
すみません、と俺は謝る。

「いや今のはそれであの闇医者の容体はだいじょぶなの?の、で?なんだけど」
「あー、もう大丈夫らしいっす。ちょっと危なかったそうですけど。意識はっきりしてましたし。しゃべってきました」
「あっそう」

なんだろう。
何か、トムさんが不機嫌だ。

「あの、仕事」
「ん?終わってるよ。つか今日のは残り1件だけだったし。ヴァローナもいたし。スムーズに回収してきました」
「俺、また中途半端に抜けて。すんません」
「気にすんな。ダチが大怪我したんなら駆けつけるのは当たり前だべ」
「・・・っす」
「って建前立派だけど本音はなんかもやもやっつーか」
「トムさん?」
「だってお前、すげぇ落ち込んでるし」

まぁた俺のせいでとか思ってんだろ?と。

「・・・なんでわかるんすか」
「耳と尻尾が垂れてんのよ。見えるよ」
「幻覚ですね」
「うん」
「大丈夫っすかトムさん」
「あのなぁ静雄。今回の件でお前に非はない」
「っでも!」
「お前に非があるっていうんなら、相談持ち込んだお前の弟と聖辺ルリにも非があることになっちまう」
「んなこと!」
「んでもってちゃんと自衛できなかった闇医者本人にも」
「悪いのは、襲ったやつじゃないですか!」
「そだよ?わかってんじゃん」
「・・・へ」
「だから、お前は悪くないの」

な?と下から覗き込むようにして言われる。

「・・・・・・あんまし、甘やかさんで下さい」

新羅は死にかけたのに。
セルティも凄く落ち込んでたのに。
俺がここで、やさしくされて、嬉しくなったりしてたら駄目だろう。

「静雄、晩飯まだだろ。店はもうあらかた閉まってるからさ、コンビニで弁当でも買って、俺んちで食おう。んで寝れ」