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スイーツ

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人の行き交う夕暮れ時の池袋。
その池袋にあるサンシャイン通りのど真ん中で、対峙するかのようにお互いを見詰め合う二人の男。
一人の男はナイフを握り締め、もう一人の男は、どこから持ってきたのか分からない標識を握り締め、特定の距離を保ったままお互いを睨みつける。
「ほぉんと、最悪。
 静ちゃんの仕事がこの辺りじゃないの確認して、つい10分前にGPSで静ちゃんの居場所確認してからこっちに来たのに、ばったり会うなんて、ほんと……動物並みの予想のつかなさだよねぇ。
 いちいち調べたりするのめんどくさいから、死んでよ、静ちゃん。」
臨也はそういうと、にこやかに笑いながら、静雄に向けてナイフを向ける。
その言葉に、イラついたのか、静雄は手にしていた標識を振り上げると、そのまま地面に叩きつける。
「るっせぇなぁ、てめぇはよぉ。
 ごちゃごちゃ言ってねぇで、てめぇが死ねよ!!」
そう言いながら、静雄は地面を削る音とともに火花を散らす標識を引きずりながら走って臨也との間合いをつめる。
臨也はそれを見ながらニヤリと笑うと、少しずつ後退していく。
急いで逃げるわけでもなく、ただ臨也は、静雄の様子に笑いながら、彼の行動を見る。
そんな臨也に舌打ちした静雄は、持っていた標識を振り上げる。
標識の攻撃は、臨也のあごの下を直撃しそうなほど差し迫り、それを臨也は仰け反ってかわすと、そのまま片手を地面についてバク転をして体制を整えたと同時に、静雄は標識を力いっぱい臨也に向かって振りかざす。それを体制を整えたばかりの臨也はナイフでそれを受け止める。
ギリギリとお互いどちらも譲らず、力いっぱい相手をはじき返そうと、にらみ合う。
にらみ合ったまま、臨也が何かポツリと呟くと、静雄はそれに声に出さずに何かを呟く。
「静ちゃんもしつこいなぁ。
 まぁだ根に持ってるの?
 この間、20人ぐらい静ちゃんに喧嘩吹っかけさせたの。」
にらみ合う状態で笑いながら臨也は静雄の顔を覗き込むように言い放つ。
それに舌打ちした静雄は更に力をこめる。
「あ゛あ゛?
 やっぱり、アレはてめぇの仕業か。
 来るんじゃねぇっていう池袋に来やがるし、変なこと企んでやがるし、ほんとうぜぇんだよ。
 今すぐ殺してやるから死ね。」
臨也もそれに舌打ちしつつ、押し返す。
互いの力で押し返され、二人の間に距離が出来ると、二人とも体制を整える。
それに二人ともほんの少し笑みが零れるが、それはすぐに真顔に戻される。
「さぁて、静ちゃんと遊んでられないんだ。
 俺は静ちゃんと違って、暇じゃないからねぇ。」
臨也はそう言いつつ、静雄の横を走りぬける。
静雄は臨也を追うように勢いよく振り向くが、既に臨也は雑踏の中に消えていた。
「ちっ、逃げ足のはえぇノミ蟲だ。」
持っていた標識を肩に担ぐと、ポケットから煙草を取り出し、軽く振り、一本だけ飛び出させると、それを口に咥る。そして煙草の箱をポケットに仕舞いつつ、ライターで煙草に火をつける。
煙草の煙をはぎだし、一つ 溜息をついた頃、遠くからトムが手を振ってこっちに走り寄って来た。
「お、終わったか、静雄。」
近寄ってきたトムは静雄の肩を軽く叩く。
「っす。迷惑かけてすんません。」
煙草を手に持ちつつ、頭を垂れて俯く。
「いーって、いーって、気にすんな。
 んなことより、明日、社長が皆で呑みにいくべって言ってたぞ。
 今日、誕生日だったろ。
 お祝いすんべ、な?」
肩を叩きつつ、トムは見上げて円満の笑みで静雄にそう言うと、静雄も釣られて少し笑う。
「っす、ありがとうございます。」
嬉しかったのか、少し頬を赤らめて、静雄は俯きつつ、手に持っていた煙草を握りつぶす。
「よし、夕飯食って帰んべ。
 露西亜寿司でいいべ?
 今日は奢ってやるよ。」
そう言いつつトムは、静雄の背中を押して歩くことを促す。



食事も終わり、二人が露西亜寿司から出た頃、静雄の携帯電話の着信音が鳴り響く。
それにふと静雄は笑うと、携帯電話を閉じ、ポケットに仕舞う。
「トムさん、今日はありがとうございました。」
そう言って、静雄は頭を下げる。
「おう、本番は明日だぞ。
 まぁ、今日は帰っかぁ。
 静雄にも誰か待ってんだろうしなぁ。」
意地悪そうに笑うと、トムは静雄の肩をばしばしと叩く。
それに静雄は苦笑いすると、照れくさそうにサングラスをかけなおす。
「じゃあ、お先に失礼します。」
深々と頭を下げた静雄は、そのまま踵を返し走り出す。
トムはそれを手を振って見送ると、笑った。
「ねぇねぇ、静ちゃんが急いで帰るのって、もしかして、イザイザが待ってたりするからだったりして?」
ひっこりトムの背後から出てきたのは狩沢だった。
「もし、そんなことがあったら、天変地異の前触れっすよ、狩沢さん。
 っていうか、それ、本人の前では言わないでくださいね。」
その後ろからひょっこり現れたのは遊馬崎だった。
「そのもしかしたらが、本当だったらどうするんだ?」
笑いながら、トムは二人に投げかける。
「え?それって、ボーイズにラブってるってこと?」
その言葉を聞いて、狩沢のテンションが上がる。
ハイテンションな狩沢を見て、遊馬崎とトムは苦笑いで誤魔化すしか出来なかった。
内心トムは、『まぁ、ありえない感じではあるけどな。さっきの二人見てたらよ。』と思ったが、口には出さなかった。





とある豊島区にあるアパートの廊下を黙々と一人歩く静雄。
そして、そのアパートの自宅のドアの前に着いた静雄は、鍵でそのドアを開けることなく、呼び鈴を鳴らす。
しばらくして、鍵を開ける音と、ギィっというドアの開く音が聞こえた。
「あ、静ちゃん、お帰り。
 寒かったでしょ。」
そう言って出迎えたのは、昼間喧嘩をしていた臨也だった。
「おう。」
一言、そう言った静雄はそのまま部屋に入る。
「あ、お風呂沸いてるから入ってきなよ。
 俺は先に入っちゃったし。」
臨也がドアを閉め、鍵とチェーンを掛けつつそう言うと、静雄は何も言わないままお風呂に向かう。
それに少し笑んだ臨也は、そのまま部屋に行き、暖房の温度を下げ、そのままテレビをつけて座り込み、そのまま見入った。


しばらくして静雄が風呂から上がると、それに気づいた臨也は、冷蔵庫からケーキを出し、テーブルの上に置いて座りなおす。
「ワンホールって、でかくねぇか?」
少し笑いながら、静雄はそう言うと、そのまま臨也の真後ろに座り、そのまま抱えるようにして座る。
「静ちゃんなら食べられるでしょ。
 頑張って食べてよね。
 あの後、頑張って作ったんだから。」
テレビから目線を外さないまま、静雄に後ろから抱えられている臨也はそれに抵抗することなくそう悪態をつく。
それに何も答えずに、静雄はテーブルの上にあったフォークで目の前のケーキを少し取ると、口に運んでいく。
黙々と何の反応もなく口に運んでいく静雄に、少し照れつつ、それを隠すように臨也は後ろを振り向く。
「ちょっと、静ちゃん、なんか言ったらどうなの?
 折角頑張ったのに……。」
じっと静雄を睨みつけて、臨也が不機嫌そうにそう言うと、ふと静雄が笑った。
そして、そのまま手に持っていたフォークでケーキを取ると、臨也の口の中に放り込む。
作品名:スイーツ 作家名:狐崎 樹音