おいでませ、××××
全身を温かそうなふかふかとした毛に覆われ、長い肢体にこれまた異様に長い首。
真っ黒でつぶらな瞳をしているもののそれはひどく無機質な表情の中にあり そのギャップがそこはかとなく、アンニュイな雰囲気を醸し出している。そして
全体像を『愛らしい』と取るか『不気味』と取るかで印象がガラリと変わるような、何とも形容し難いその風貌・・・・・・
「・・・・・・これ・・・アルパカじゃないの? 」
呆然と立ちすくむリトアニアのやっとの一言に、相方は嬉々として そーそれそれ! 俺 丁度ド忘れしとったんよー と述べる。
長い首をやおらぐんにゃりと折り曲げたアルパカは、ポーランドに顔を寄せる。そして
そのまま はむはむと金色の髪をその口に含み始めた。
「! ポー・・・! 」
「ちょっおまww マジくすぐったいしー」
まるで地球外生命体のような生物に相方が貪られそうになり、一瞬戦慄を覚えたリトアニアだが
危害を加えんとしているのではなく単に懐いているだけのようだったので、ひとまず胸を撫で下ろす。
よしよし、心配せんでも飼育委員(ポニー)の俺がちゃんと面倒見てやるからな とその長い首に抱きつくポーランドに、リトアニアは我に帰る。
「えっ・・・・・・ポー、この子学校に連れて行くの?! 」
「当たり前なんだしー ・・・・・・ぷっ、その顔マジ受けるんだけどwww 」
確かに広いとはいえ公園に野良のアルパカが居る筈はないし、もし居たとしても既に誰かが飼っているものに違いない。
それがたまたま散歩に連れてきた際に迷子になったりしたのではないだろうか という考えが彼の脳裏に走るが、相方はそんなことは一切思ってもいないようだ。
当のアルパカもポーランドによく懐いているようで、しょっちゅう首を絡めたり頭を摺り寄せたりを繰り返している・・・・・・非常に人懐っこいものの、飼い主らしき人影は何処にも見当たらない。
このままここに放っておくのも心配であり、またそうすることに相方がまず納得するとはとても思えない。
「じゃあさ、飼い主が見つかるまで学校で預かる ってことにしておいたら良いんじゃないかな? 」
それが一番に理に適っていると思われる彼なりの結論だったが、まるで聞いていない当のポーランドは
既にアルパカに跨り、楽しそうに辺りの散策を始めていた―
その翌日から 学校の農場にはめでたく
例のアルパカが仲間入りすることとなったのだった。
作品名:おいでませ、×××× 作家名:イヒ