鬼と詭計の昼休み
「~~っ! 分かった分かった・・・・・・」
些か断腸の思いで彼はこの条件を飲む。背に腹は変えられない。
苦渋の決断を下したその顔は叩きのめされた鬼よろしく、既に茫然自失の域だった。
「感謝するがいい長曾我部。我のノートを閲覧する機会など、そうそう
滅多なことではあるまいて」
悠々とポケットからハンカチを取り出した毛利は、ベストに掛けていた眼鏡を拭い始める。その口元には
己の計らいが上手く運んだ際に浮かべる、至極満足そうな笑みが滲んでいた―
『くっそ、毛利のヤロー足元見やがって・・・・・・! 』
―と。
わなわなと握り拳を震わせる長曾我部を諌めるように
絶妙のタイミングで休憩時間の終わりを告げるチャイムが響き渡った。
我の貴重な時間を割いたのだ、放課後に早速買うて参れよ長曾我部 うるせぇ、大体そんな大金 今日持って来てる訳ねぇだろ―
澄み渡った、穏やかな昼下がり。
お馴染みの言い争いを賑やかに展開しつつ、2人は教室へと戻ってゆくのだった。