こらぼでほすと 遠征1
して、搭乗ゲートに消えてしまうと、ロックオンは、ふうと息を吐いた。とりあえず、こ
れで、アレルヤの目は治る。
くいくいと右腕を、引っ張られて、そこから移動させられた。この後、とりあえず、自
力で、悟空のところまで移動する予定だが、手土産ぐらいは持参したほうがいいだろうと
買い物の予定をしていた。
「やっぱり、果物か菓子だろうな? 刹那。」
ぷらぷらと、モノレール乗り場のほうへ歩いている様子だ。刹那は、本日の移動に関し
て、交通アクセスを確認してくれている。元々、ここいら辺りに隠れ家があるから、ロッ
クオンよりは交通機関に詳しい。
「なんでもいい。」
「こらこら、おまえのツレんちに遊びに行くんだぞ? こういう時は、おまえが考えるも
んなんだよ。どっかで、百貨店へでも誘導してくれ。三蔵さんは、ミス・スメラギと一緒
で、お酒のほうがいい。」
大人向けと子供向けの手土産ということになるから、刹那には、悟空の好きなものを選
ばせて、自分が三蔵の分を用意すればいい。組織の戦術予報士が、無類の飲兵衛なので、
いつも地上で、酒を探させられていたから、そちらは、ロックオンも得意だ。
「了解した。・・・・ここで、しばらく待ってろ。」
どう見ても、そこは、モノレールの乗り場の待合所だ。地上から、かなり高い位置にあ
るので、そこから、シャトルの発着が、よく見える。
・・・・もう、乗り込んだのかな? ・・・・・
ファイナルコールから三十分程度で問題がなければ離陸する。まだ、あれから十分かそ
こいらだから、まだまだだな、と、思っていたら、どこかへ消えた刹那が戻ってくる。突
き出してくるのは、冷えたミネラルウォーターのペットボトルだ。
「少し休憩したら、モノレールに乗る。」
刹那の判りづらい表情は、いつもと変わらない。少しくらい寂しいとかいうことはない
のだろうかと、思う。
「ふたりだと、また静かだな? 」
「ああ。・・・・ロックオン、アイスケーキ食べるか? 」
「ん? 今か? 」
「いや、悟空のところへ持っていく手土産だが、あんたが食べないなら意味がない。」
「食べるよ。」
「じゃあ、それでいい。途中で、百貨店へ案内する。」
どっちが保護者なんだろう、というような物言いだが、刹那は、いつもこんなだし、た
ぶん、ティエリアから、「しっかり管理しとけ。」 と、命じられていたから、いつもよ
り張り切っているのだろうと思うと、自然とロックオンは頬が緩む。
移動中けっして、刹那はロックオンを屋外へ出さないように気を付けていた。日中は、
かなりの温度差があるからだ。
ロックオンが、それを実感したのは、百貨店からタクシーで、悟空の住んでいる寺へ辿
り着いた瞬間だった。ギラギラと太陽が照りつけている寺の境内なんてものは、ゆらゆら
と熱気で空気すら沸騰していそうな気配だ。で、その中で、ランニングに短パンなんて格
好で水撒きしている悟空にも驚く。
「うわぁー、なんだ?これ? 」
「よー刹那、ロックオンさん。暑いから、とりあえず入って。こっち、こっち。」
本堂のほうへ悟空は誘導した。朝から、クーラーをつけて、脇部屋のほうは冷やしてお
いた。そこに、別便で届いた荷物も放り込んである。少しでも温度を下げてやろう、と、
悟空も打ち水をしていたのだ。
「暑ーーーー。」
すでに、ロックオンの額には汗が浮かんでいる。涼しい気候で暮らしている人間には、
辛いんだろうな、と、悟空は同情するが、こればっかりは慣れて貰うしかない。
「今、一番暑い時間だからさ。・・・・え? 刹那、なに? 」
無言で、むーっと差し出された紙袋からは、白い煙がたっている。涼しい煙なので、ド
ライアイスだとわかって、悟空は嬉しそうに笑った。
作品名:こらぼでほすと 遠征1 作家名:篠義