臨帝超短文寄集
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与えられた選択肢の中から欲しくもない何かを選びとらされる、そういうのを仕方がないと割り切れない性質だから、今の彼があるのだろう。
代わり映えのしない日常を受諾するだけの存在になることに耐えられないその精神は、永遠の少年を思わせる。己の影を探して夜を彷徨う旅人。彼のことを考えているはずだけれど、己にとって見てもあてはまる部分が多い気がして、臨也は苦く笑う。
(彼の探している影は俺に違いないって気がしてくるね)
けれど、もし彼が選択制の日々からの脱却を求めて自分の側にいたがるというならばお笑いぐさだ。今はまだ、臨也は彼にとって選びうる選択肢のひとつでしかない。それが分かっているから適度な距離感を保っている。けれど臨也を選んだならば、その時点から彼が他の選択肢を手にすることはなくなるだろう。勿論、臨也がそれを許さないからだ。彼が自分を選んだならば、逃がさない。
(楽しみだなぁ)
彼はそんな展開になるとは予想していないだろう。臨也を選ぶとしたら、それはきっと彼から見て最も様々な可能性のある道に思えたからに違いなかった。
(はやくはやくここにおいで、俺のところに)
闇の中で己の皮膚の白さだけが浮き出て見える。そんな暗い場所で、影のような男は笑った。今はまだ、ひとり。