こらぼでほすと 遠征2
いてもらおうかね。そうしないと終わらないからねぇ。」
護衛がてらに同行してきたヒルダは、カウンターで、のんびりとペリエを飲んでいる。
そこには、悟浄が相手として配置されていて、となりにはマーズとヘルベルトもいる。こ
こだけ覗くと、ただのバーカウンターのような陣容だ。ただし、飲み物は、仕事だから三
人ともノンアルコールだ。
「賭けにされてるって、わかってたら用心するぜ? ヒルダ。」
「甘いね、ヘルベルト。ロックオンは、あの黒子猫の世話をしてると、用心なんてものは
忘れるのさ。」
「違いないな。この間だって、やんちゃしてるちびたちの仲裁に入って、ダウンしてたも
んな。」
かかかかか・・・と笑っているマーズが飲んでいるのは、ただのカルピスだというほう
が、ビビルんだけどなあーと、悟浄は肩を震わせている。
・・・・諦めて、さっさとダウンしたほうが身のためだぞ、ロックオン・・・・・
内心で、スタッフは、そう勧めているが、生憎と、誰も直接には、それを言えない。そ
んなことを言おうものなら、歌姫様が笑いながら、暗黒オーラで呪いの言霊を与えてくだ
さるからだ。
さて、こちら、そのさっさとダウンしろ、と、内心で願われているロックオンは、プラ
ントからの通信を受けていた。となりには刹那もいて、大人しく聞いている。
「・・・ということで、無事、治療には入れるみたい。一ヶ月くらいで戻れるみたいだよ
。」
「そりゃ、よかったな。そっちは暑くないのか? アレルヤ。」
「うん、一応、夏の温度ではあるらしいけどね。湿気が少ないから、日陰は涼しい感じ。
そっちは、どうなの? 」
「街のほうは、かなり暑いし湿気も多いよ。」
和やかに会話しているところへ、突然に、刹那が、「熱中症になりかけた。」 と、呟
いたら、アレルヤを押し退けて、ティエリアが前面に現れる。
「どういうことだ? 説明しろ、刹那。」
「言葉通りだ。悟空のところで、ロックオンがダウンしかけた。八戒さんからのアドバイ
スで、回避できた。」
その報告に、じろりとティエリアが視線をロックオンに向ける。別に、それは、俺の所
為じゃないだろう、と、肩を落として笑ってみるが、それか通用する相手ではない。
「ロックオン、あれほど注意を促したのに、聞いてなかったんですか? 」
「身体が、あの温度に慣れてなかっただけだよ。」
だいたい熱中症なんてものがあることも、八戒に聞いて、初めて知ったぐらいだ。自分
の隠れ家では、起きないし、耐熱訓練とも違うから、対処のしようがない。
「気をつけてください。」
「ああ、刹那が、しっかりフォローしてくれてるから心配いらねぇーよ。そっちこそ、身
体に気をつけろよ、ティエリア。」
「俺は問題ありません。プラントは、なかなか興味深いものがある。・・・・刹那、引き
続き、ロックオンの管理をよろしく頼む。」
「了解した。」
子猫たちを見ていると、確かに、死んではいられないな、と、苦笑する。自分が消えた
後のティエリアの行動というのは、まさに三蔵が指摘した、そのままだったからだ。
「ティエリア。」
「なんですか? ロックオン。」
「少しは、遊んで来いよ。俺だったら、アレルヤが治療している間に、ナンパするぐらい
のことはするぜ? 」
「あなたと一緒にしないでください。」
「うん、そうだけどな。俺らも、悟空たちと水族館へ行ったりしてるから、おまえも、そ
ういうのは楽しんだほうがいい。少し、いつもと違うことをしてみろ。」
同じことをするというのなら、そういうことだろう。組織のこと以外で、視野に入るも
のがあれば、ティエリアは、より人間らしくなるはずだ。
「善処はします。」
「何を見たのか、帰ったら教えてくれ。」
「わかりました。」
「僕も、報告するよ、ロックオン。」
「ああ、治療が終わったら、おまえさんもティエリアと、いろいろと見てくるといい。」
世界を知らない二人には、別行動もいいのかもしれないな、と、考えつつ、通信は切っ
た。
その後、プールに誘われて、そこで、ダウンしたので、散々にティエリアからお小言を
食らったのは言うまでもない。
作品名:こらぼでほすと 遠征2 作家名:篠義