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こらぼでほすと すとーかー2

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なぜか、あそこには運命を感じるものが多すぎる、と、休憩時間に友人のところで零したら、「まだ、先はあるんじゃないのかい? 」 と、返事された。

「先? 先とは、どういうことだい? ビリー。」

「だからね、グラハム。キラが運命の女神で、ニコルが運命の妖精なんだろ? つまり、運命の恋人は、まだ逢っていないんじゃないのかな? って、思うんだ。」

「キラではないというのか? 」

「だって、きみの言動を聞いている限りは、そういう肉欲的な感じじゃないんだ。かなり神々しいんだろ? 」

 ばくばくと、ポンデリング黒糖味を齧りつつ、カタギリは数値の羅列が続いている画面から目は逸らさない。

「ふむ、まあ、キラは、神々しいだろうな。一般人とは、オーラからして違う。」

 まあ、そりゃ、以前は 「白い悪魔」なんて呼ばれてたわけだから、普通ではないだろう。噂では、数分でMSのOSを自分好みに書き換えて使っていたというのだから、どんな頭脳? と、カタギリも驚愕した才能だ。ただし、見た目は、そんな電脳オタクには見えないのだから、性質が悪い。

「つまりね、きみが、抱き締めたいと思うわけではないんだろ? 恋人なら、即座に抱き締める方向に行くと思うんだよね。どう? 」

「確かに、キラとは、そういう即物的なものはないな。むしろ、優しく手を差し伸べたいと願うほうだ。ニコルは、抱き締めるより、頭を撫でてやりたいんだよ。きみの言うことは、もっともかもしれない。・・・・・なるほど、運命の恋人との出会いが、まだあるということか。」

 というか、カタギリとしては、その『吉祥富貴』から、友人を遠去けたいと思っている。天下の歌姫様 ラクス・クラインの息がかかっているホストクラブなんてものは、近寄ってはいけない代物だ。技術畑の専門バカなカタギリでも、ラクス・クラインの裏の噂も、ちょっぴり知っているからだ。余計なことをすると、国家群ごと消滅させられる恐れがある。この間も、フォーリンエンジェル作戦時に、いきなり戦艦のシステムにウイルスが侵入して、生命維持関係のシステムが止まりそうになったのだ。それで、艦砲射撃などができなかったということがある。一艦だけなら、ただのシステムエラーだが、全ての艦ということになると、あきらかに妨害だ。

 誰がやったか特定はされていない。ただ、実しやかな噂では、歌姫様が、自分の船の進行方向での戦闘が邪魔だと怒って、子飼いのハッカーにやらせたという。ありえないことではないから、かなり信憑性はある。そういう黒い噂の主のところへ乱入なんかしていたら、いきなりグラハムの搭乗するカスタムフラッグが暴走したり、MSWAD本部に、システムクラッカータイプのウイルスが投下されてしまうかもしれない。

 だが、その友人は、そういうカタギリの心遣いなんてものには反応してくれない。

「とりあえず、あのクラブへの招待状を手に入れなければな。ビリー、何か方法はないだろうか。」

「グラハム、ホストクラブは、女性の遊び場だと思うんだけどね。」

「別に、どちらでもいいだろう。それは男女差別というものだ。もしかしたら、あの扉の向こうに、私の運命の恋人が私を、このグラハム・エーカーを待っているんだぞ? それならば、無理にでもこしあけねばなるまい? 」

 だふん、どう宥めても、突進していくんだろう、と、カタギリも諦めた。ならば、できるだけ穏便に速やかに入って戻って来させればよろしい。

「連合軍の軍人さんで、あそこへ通っている女性がいれば、それのお伴として入店はできるんじゃないかな。きみ自身がメンバーじゃなくても、その場合は入店を拒否されることはないだろう。」

「なるほど、さすが、わが友だ、ビリー。早速、そういうご婦人を探してみよう。」

「きみの運命の恋人が、そこではないところで見つかることを祈っているよ。」

「ははははは・・・・何を言う。すでに、あそこで、女神と妖精さんは見つけたのだ、恋人だっているに違いないっっ。」

 いや、そういうもんではないだろう。というか、全員、男だということについて、何か考えることはないかい? と、カタギリは言いたかったのだが、友人は、足早に部屋から出て行ったので、そこまで言い募れなかった。

「まあいいか。死ぬほどのことはないだろうしね。グラハムなら、道理とか関係ないし。」

 友人として、その意見もどーよ? な言葉を吐いて、フレンチクルーラーに手を出した。意外にも、カタギリの祈りが通じたのか、グラハムの運命の恋人は、別の場所で出会うことになる。







 一流ピアニストの生演奏というのは、やはり心に響くものだ。お客様を含めて、ニコルの演奏が、一曲終わると、ほおっと溜息が吐き出される。で、このピアニスト、なんと、ここでの演奏はボランティアだ。ここのフロアマネージャーのためにやっている。

「素晴らしいですわ、ニコル。」

「ありがとうございます、ラクス様。じゃっ、僕は少し休憩させていただきますね。」

「ええ、アスラン、ニコルに冷たいものを差し上げてくださいな。」

 歌姫様も、そこのところはわかっているから、接待役にはアスランを、ご指名だ。キラは、別に気にした様子もなく、ラクスのとなりで聞き惚れているフリで居眠りしていたりする。大明神様にとって、ピアノ曲なんてものは、子守唄と同じものらしい。同様に、悟空も、その逆となりで、イザークの肩にもたれかかって居眠りしている。イザークも、あんまり気持ち良さそうなので、起こすに起こせないで苦笑している。

「ラクス様、こいつらには、高尚すぎてダメなようだ。」

「まあ、イザーク。人を心地よく眠りに誘うなんて、ニコルのテクニックが素晴らしいという証明でしてよ?  」

 へのーと、ラクスの肩に寄りかかっているキラの肩を抱いて、そっと膝へ頭を移動させる。うふふふふふ・・・・と、歌姫様は、ご満悦だ。

「今日は、お持ち帰りです。・・・・・そういえば、マイスター組は、そろそろですか? 」

「ああ、引越しも終わったし、明日ぐらいからってことになってるよ、オーナー。」

 マイスター組の管理をしている八戒が、ヒルダの施術で席を外しているので、代わりに悟浄が返事する。

「あら、それは橘様に連絡してさしあげましたか? 」

「いや、本格デビューは来週ぐらいにしてさ。とりあえず、予行演習というか実習させるから。」

 役に立ちそうなのは、どう見ても、親猫だけだから、とりあえず、二、三日は、接客やバックヤードの手伝いの練習をさせることになっている。

「なあ、オーナー、たぶん、四度目があると俺は思うんだけどさ。」

「フラガさんが、おっしゃるなら、そうなんでしようね。その節のフォローは、お願いしますね。刹那が泣かないように、ちゃんとしてあげてくださいませ。」

 唯一ナチュラルで、八割方死んでから復活した鷹は、経験からの意見を吐き出す。歌姫様は、親猫がどうであろうと、子猫が泣かなければ問題にはならないらしい。

「はいはい、セツニャンね。 俺は、ティエリアのほうを担当させてほしいな。」

「フラガさんは、ロックオンの担当です。」