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こらぼでほすと すとーかー2

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「えーー一番おいしくないなーそれは。」

「手を出したら、キラとマリューさんと私くしから報復が参ります。」

「・・・・・げっっ・・・・・」

 マリューだけなら、報復でもなんでも引き受けると豪語しているフラガだが、キラはヤバイ上に、さらにヤバさが上の歌姫まで参戦するなら、絶対に手を出すことはできない。確実に、十割死ぬからだ。




 見習いなので、黒ベスト黒パンツ白のワイシャツに、それぞれのMSカラーのリボンタイという格好に、胸に小さな初心者マークをつけられて、マイスター組の研修は始まった。とりあえず、挨拶とかお辞儀とか給仕とか一通り説明して、虎はやれやれと息を吐く。

「アレルヤ、重いものじゃないんだ、そんなに緊張しなくていい。」

「はい、すいません。」

 子猫二匹に関しては、危険でないもの限定で運ばせるつもりだから、プレートの持ち方と歩き方ぐらいで、どうにかなる。とりあえず、プレートにポテトチップスの袋を置いて歩かせているのだが。アレルヤだけは、銀のプレートに、水の入ったグラスを四個置いての実習だ。これを零さずに、静かに運ばなければならない。さらに、テーブルに置く場合も、音を立てずに、速やかに置いて立ち去るのが基本とくると、もう、そこいらで、パニクって、アレルヤは、わたわたとしてしまう。

「最初からは無理だと思うから、ゆっくりと置いてくれればいいよ、アレルヤ君。」

「はい、ダコスタさん。」

 基本姿勢を横で同じ様にやってくれているダコスタは、何度もやり直ししてくれる。細かい作業なんてものは、ほとんどやったことがないから、アレルヤも、おっかなびっくりという態度だが、慣れればどうにかなるだろうクラスのところだ。

 どんっっ

「なぜ、ぶつかる? 」

「おまえが余所見をしているからだ。」

 で、こちら、子猫二匹は、ポテトチップスの袋を載せた銀のプレートを持って、席の合間を歩き回っていたが、どっちもが、アレルヤのほうを見ていてぶつかった。

「おまえこそ、余所見をしていただろう。」

「避けるべきは、おまえだ。」

 で、この子猫たち、どっちも負けん気が強くて、引くということがない。ぷしゃあーっっと、二人して威嚇態勢だ。

「なんで、ああ、なるかな? 」

 それを観察しつつ、店内の掃除をしているシンは、首を傾げる。普段、見ている限り、仲が悪い雰囲気ではない。

「どちらもライバルだと思っているからだろう。」

 ティエリアと過去、対決しているレイあたりになると、あの女王様な性格なら、ああ、なるだろうな、と、納得していたりする。

「シン、そろそろ呼んできてくれないか? 」

「了解、とーさんっっ。」

 子猫同士の小競り合いは、他人より親猫の介入のほうが効果がある。トダカが、シンに頼んで、事務所にロックオンを呼びに走らせる。虎たちバックヤードの連中は、最初から触らぬ神に祟りなしとばかりに関わらない。





 その頃、事務室では、経理ソフトの使い方を教えられて、入力仕事に従事しているロックオンがいた。今まで家計簿なんてつけたことはないわけで、ましてや、個人営業のスナイパーなんてものだったから申告することもなかった。交際費? 広告宣伝費? どれを、どう振り分けていいのかもわからないという状態だ。

「前のデータを検索して、同じものに振り分けしとけ。違ったら、後で八戒が、なんとかはてくれる。」

 自分がやっていた方法を、悟浄が伝授しているので、どうにか進んでいるといった具合だ。

「俺の人生になかったことばっかりだ。」

「心配しなくても、僕にもありませんでした。この仕事に就いてから、見様見真似でやったんで、そのうち、どうにかなりますよ、ロックオン。」

 もちろん、八戒だって、子供に勉強は教えていたが、それで、こんな大掛かりな経理ソフトなんて使っていなかった。悟浄だって、元ギャンブラーとかヒモなんていう帳簿の必要のない職業だったわけで、女房の手伝いで覚えたに過ぎない。

「よく考えりゃさ。うちの店で、前職生かしてるヤツはいないんじゃないか? 」

「前職というか、現役もいらっしゃいますけどね。確かに、経歴としては、ここで使うものはないでしょうね。」

「だから、気にすんな、ロックオン。こういうの慣れだ、慣れ。」

「まあ、そうなんだろうけど。」

 そんな会話の最中に、シンが飛び込んできて、仲裁を頼まれる。やっぱりか、と、ロックオンも慌てて、店のほうへと出て行ってしまうと、残りは夫夫だけだ。



 ぷかーっと、タバコの煙を吐きつつ、悟浄は八戒の顔を眺めて苦笑する。

「なんですか? 」

「いや、せっかく、夫夫水入らずの共同作業だったんだけどなあーと思いましてね、八戒さん。」

「店でまで、べったりしている必要はないでしょう。」

「まあ、そりゃそうなんだけどさ。」

 今までは、経理に関しては、ほとんどふたりっきりの作業だったので、なんていうか、何の気ナシに肩に手を置いてみたり、相手の顔を眺めていたりする時間があったのだが、さすがに他人様がいらっしゃると、それも難しい。そういう何気ないふれあいみたいなのが、嬉しいんだけどさ、と、悟浄が呟くと、八戒も、苦笑する。

「どこの乙女なんでしょうね? このエロガッパ。」

「あら、それはひどいんじゃないですか? イノブタさん。」

「仕事の合間のふれあいなんてものは、こっそりと隙を窺って、どうにかしてください。」

「他力本願かよ? 」

「協力はします。消極的に、ですが。」

「はいはい、ほんじゃ、まあ、とりあえず。」

 と、タバコを揉み消して、エロガッパさんが、イノブタさんに、こっそりふれあいをしていたりする。




「いらっしゃいませ、お客様。」

 優雅に挨拶して、すっと、おしぼりを差し出しているロックオンを見ていると、あんた、こういう水商売の経験があるんじゃないのか? と、誰もが尋ねたくなる。まあ、実際、イザークが聞いてみたところ、ホストクラブではないが、そういうバイトもやっていたらしい。

「申し訳ありません。私、右目が不自由で、白い杖の代わりなんです。・・・・・刹那、ティエリア、ご挨拶は? 」

 そして、親猫から離れない二匹の子猫を、ちゃんと操縦しているわけで、さすが、おかんというところだろう。純粋培養テロリストが、一日の研修ぐらいでサービス業を習得できるわけがない。とりあえず、俺が面倒をみますんで、と、ロックオンが言うので親猫の傍につけてある。

「マティーニですね。ベルガモットのお好みは? ・・・・はい、、お任せで承ります。」

 片膝をついて注文をとると、右隣に立っている刹那の肩に手を置いて、ロックオンは立ち上がって、お辞儀をして背を向ける。それから、遅れて子猫二匹もぺこんと頭を下げて、親猫の後を追う。なかなか、楽しいと、ヒルダが笑った。とりあえず、身内で失礼があっても笑って許してくれそうな客のところの注文とか給仕をさせてみたら、なかなか好評だった。子猫が親猫の背後や横を、ちったかちったかついているのが微笑ましく映るらしい。