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ミルクと砂糖と彼女と私

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「サイズが合わないんだ…だから、その…直してもらえないだろうか」

そう頼まれたのが、数日前。
順平だったら自分で直せば?って言うけど…

「えぇ、構いませんよ。美鶴先輩」

美鶴先輩なら、喜んで引き受ける。

本当は私の部屋じゃないところが良かった。作業がしやすいし。
けれど、道具も揃ってるから我慢して美鶴先輩を呼んだ。
目的は、頼まれた美鶴先輩のメイド服のサイズ直し。

「華、手間をかけさせてしまって…すまない」
「大丈夫ですよ。私、こういうの得意ですから」

赤くて綺麗な長い髪に、同じくらい赤くて柔らかそうな唇。
長くてたっぷりの睫と、切れ長の瞳。

今、私の前には皆が憧れる月光館学園・生徒会長 桐条美鶴が
黒のメイド服に身を包んで私のベッドに座っている。

「どこか苦しかったりしますか?」
「いや、問題ない…。いい腕だな、ブリリアントだ、華」

真っ赤な髪が、黒に栄えて美鶴先輩はまるで

「お人形みたい…」

みんなが美鶴先輩に見惚れる気持ちがよくわかる。

「華?」

先輩に名前を呼ばれて、意識を戻される。
いけない、いけない。
もう一つ大事なことがあったんだ。

「あの、美鶴先輩に合うと思って私…靴を用意したんです」
「私に…か?」
「えぇ、美鶴先輩に」

いつものピンヒールも似合っていて素敵だけど、先輩はこの前のタルタロス探索でヒールを折ってしまった。
そのときの先輩は、凄く悲しそうな顔で「気にいっていた靴だったんだ」と話をしてくれた。
大事に大事に履いていた美鶴先輩。私も大事に履いているのを知っていたから、折れてしまったヒールを見て悲しくなってしまったの。
だから、丁度バイト代も入っていたし、なによりお店で見つけた靴は美鶴先輩にぴったりだと思ったから、私はこの靴を購入しておいた。
先輩に笑ってほしくて。
ベッドの下から、隠しておいた箱を取り出して美鶴先輩に手渡すと凄く驚いた顔をされ、そのあと直ぐに柔らかい笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。

(良かった…笑ってくれた)

シュルリと先輩の細くて白い指がリボンをほどいて
丁寧に、慎重に包みを綺麗に開けて箱を取り出す。
そんなに丁寧にしなくても良いのにと思うけど、大事に扱ってもらえるのは凄く嬉しい。

靴もだけれど、その包装だって美鶴先輩にあうものをって考えた。
贈り物をするときの基本だと思うから。
パール加工を施したシンプルな包装紙に、幅広の深い緑のヴェルベットリボン。
美鶴先輩だから特別。すごく時間をかけて考えた。

「華…気持ちは嬉しいが、私には可愛すぎるんじゃ…」

蓋を開けた美鶴先輩は、少し困り顔。
それもそのはず、私が贈ったのは いつも先輩が履くようなヒールが細くて先の尖った靴とは間逆。

少し丸みのある靴先、いつもより低くて太目のヒールで
足首に細いリボン飾りの付いたベルト…少女趣味なデザインの黒いエナメル靴。

「そんなことないですよ。先輩に似合うと思って、買ったんです」

困ったままの美鶴先輩の膝の上から靴を取り、ピッチリと揃えられた足の前に「履いて」と言う代わりに置いた。
でも先輩は、なかなか履いてくれなくてモジモジしてる。
そんなに恥ずかしい靴だったかな…。

「さぁ、先輩…」

きっと何もしなければ履いてはくれないだろうから、私は先輩の片足に手を伸ばし
履いていた靴を脱がしにかかる。美鶴先輩の細い足首は、ちょっと力を入れると折れてしまいそう…。
だから優しく優しく慎重に、手のひらで支えて靴を脱がしてあげる。

「華ッ?!」

先輩は慌てたけれど、動けば私の顔を蹴ってしまうからオロオロするだけ。
それに、折角贈った靴を履きもせずに返されたら悲しいもの。
せめて一度だけでも先輩の足を飾ってほしい。

靴を脱がせた先輩の足先は、うっすらと爪が見えていて
手の指と同じ色で彩られているのが分かった。
ほっそりとした形のいい足…
本当にこの足がシャドウを踏みつけ、蹴散らすのかしら…ちょっと疑問。
足首とかかとを固定して、私の選んだ靴に先輩の足先を入れる。
そして、私の膝の上に先輩の足を置きパチンと細いベルトを留めた。

ほら、思ったとおり…先輩に良く似合う。

両足を最初のように揃えて、美鶴先輩を見上げれば
先輩は少し顔が赤くなってた。

「似合ってますよ」
「…ほ、本当に?」
「えぇ、本当に」
「あまり…こうこうのは慣れなくて」

そう言うと、先輩はまた顔を赤くして俯いてしまう。
いつも「処刑だッ」と最前線で戦う彼女の、私だけが見ることのできる一面。

小さな声で「可愛らしい靴だ」と嬉しそうに呟いては、美鶴先輩は揃えた足先をちょっとだけ動かし、小さく笑みを作る。
その仕草が可愛らしくて、愛おしくて…私は思わず先輩の膝に口付けた。

黒のストッキング越しの口付けは、あまり触りの良いものではないけれど…
それでも、先輩を驚かすには十分だったみたいで体をビクンとさせて
「な、なにをするんだ華ッ」と声をひっくり返してしまった。
さっきよりもずっと真っ赤な美鶴先輩の顔。
もともと色が白いから、余計に目立ってしまう。

とっても可愛い、大好きな美鶴先輩。

でも、その可愛さを周囲に気付かれそうになるとシャキンッ!ていつもの先輩になる。
先輩が少女みたいな面を素直に見せてくれるのは私の前だけ。

「ふふ…ごめんなさい。先輩が可愛いから…」
「…その、…」
「なんですか、美鶴先輩」
「…本当か…?」
「本当に似合ってます!」
「…良かった」

何度もすまないな…。そう、呟いて、美鶴先輩はシュンとしてしまう。
私は立ち上がると、ボスンと美鶴先輩の横に腰を下ろした。
ベッドのスプリングがギシッっと鳴って、先輩と私の体を弾ませる。

「いつもの先輩も好きだけど…私は今の先輩がもっと好きです」

満面の笑みで伝えたら、美鶴先輩は折角落ち着いていた頬をパァアッと赤く染めてしまった。

私は先輩が元々履いていた靴を箱にしまおうとする手の中から、緑のヴェルベットリボンを引き抜いて、
手入れの良くいき届いた柔らかくて綺麗な髪に結びとめてあげる。
顔も髪も鮮やかな赤

(…薔薇の花束みたい)

違うのはあの棘がないことね。
そんなことを考えながら、先輩の髪に顔を埋めてしまう。
美鶴先輩はいつも良い香りがする。

「美鶴先輩、いい匂いがしますね」

本当は香水やコロンの香りは苦手。特に男の人が使ってるのが一番嫌。
自分自身でも使わないけど…美鶴先輩のは平気。甘くてとってもいい匂い…。

「ありがとう…でも、キミもいつも良い香りがするじゃないか…」

甘くて優しい香りだから、私は好きだよ。と囁かれて
おでこのあたりに柔らかいものが触れる。

「…華は…そう、ミルクの香りだ…」
「子供っぽいって…いつも笑われるんですよ…」
「笑わせておけば良い…それに」

スルリと私の指に美鶴先輩の指が絡められて、先輩の口元に運ばれる。

「女の子はミルクと砂糖で出来ているのだろう?
 だからミルクの香りがしていても子供ぽっくはないさ」

私の指先を唇で軽く触れながら、美鶴先輩が優しい声音で言う。

- 女の子はミルクと砂糖で出来ている
作品名:ミルクと砂糖と彼女と私 作家名:藤堂桜