ミルクと砂糖と彼女と私
少女漫画を読んでみたいと言う先輩に貸した本の、たった一度だけ出てくる台詞。
大事なシーンの台詞ではないから、ちゃんと読んでなきゃ読み飛ばしてしまう…。
先輩はちゃんと読んでくれたんだ。私が一番好きな台詞の部分を。
「…キミは指まで小さいな…」
先輩が何か言うたび、先輩の唇が動き
その唇に触れる私の指先がくすぐったくて、思わず頬が緩んでしまう。
寄せて触れる体から先輩の体温が伝わってきて、鼓動がとくんとくんと聞こえる。
そっと見上げれば、美鶴先輩が私の指先を少しだけ唇で挟んでいた。
私の指が美鶴先輩の唇を右に行ったり、左に行ったり…じーっと見ていたら先輩が気付いて笑ってくれて
それが何だか嬉しくて私は先輩に抱きついたけれど、勢い余ってベッドに2人で倒れてしまった。
「こら、服が皺になってしまうだろう?」
「あとでちゃんとアイロンをかけます……」
美鶴先輩の甘い香りのする体の上は、とっても柔らかくて心地がいい。
前に重くないかと心配になって先輩に尋ねたら
「軽いくらいさ」と言ってくれた。
きっとお世辞だけど、そう言ってもらえると安心してこうしていられる。
先輩の柔らかい胸に顔を埋めていれば、いつも優しく頭を撫でてくれる。
私の大好きな大切な時間。
「なぁ、華…」
「…なんですか?」
「ミルクは香りで分かるけれど…砂糖はどうしたら分かるのだろう」
「…それは…」
チョコレートソースのかかったケーキだって
生クリームたっぷりのパフェだって
口に入れてみなければ、甘いかどうか分からない。
だから…
「食べてみれば、分かりますよ」
あなたを知りたい私に、あなたへの口付けを許してください。
作品名:ミルクと砂糖と彼女と私 作家名:藤堂桜