口実に決まってる
「お前まさか、だからいつも連絡なしで来るのか」
約束などせず訪れて、居ないと分かっている恋人の帰りを待って、わざと寒空の下で待ちぼうけて。
そして、同じように冷えて帰ってきた門田と、先に風呂がどうたらと悶着し、結局は一緒に入ることになるように。
「…………」
「お前……、馬鹿だろ」
無言のまま反論しないのが肯定のようなもので、門田は思わず額を押さえた。頭が痛い。
「普段の人格破綻者っぷりをどこに置いてきた…」
「ちょっ、なにそれひどくない?」
「ひどくない。言われて当然のようなことしてるからだろーが」
人格破綻者と言われて然るべき普段の行いも、あまりに似合わないそのいじらしい健気さも、それは両方の意味で。
「……ドタチンの家の風呂、好きなんだよ。男二人で入るようなサイズじゃないから無条件でベタベタできるし」
「悪かったな狭くて」
「だから、文句じゃないって。…狭い方が嬉しいっていう、俺個人の、独りよがりな感想!」
悪かったね似合わないことして!
そう、すっかり機嫌を損ねた様子で臨也が湯船から立ち上がる。
「のぼせるからもう先上がる」
そう言って、ぷいっ、と顔を背けて脱衣所へと出ていく臨也を、門田はぼんやりと見送った。
ぴしゃり、と閉じられた扉の音で我に返り、そのままずるずると湯船の中で背を滑らせ、沈む。
「……普段がツンケンしてるやつのデレは恐ろしいな…」
じわり、と遅れて熱くなってきた頬を、門田は手のひらで覆った。
怒ったような臨也の顔が赤く染まっていたのは、きっと湯中りしそうになったからだけではないだろう。
「…俺まで逆上せそうだ、」
チクショウ可愛い、と喉奥で低く呻いて、それからざばりと湯を揺らしながら門田も浴槽を出る。
そしてヘソを曲げてしまった恋人の機嫌をどう取るか、思案しながら臨也を追って風呂場を出たのだった。
END.
季節の変わり目とか身体冷やしたりとかで体調崩す臨也さん萌え(笑)
二人でお風呂とか、こういうベッタベタなの大好きです^^