やさしい気持ち
寝呆けてた
幸せそうに眠りこけた田島の顔がどうしても可愛くて、
阿部は彼と同じ布団の中で寝返りを打ち、覆いかぶさった。
右手の甲に左手を重ねて右手で左の頬に触れて、
唇を合わせようとしたときだ。
田島の右腕が動いたかと思うと、反対の手で阿部の顔を押し返した。
それと、うっすらと目が開いた。
ややあって田島の寝ぼけた瞳は、
自分に覆いかぶさった阿部の、はっとした顔にたどり着く。
「ああ」
「いや……」
阿部は、弁明を言いかけながら体を起こした。
「キスすんの?」
かすれた声で田島が問う。
返事を待ちはしないで、寝ぼけてた、とつぶやく。
「寝てたんだろ」
「うん」
会話になってないかな、と田島は気づいて、
あとキスして欲しいって言いそびれてると思いながら、
阿部の腕を握って眠った。