やさしい気持ち
けち
目が合ったからキスをして、キスをしたら抱きしめられた。細いながらしなやかな筋肉のついた田島の腕に強く抱かれながら、阿部は優しく腕を回した。体の骨ばった部分が当たって少し痛かったが、それすらもよく馴染んだ感触だった。
田島は息を詰めるようにして、腕を緩めない。
携帯電話の震える音がメールの受信を告げた。斜め後ろに放り出された阿部の携帯電話は手を伸ばしただけでは届かない。体をよじって振り返ろうとしても田島は退かなかった。腕をうんと後ろへ伸ばすと、ようやく届いて、抱きつかれたまま田島の肩越しにメールを読む。
田島はなにも言わずに画面を覗き込んだ。たいしたことのない内容だったから別に構わない。見られたまま、短い返事を親指で綴る。
「田島、重い」
言われたこととは逆さまに、よけいに強く抱き、首を絡める。
「重い」
「キスしてくれたらどくよ」
「……さっきしただろ」
阿部は喉を重ねながら呟く。目線は手元に落したまま。
「阿部からすんの。口に」
「しない」
「けち」