やさしい気持ち
部室の隅 ※性描写
阿部は田島の体を壁に勢いよく押し付けた。田島は目を見張り眉を寄せる。反射的に押し返そうとして、強く張り付けられた。阿部の腕の筋肉が脱ぎかけたシャツの下で強張るのが見える。壁にぶつかった背中の骨が痛む。
田島が体の力を抜くとずるりと3センチ肩の位置が落ちる。力強く束縛されるのが心地良い。阿部は腕力に回せて拘束することをやめなかった。
無理に体をよじって振りほどいて、腕の下から抱きついた。そのまま唇を深く重ねる。相手の動作が互いの喉の渇きを強めていた。
部室の錠は内側から閉めてある。鍵の一つは阿部のポケットに納まっていて、けれど合鍵が他にあるから誰も来ないとは限らない。
キスだけしていたのは最初の数秒だけで、二人は激しく愛撫しあった。阿部は片手で肩を掴み、田島は阿部の脇に入れた手で強く引きつけた。舌を絡めあい、押し返したり口の奥へ挿し入れたりするうちに嘴から唾液が零れてつたう。
「……っ阿部」
堪らず服の裾に手を移し脱がせにかかった。
「服は着とけ」
「えぇー」
「誰か来たとき誤魔化せねえから」
阿部はちらりと顔を上げ、田島の手が止まったのを確認してから行為を再開した。急かされるように手を進める。誤魔化せないなどと言ったのに。
田島はもどかしげに顔を顰めた。首や股間を触られながらずるずると床に腰を下ろしていった。