やさしい気持ち
雨のせいだ
「今日雨が降るんだってさ!」
田島は嬉しそうに言った。だから何、とも、そういえば天気予報で、とも返せるのだが、彼のうきうき加減に、あまり下手な返答はしないほうがいいと思った。
「何週間ぶりだろ」
雨が楽しみだなんて、まるで幼い子供だ。
帰るときになって、雨が降りしきる真っ暗な帰路で、阿部の体は小さく身震いした。思っていたより、随分と寒い。静かに歩を進めていると、運動していたときには感じなかった秋の冷気が身にしみた。雨のせいだ。
雨を楽しみにしていた彼は、一体どう思ったろう。