二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

貴方と君と、ときどきうさぎ

INDEX|10ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

彼の方へ体を向けた。こちらに顔を向けたその瞳は潤んでいて帰っちゃうんですか?
と訴えている。いちいち可愛い反応をしてくるなっつうの。押し倒したくなるだろ。
帝人君は俺が帰ると言えば引き留めることはしないだろう。
けれどこのまま何もしないで帰るつもりもない。さあて、少し反応を見てみようか。
「そうだね、どうしようかな」
「…あ、あの」
「お世話係で来たんだ、邪魔でなければもう少し一緒に過したいところなんだけどね」
「そ、そんな!そんな、こと…ないです」
視線は逸らされ帝人君は黙ってしまった。何度目だろうこの沈黙は。
リズム良く会話が続かない。
「邪魔だなんて、絶対にないです」
そして拒むことよりも必要とする発言。
「何をしようか?」
「な、何をしましょうか」
困ってる困ってる。いつもなら面白い話を聞かせて下さいと
目を輝かせてくるのにね。
「あ、えっと、そ、そうです!友達からDVD借りたんですけどよかったら
一緒に見ませんか?去年公開されたファンタジー映画なんですけど面白いって
おススメされて」
「へえ、そうなんだ」
「臨也さんは映画とか見るんですか?」
「まあ人並みにはね。よく行くよ。大体付き合わされると恋愛映画が多いけど」
「恋愛、映画」
「うん」
「ですよね、臨也さんかっこいいし、もてますし」
なに笑ってるんだよ。本当はショックだったんだろ?俺が女と映画を見に行った、
それぐらい口にしなくても理解したんだろ。証拠に声が震えていた事
俺が気が付かないとでも思ってるの?隠しているつもりだろうけど
明らかに落ち込でますってばればれ。
「帝人君だって俺に惚れてるしね」
「……………」
今度は黙りか。むかつく。むかつくよ。
この前ははっきり俺が好きとか言っておいて。
なんで本心隠しちゃうんだよ。いつまで俺は待てばいい?
好き合っている事は明確なのに。その先に進まない、進めない。

駄目だ、もう無理限界。もう少し帝人君の出方を見て観察してみようと
思っていたけど止めた。俺はテーブルを挟んで帝人君の正面に座る。
何も話さずただ彼を見ていた俺に小さく帝人君は首を傾げた。
「ねえ、もういいんじゃない?」
「え?」



「二週間も待ったよ」



ボト、と水音が流しに落ちた。彼の咽が、唾を飲み込んだのか、ゆっくりと動く。
「もう限界」
テーブルの上に置きっぱなしにされている帝人君の右手。
拳を作っているその右手を上から包み込むように握るとびくんと震えた。
「臨也、さん…」
彼の手は、逃げなかった。
「ごめん、俺が待つとか言ったのにさ、でももう無理」
逃がしたくない。手に入れたい。
「俺達両想いなのにどうしてすれ違っているのかな」
こんなにも好きなのに。
「まただんまりか。でも、もう俺には通用しないよ」
帝人君の右手は俺の手から逃げようとした。けど、放してやるものか。
「………今でもまだ信じられないんです…臨也さん、が、僕を…好き、とか……」
「うん、俺もびっくり」
帝人君は顔を上げて、ようやく俺の目を見てくれた。
「恋をすると人は変わると言うけれど正直俺がここまで一人の人間に振り回されたのは
本当に初体験だ。帝人君の考えは当りだよ。始めはダラーズの創始者である君に興味があってちょっかい出しただけ。俺自身、こんなに君に惹かれるなんて思いもしなかった。好きになる時間も経験も関係ない、って本当だよね」
「でも、なんで…僕なんですか?」
「なんでだって?帝人君だからだよ」
「意味がわかりません、だ、だって僕は、そ、そりゃ始めは僕が好きとか
言っちゃいました、けど、生意気な事もたくさん言いましたけど、でも、」
「ここまで俺に言わせておいてまだそんな事言うの」
「…僕、は…」
腹立しい、まだ拒むつもりか。俺の事が好きなくせに。
握りしめていたその手を離し立ちあがって移動した俺を帝人君は目で
追っていたけれどその行先は君だよ君。正面から思いっきり彼を抱しめてやった。
細い俺よりも小さな体。直前に驚かれた顔が見えて拒まれるかと覚悟もしたが
その様子は見られない。大人しくしている。
「好きだよ、帝人君」
何度でも言ってやる。
「帝人君」
帝人君を抱きしめた腕に力が篭る。一、二、三、と間があって俺の背に回してきた
その手は震えていた。余計な事を考える余裕なんてないくせに、俺の事が欲しいくせに
今更ここまで来て引き返すの?
「─…あ、貴方に…貴方に、利用されていてもいい、と思いました…
遊ばれても、観察対象でも、貴方の恋人になれるならそれでもいいって」
「ならそうすればいい」
我慢なんてするなよ。
「俺が好きなんだろ」
「臨也さ─」
「素直になりなよ」
耳元で囁いてやればその体はびくりと震えた。耳が赤くなっている。
「君が、好きだ」
初めてなんだ、こんな気持ち。
「本気なんだ、本当に好きなんだ…」
「…っ」
息を吸う音がした。
「僕も、」
やや間があって。
「好きです」
消え入りそうな程とても小さな声だった。
けれど確かに心に届いた君の声。
「あ、あの……」
「うん」
「………ふ、ふつつか者ですがよ、宜しくお願いします…」
どちらの音かわからない、心臓の音は混ざり合って早鐘を打っている。
手にはじわりと汗が滲む。柄にもなく緊張している、嬉しい気持ちとほっとした気持ち。
実に俺らしくない、らしくないんだが。
「うん…」
「すごく、嬉しいです……」
「…うん」
嬉しい、嬉しいだって?それは俺の台詞だ。何これ上手く言葉が出てこない。
言葉が出てこないとか、嘘だろ。顔が熱い。帝人君の顔がまともに見れない。
「心臓、すごく…」
「ああ、ドキドキしてる」
帝人君の温もり。匂い。混ざり合う心臓の音。
ゆっくりとお互いの顔を至近距離で見合うと
帝人君はまじまじと俺の顔を見つめては嬉しそうに照れたように微笑んだ。
「臨也さん、顔、赤いです」
「…君もね」
「あ…」
自然と近づける俺の口付けを受け入れるべき所を帝人君は
右手を割り込ませられ俺の口は彼の掌によって塞がれた。
「…………」
「…………」
甘い気分から不快な気分へ一気に急降下。そうだ、そうだった。
「キス、は駄目です……」
唇が触れた瞬間うさぎとご対面になりかけた。
俺は塞がれていた口を解放されると深い溜息を落とした。
「致命的なんだけど」
「し、仕方ないじゃないですか!」
俺は帝人君を強く抱き寄せて彼の肩に顎を乗せた。
「つらい、帝人君とキスできないのはかなりつらい」
「………してもいい、ですけど…うさぎになっちゃいますよ?」
背中に回されている手に、力が籠ったのを感じる。
顔を上げてみれば右頬に唇を押しあてられた。キスと言うよりも
唇が頬にぶつかって触れてしまった感覚。不慣れなキスだ。
「頬、とかなら…へ、平気ですから!…そ、それに今は…
その、うさぎにはなりたくないですから…」
続けて「甘えたいです」とか小声で可愛過ぎるだろ。
さっきまでの俺への気持ちの戸惑いは何処に行った。
「まあいいや。今からキス以外の事するし」
帝人君は一瞬ぽかん、となったがその顔はみるみる真っ赤に染まっていく。
するりと服の下に手を忍ばせたらお約束通り焦り出した。